企業年金・退職金制度と税金

CFP

概要

本記事では、公的年金を補完する企業年金・確定拠出年金・退職金制度と、それらにかかる税金を解説します。退職後の生活を支える収入源は公的年金だけではなく、企業年金・確定拠出年金(iDeCo)・退職一時金・小規模企業共済なども重要な柱となります。CFP試験では各制度の仕組み・掛金・給付・税務上の取り扱いが幅広く出題されます。

特に退職所得の計算(退職所得控除額→退職所得→税額)は計算問題として頻出です。確定拠出年金(DC)は掛金・運用・受取の各段階における税制優遇も正確に押さえましょう。

退職後の生活を支える制度の全体像

退職後の生活を支える制度は、公的年金(1・2階部分)に加え、以下のように3階以上の上乗せ制度として整理できます。

階層制度名主な対象者
3階以上(年金型)確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金企業型(企業型DC)・iDeCo会社員・自営業者等
3階以上(退職金型)退職一時金制度・小規模企業共済・中小企業退職金共済(中退共)会社員・中小企業経営者・個人事業主等
1〜2階国民年金・厚生年金保険全国民・会社員等

企業年金制度

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB:Defined Benefit)は、あらかじめ定められた算定式に基づいて給付額が決まる企業年金です。運用リスクは企業が負います。

  • 実施形態:規約型(信託銀行・生命保険会社等に資産管理を委託)と基金型(企業年金基金を設立)の2種類
  • 掛金:原則として事業主が全額負担
  • 給付:年金または一時金として受け取れる。受給要件・給付額は規約によって異なる
  • ポータビリティ:転職時に積立金を確定拠出年金(DC)に移換できる

確定拠出年金・企業型(企業型DC)

確定拠出年金・企業型(DC:Defined Contribution)は、掛金の額が確定している年金制度です。加入者自身が掛金を運用し、運用実績に応じて給付額が変わります。運用リスクは加入者(従業員)が負います。

  • 掛金の上限:他の企業年金がない場合は月額55,000円、他の企業年金がある場合は月額27,500円
  • マッチング拠出:加入者が事業主の掛金に上乗せして自分でも拠出できる制度。加入者拠出額≦事業主拠出額、かつ合計が上限額以内であること
  • 受取開始年齢:60歳から75歳の間(加入者期間10年以上で60歳から受給可能)
  • ポータビリティ:転職・退職時にiDeCoや他の企業型DCへ資産を移換できる

個人型確定拠出年金(iDeCo)

iDeCo(イデコ)は、個人が自分で掛金を拠出・運用する個人型の確定拠出年金です。国民年金・厚生年金の被保険者であれば、原則として20歳以上65歳未満の人が加入でき、自営業者から会社員・公務員・専業主婦(主夫)まで幅広く利用できます。

iDeCoの掛金上限

加入者区分月額掛金上限
自営業者等(第1号被保険者)68,000円(国民年金基金との合算)
企業型DCのみに加入している会社員20,000円
企業型DCと確定給付企業年金に加入している会社員12,000円
確定給付企業年金のみに加入している会社員12,000円
企業年金のない会社員23,000円
公務員12,000円
専業主婦(主夫)等(第3号被保険者)23,000円

iDeCoの税制優遇と受取

  • 掛金:全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象
  • 運用中:運用益は非課税
  • 受取時:一時金受取は退職所得、年金受取は公的年金等の雑所得として税制優遇が適用される
  • 受取開始年齢:60歳から75歳の間(加入者期間10年以上で60歳から受給可能)

iDeCoは「掛金が所得控除・運用益が非課税・受取時も優遇税制」というトリプルの税制優遇が特徴です。ただし原則60歳まで引き出しができないため、長期的な老後資金の積立に向いた制度です。

退職金制度

小規模企業共済

小規模企業共済は、中小企業の経営者・役員・個人事業主のための退職金積立制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。

  • 対象者:常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主・会社等の役員など
  • 掛金:月額1,000円〜70,000円(500円単位)。全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象
  • 給付:廃業・退職時に一時金または分割(年金)で受け取れる。一時金受取は退職所得扱い
  • 貸付制度:掛金の範囲内で低利の事業資金貸付を受けられる

中小企業退職金共済(中退共)

中退共は、中小企業が従業員のために掛金を拠出する退職金共済制度です。独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。

  • 掛金:月額5,000円〜30,000円(16段階)。全額事業主負担で損金算入可能。新規加入・増額時は国の助成あり
  • 給付:退職時に従業員本人へ直接支払われる。勤続年数・掛金額に応じて決定
  • 注意点:掛金は事業主が全額負担するが、給付を受けるのは従業員本人(事業主は受け取れない)

企業年金・退職金と税金

退職所得の計算

退職一時金・確定拠出年金の一時金受取・小規模企業共済の一時金受取などは「退職所得」として課税されます。退職所得は分離課税で、他の所得と合算されず、税負担が軽くなる優遇措置があります。

退職所得の計算式:退職所得 =(退職金収入 - 退職所得控除額)× 1/2

勤続年数5年以下の法人役員等の退職金は「1/2課税」が適用されません(特定役員退職手当等)。また、勤続年数5年以下の従業員(役員以外)の退職金のうち、退職所得控除後の金額が300万円を超える部分についても1/2課税が不適用となります(令和4年改正)。

退職所得控除額の計算

退職所得控除額は勤続年数によって異なります。勤続年数に1年未満の端数がある場合は1年に切り上げて計算します。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

例として、勤続30年の場合の退職所得控除額は「800万円+70万円×(30-20)=1,500万円」となります。

年金として受け取る場合の税金

企業年金や確定拠出年金を年金形式で受け取る場合は、公的年金等と合算して「雑所得(公的年金等)」として課税されます。公的年金等控除が適用されるため、一定額までは非課税となります。

受取形式所得区分適用される控除
一時金退職所得(分離課税)退職所得控除
年金雑所得(公的年金等)公的年金等控除

一時金と年金のどちらで受け取るかは税負担だけでなく、長生きリスク・運用リスク・資金流動性など複数の観点から総合的に判断することが重要です。FPとして顧客へのアドバイス場面が想定されます。

試験の重要ポイント

退職所得の計算手順

退職所得の計算は3ステップで行います。①退職所得控除額を勤続年数から計算→②退職金収入から退職所得控除額を引く→③その1/2が退職所得(分離課税の対象)。試験では勤続年数・退職金収入が与えられ、退職所得または税額を求める形式が多く出題されます。

iDeCo・企業型DCの掛金上限の整理

iDeCoの掛金上限は加入者の属性によって異なります。自営業者の上限が最も高い(月額68,000円)こと、公務員・確定給付型加入者は月額12,000円と低いこと、企業年金のない会社員は月額23,000円であることを整理しておきましょう。企業型DCの上限(他の年金なし:月額55,000円)とあわせて覚えると整理しやすくなります。

各制度の税制優遇の整理

制度掛金の税制運用中の税制受取時の税制
iDeCo・企業型DC全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除または損金算入)運用益非課税退職所得(一時金)または雑所得(年金)
小規模企業共済全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)退職所得(一時金)または雑所得(分割)
中退共全額損金算入(事業主)退職所得(従業員が受取)

参考・出典

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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