株式の基礎と投資分析

CFP

1. 概要

株式は企業が資金調達のために発行する有価証券で、株主は企業の所有者として利益配当や議決権を持ちます。債券と異なり元本保証はなく、企業の業績や市場環境によって価格が大きく変動します。CFP試験では株式の基礎知識・相場指標・投資尺度(PER・PBR・ROE等)の計算・配当割引モデル(DDM)・課税関係が頻出テーマです。

2. 株式の基礎知識

株主の権利

権利の種類内容
議決権株主総会での議案に対する投票権。1株1票が原則
剰余金配当請求権企業の利益から配当を受け取る権利
残余財産分配請求権企業が解散した場合、負債返済後の残余財産を受け取る権利
新株引受権新株発行の際に優先的に引き受ける権利(株主割当増資の場合)

発行市場と流通市場

市場内容
発行市場(プライマリーマーケット)企業が新たに株式を発行して資金を調達する市場。IPO(新規公開株)や増資が該当
流通市場(セカンダリーマーケット)すでに発行された株式が投資家間で売買される市場。証券取引所がこれにあたる

株式の売買と受渡し

東京証券取引所(東証)における株式の売買は、約定日(取引成立日)から起算して2営業日後に受渡し(決済)が行われます。配当や株主優待の権利を得るには、権利確定日の2営業日前(権利付最終日)までに株式を保有している必要があります。

3. 相場指標

指標内容・ポイント
日経平均株価(日経225)東証プライム市場に上場する代表的な225銘柄の株価平均。株価水準の高い銘柄の影響を受けやすい(株価加重平均)
TOPIX(東証株価指数)東証プライム市場の全銘柄を対象とした時価総額加重平均指数。市場全体の動向をより広く反映
JPX日経インデックス400ROE・営業利益・時価総額等を基準に選ばれた400銘柄で構成。資本効率の高い企業を対象
騰落レシオ一定期間の値上がり銘柄数 ÷ 値下がり銘柄数 × 100。120%超で過熱感、70%以下で売られすぎの目安
信用取引残高(信用倍率)信用買い残 ÷ 信用売り残。1倍超は買い圧力が強く、将来の売り圧力になりうる
空売り比率全売買に占める空売りの割合。高いほど弱気ムードが強い

📌 日経平均とTOPIXの違い
日経平均は225銘柄の株価を単純平均(修正)したもので、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を大きく受けます。TOPIXは時価総額加重平均のため、時価総額の大きな企業の影響が大きくなります。両者は概ね連動しますが、局面によって乖離が生じることがあります。

4. 投資尺度

主要な投資指標の計算式

指標計算式意味・見方
EPS(1株当たり純利益)当期純利益 ÷ 発行済株式数1株が生み出す利益。高いほど収益力が高い
PER(株価収益率)株価 ÷ EPS株価が1株利益の何倍か。低いほど割安の目安。同業他社・市場平均と比較して判断
BPS(1株当たり純資産)純資産 ÷ 発行済株式数1株あたりの解散価値(理論的な最低株価の目安)
PBR(株価純資産倍率)株価 ÷ BPS株価が1株純資産の何倍か。1倍割れは解散価値以下で割安の目安
ROE(自己資本利益率)当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)自己資本をどれだけ効率的に使って利益を生んでいるか。高いほど資本効率が高い
配当利回り1株当たり配当金 ÷ 株価 × 100(%)投資した株価に対して何%の配当を得られるか
配当性向配当金総額 ÷ 当期純利益 × 100(%)利益のうち何%を配当に充てているか。高いほど株主還元重視

計算例

株価2,000円・当期純利益10億円・発行済株式数1,000万株・純資産50億円・1株当たり配当金40円の場合:

  • EPS = 10億円 ÷ 1,000万株 = 100円
  • PER = 2,000円 ÷ 100円 = 20倍
  • BPS = 50億円 ÷ 1,000万株 = 500円
  • PBR = 2,000円 ÷ 500円 = 4倍
  • 配当利回り = 40円 ÷ 2,000円 × 100 = 2.0%
  • 配当性向 = 40円 ÷ 100円 × 100 = 40%

PERとPBRの関係(デュポン分解)

PER・PBR・ROEの間には以下の関係が成り立ちます。試験では「3指標のうち2つがわかれば残り1つが求められる」形式で出題されることがあります。

PBR = PER × ROE (ROEは小数で計算)

例:PER20倍・ROE10%(0.1)の場合 → PBR = 20 × 0.1 = 2倍

5. 配当割引モデル(DDM)

配当割引モデル(DDM:Dividend Discount Model)は、将来受け取ると期待される配当金の現在価値の合計として株価を理論的に算出するモデルです。

定額配当モデル(配当が一定の場合)

毎年同額の配当が永続する場合、理論株価は以下の式で求めます。

理論株価 = 1株当たり配当金 ÷ 期待収益率

例:1株当たり配当金50円・期待収益率5%の場合 → 理論株価 = 50円 ÷ 0.05 = 1,000円

定率成長モデル(ゴードンモデル・配当が一定率で成長する場合)

配当金が毎年一定の割合(成長率g)で増加し続けると仮定した場合、理論株価は以下の式で求めます。

理論株価 = 次期配当金 ÷ (期待収益率 − 配当成長率)

例:次期配当金60円・期待収益率8%・配当成長率3%の場合 → 理論株価 = 60円 ÷ (0.08 − 0.03)= 60円 ÷ 0.05 = 1,200円

⚠️ ゴードンモデルの適用条件
ゴードンモデルが成立するのは期待収益率(r)> 配当成長率(g)の場合のみです。g ≧ r となる場合はモデルが機能しません。また、ゴードンモデルで使う配当金は「来期(次期)の配当金」であることに注意してください。当期の配当金が与えられている場合は、成長率を掛けて次期配当金に変換してから計算します。

6. 株式の課税関係

収益の種類課税区分税率・方法
配当金(上場株式)配当所得20.315%源泉徴収。①申告不要②総合課税③申告分離課税の3つから選択可
売却益(上場株式)譲渡所得(申告分離課税)20.315%。損失は同年または翌年以降3年間繰越控除可
売却損譲渡損失配当所得(申告分離課税選択時)・債券譲渡益と損益通算可

配当所得の課税方式の選択

課税方式内容有利な場合
申告不要(源泉分離課税)20.315%で源泉徴収されて完結。確定申告不要課税所得が高く、総合課税では税率が上がる場合
総合課税他の所得と合算して総合課税。配当控除が適用可課税所得が低く、総合課税の税率が20.315%未満になる場合
申告分離課税20.315%で分離課税。株式の譲渡損失との損益通算が可能株式の売却損がある場合(損益通算のため)

NISAの活用

項目つみたて投資枠成長投資枠
年間投資上限120万円240万円
合計上限(生涯)1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)
投資対象積立・分散投資に適した投資信託上場株式・投資信託等
非課税期間無期限(2024年以降の新NISA)

📌 NISA口座内の損益通算
NISA口座内で生じた売却損は、特定口座・一般口座の利益や配当所得と損益通算できません。また、NISA口座内の損失の繰越控除も不可です。NISA口座は非課税であるかわりに、損失についての税務上のメリットも受けられない点に注意が必要です。

7. 試験の重要ポイント

  • 配当・残余財産分配・議決権は株主の3大権利。社債権者には議決権はない
  • 権利確定日に株主であるには権利付最終日(確定日の2営業日前)までに購入が必要
  • 日経平均は株価加重平均(225銘柄)、TOPIXは時価総額加重平均(全銘柄)
  • 騰落レシオ:120%超=過熱(売りシグナル)、70%以下=売られすぎ(買いシグナル)
  • PER=株価÷EPS、PBR=株価÷BPS、ROE=純利益÷自己資本。PBR=PER×ROEの関係を押さえる
  • PBR1倍割れは理論上の解散価値以下で割安の目安
  • 配当割引モデル(定額):理論株価 = 配当金 ÷ 期待収益率
  • ゴードンモデル(定率成長):理論株価 = 次期配当金 ÷ (期待収益率 − 成長率)。r > g が必要
  • 上場株式の配当所得は①申告不要②総合課税③申告分離課税の3方式から選択可
  • 株式の譲渡損失は3年間繰越控除可。配当所得(申告分離課税選択時)との損益通算も可
  • NISA口座内の損失は損益通算・繰越控除ともに不可

参考・出典

  • 日本取引所グループ「株式等の売買制度」https://www.jpx.co.jp/equities/trading/index.html
  • 日本取引所グループ「各種指数」https://www.jpx.co.jp/markets/indices/index.html
  • 国税庁「No.1330 配当所得の課税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
  • 金融庁「NISAについて」https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/index.html

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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