譲渡所得

CFP

1. 概要

譲渡所得とは、土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの資産を譲渡(売却)することによって生じる所得です。譲渡する資産の種類によって課税方法(総合課税・申告分離課税)が異なり、さらに所有期間によって長期・短期に区分されます。

CFP試験では、課税区分の判定・計算方法・居住用財産の各種特例・損益通算の取り扱いが特に重要なテーマです。資産の種類ごとに課税ルールが異なるため、体系的に整理して理解することが求められます。

2. 所得の定義

所得税法第33条において、譲渡所得は次のとおり定義されています。

譲渡所得とは、資産の譲渡(建物または構築物の所有を目的とする地上権または賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。)による所得をいう。(所得税法第33条第1項)

3. 課税方式の区分

譲渡所得は、譲渡する資産の種類によって課税方式が3つに分かれます。

資産の種類課税方式税率
土地・建物申告分離課税長期:所得税15.315%・住民税5%
短期:所得税30.63%・住民税9%
株式等(上場・一般)申告分離課税所得税15.315%・住民税5%(所有期間問わず)
土地・建物・株式等以外の資産(ゴルフ会員権・金地金・書画骨董等)総合課税累進税率(他の所得と合算)

4. 長期・短期の区分

譲渡所得は、資産の所有期間によって長期と短期に区分されます。区分の基準は資産の種類により異なります。

資産の種類長期短期所有期間の判定基準
土地・建物(分離課税)譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年超同左で5年以下譲渡年の1月1日現在
土地・建物・株式等以外(総合課税)取得日から譲渡日まで5年超取得日から譲渡日まで5年以下取得日から譲渡日まで
株式等所有期間に関わらず一律20.315%区分なし

⚠️ 土地・建物の所有期間判定は「譲渡年の1月1日現在」
例えば、2020年5月に取得した不動産を2025年11月に売却した場合、2025年1月1日時点では所有期間が満5年に達していないため短期譲渡所得となります。長期になるのは2026年1月1日以降の売却です。暦日数ではなく年数で判定する点に注意が必要です。

5. 総合課税の譲渡所得の計算

土地・建物・株式等以外の資産(ゴルフ会員権・金地金・書画骨董・車両等)を譲渡した場合は総合課税が適用されます。

📌 総合課税の計算式
譲渡益 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得金額 = 譲渡益(短期 + 長期) - 特別控除額(最高50万円

総所得金額への算入:
・短期譲渡所得 → 全額を算入
・長期譲渡所得 → 譲渡所得金額の1/2を算入

特別控除額50万円は、その年の短期と長期の譲渡益合計に対して適用されます。短期と長期の両方がある場合は、先に短期の譲渡益から控除し、残額を長期の譲渡益から控除します。

取得費・譲渡費用の内容

費用の種類内容
取得費購入代金・購入手数料・設備費・改良費等(減価償却資産は減価償却後の未償却残高)
概算取得費取得費が不明な場合、譲渡価額の5%相当額を取得費とみなせる
譲渡費用仲介手数料・印紙税・建物取壊し費用など、譲渡のために直接要した費用

6. 土地・建物の譲渡所得の計算(申告分離課税)

土地・建物を譲渡した場合は申告分離課税が適用され、他の所得とは合算せずに計算します。

📌 土地・建物の計算式
課税譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

税率(復興特別所得税含む):
長期(5年超):所得税15.315% + 住民税5% = 合計20.315%
短期(5年以下):所得税30.63% + 住民税9% = 合計39.63%

居住用財産(マイホーム)の主な特例

特例の種類内容主な要件
3,000万円の特別控除譲渡益から最高3,000万円を控除マイホームの売却・所有期間問わず・住まなくなった日から3年を経過する年末までに売却
10年超所有の軽減税率6,000万円以下の部分:所得税10.21%・住民税4%
6,000万円超の部分:所得税15.315%・住民税5%
譲渡年の1月1日現在で所有期間10年超・居住期間10年以上
特定居住用財産の買換え特例一定の要件を満たす買換えの場合、譲渡益への課税を将来に繰り延べ所有期間10年超・居住期間10年以上・売却価格1億円以下等
譲渡損失の損益通算・繰越控除マイホーム売却の損失を給与所得等と損益通算し、翌年以後3年間繰越控除可能住宅ローンが残っている場合等の一定要件あり

⚠️ 3,000万円特別控除と10年超軽減税率は併用可能
所有期間10年超のマイホームを売却した場合、3,000万円特別控除を適用したうえで、残額に対して軽減税率(6,000万円以下の部分:10.21%)を適用することができます。ただし、買換え特例との併用は不可です。

7. 株式等の譲渡所得の計算(申告分離課税)

株式等を譲渡した場合も申告分離課税が適用されます。所有期間に関わらず税率は一律20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)です。

📌 株式等の計算式
譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 委託手数料等)
税額 = 譲渡所得金額 × 20.315%

上場株式等の損益通算・繰越控除

上場株式等の譲渡損失は、確定申告により同年の上場株式等の配当所得(申告分離課税選択分)と損益通算できます。さらに通算しきれない損失は、翌年以後3年間にわたって繰越控除が可能です。

区分損益通算の相手方繰越控除
上場株式等の譲渡損失上場株式等の配当所得(申告分離課税選択分)・特定公社債の利子等3年間繰越可能
一般株式等の譲渡損失一般株式等の譲渡所得のみ繰越不可

8. 譲渡所得に該当しない主な所得

資産・取引の種類所得区分理由
棚卸資産(商品・製品等)の売却事業所得事業活動から生じる所得のため
山林(立木)の伐採・譲渡山林所得山林所得として独立した区分があるため
貸付金・売掛金等の金銭債権の譲渡譲渡所得に含まれない金銭債権は譲渡所得の対象外
生活用動産(1個30万円以下)の売却非課税所得税法第9条により非課税
著作権・特許権等の継続的な使用許諾雑所得譲渡ではなく使用料のため

9. 計算例

【例①】総合課税(ゴルフ会員権・長期)

項目金額内容
売却価額300万円取得後7年(長期)
取得費△ 150万円購入代金
譲渡費用△ 10万円仲介手数料
譲渡益140万円
特別控除額△ 50万円最高50万円
長期譲渡所得金額90万円
総所得金額への算入額45万円90万円 × 1/2(長期のため)

【例②】土地・建物の譲渡(申告分離課税・長期)

項目金額内容
売却価額5,000万円取得後8年(長期)
取得費△ 3,000万円購入代金・諸費用
譲渡費用△ 200万円仲介手数料・印紙税等
課税譲渡所得金額1,800万円特別控除なし(一般の土地建物)
所得税(15.315%)2,756,700円1,800万円 × 15.315%
住民税(5%)900,000円1,800万円 × 5%
税額合計3,656,700円

【例③】居住用財産の譲渡(3,000万円特別控除 + 10年超軽減税率)

項目金額内容
売却価額8,000万円所有期間15年・居住期間15年
取得費 + 譲渡費用△ 2,000万円
譲渡所得金額6,000万円
3,000万円特別控除△ 3,000万円居住用財産の特例
課税譲渡所得金額3,000万円
6,000万円以下部分(3,000万円)に軽減税率適用所得税10.21% + 住民税4%3,000万円 × 14.21% = 4,263,000円
税額合計4,263,000円通常税率なら1,056万円→大幅な節税効果

10. 試験の重要ポイント

  • 土地・建物と株式等は申告分離課税、それ以外(ゴルフ会員権・金地金等)は総合課税
  • 土地・建物の長期・短期の判定は譲渡年の1月1日時点の所有年数(5年超で長期)
  • 総合課税の長期譲渡所得は、譲渡所得金額の1/2のみ総所得金額に算入
  • 総合課税の特別控除は最高50万円で、先に短期の譲渡益から控除する
  • 取得費不明の場合は譲渡価額の5%を概算取得費として使用できる
  • 居住用財産の3,000万円特別控除10年超軽減税率は併用可能(買換え特例とは不可)
  • 土地・建物の短期譲渡所得の税率は合計39.63%と高く、長期(20.315%)と大きく異なる
  • 上場株式等の譲渡損失は申告分離課税選択の配当所得と損益通算でき、3年間繰越控除が可能
  • 棚卸資産・山林・金銭債権の譲渡は譲渡所得に含まれない

参考・出典

  • 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
  • 国税庁「No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1460.htm
  • 国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
  • 国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  • 国税庁「No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm
  • 国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
  • 国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3223.htm
  • 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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