法人税額の計算

CFP

1. 概要

法人税額の最終的な計算は、課税所得に税率を乗じた後、欠損金の繰越控除や各種税額控除を適用して求めます。本記事では、赤字が生じた場合の欠損金の繰越控除・繰り戻し還付の制度と、法人税額の計算の全体の流れを整理します。

📌 法人税額計算の全体の流れ
① 税引前当期純利益
 + 加算(損金不算入・益金算入)
 - 減算(益金不算入・損金算入)
 = 所得金額(課税所得)
② 所得金額 × 税率 = 法人税額(税額控除前)
③ 法人税額 - 税額控除(所得税額控除・外国税額控除等)= 差引法人税額
④ 差引法人税額 × 10.3% = 地方法人税額
⑤ 差引法人税額 + 地方法人税額 = 申告・納付税額

2. 欠損金の繰越控除

各事業年度の所得計算上、損金の額が益金の額を超える場合に生じる赤字を「欠損金」といいます。青色申告を行っている法人は、欠損金を翌事業年度以降に繰り越して、将来の黒字所得から控除することができます。

項目内容
繰越期間欠損金が生じた事業年度開始日から10年以内に開始する事業年度
適用要件欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出していること
控除の順序最も古い事業年度の欠損金から順次控除
控除限度額(大法人)控除前所得金額の50%(平成30年4月以後開始事業年度)
控除限度額(中小法人等)控除前所得金額の100%(全額控除可)

⚠️ 個人(所得税)との繰越期間の違い
法人(青色申告)の欠損金繰越期間は10年ですが、個人事業主(青色申告)の純損失の繰越期間は3年です。CFP試験で混同しやすいポイントです。

3. 欠損金の繰り戻し還付

欠損金の繰越控除が「将来の黒字と相殺する」制度であるのに対し、繰り戻し還付は「過去の黒字と相殺して、既に納めた法人税を取り戻す」制度です。資金繰りへの即効性があります。

適用できる法人

繰り戻し還付は、中小法人等(資本金1億円以下等)に限り利用できます。大法人(資本金1億円超)には原則として適用されません(解散・災害等の特別な場合を除く)。

要件と還付計算

項目内容
繰り戻す期間欠損事業年度開始日の前1年以内に開始した事業年度(通常は前事業年度)
要件①還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書を提出
要件②欠損事業年度の青色申告書を提出期限内に提出
要件③確定申告書と同時に還付請求書を提出

📌 還付金額の計算式
還付金額 = 前期(還付所得事業年度)の法人税額 × (当期欠損金額 ÷ 前期所得金額)

※当期欠損金額が前期所得金額を超える場合は、前期所得金額が上限
※繰り戻し還付は法人税・地方法人税のみ。事業税・住民税には適用なし

繰越控除と繰り戻し還付の比較

項目欠損金の繰越控除欠損金の繰り戻し還付
方向欠損金を将来に繰り越す欠損金を過去に繰り戻す
効果将来の黒字と相殺して法人税を軽減既に納めた法人税の還付を受ける
資金効果将来の節税(即効性なし)即時の現金還付(即効性あり)
対象法人青色申告法人すべて中小法人等(資本金1億円以下等)
対象期間10年間繰り越し可前1年以内に開始した事業年度
地方税への適用あり(事業税・住民税にも繰越可)なし(法人税・地方法人税のみ)

4. 税額控除の種類

税額控除は、課税所得に税率を乗じた法人税額から直接差し引くものです。損金算入(所得を減らす)より税額控除(税額を直接減らす)の方が節税効果は高くなります。

主な税額控除の種類

税額控除の種類概要
所得税額控除法人が受け取る利子・配当等に課された源泉所得税額を法人税額から控除(二重課税の排除)
外国税額控除国外所得に対して外国で課された税額を控除(国際的二重課税の排除)。控除限度額あり
中小企業投資促進税制(税額控除)中小企業者等が一定の機械装置等を取得した場合、取得価額の7%を税額控除(資本金3,000万円以下の法人)。令和9年3月末まで
中小企業経営強化税制(税額控除)経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が対象設備を取得した場合、取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下は7%)を税額控除。令和9年3月末まで

📌 中小企業投資促進税制・経営強化税制の税額控除上限
両制度の税額控除の合計額は、その事業年度の法人税額の20%が上限です。控除しきれなかった金額は翌事業年度に繰り越しできます。

特別償却と税額控除の違い

項目特別償却税額控除
仕組み通常の減価償却に加え、取得価額の30%を追加で費用計上(前倒し)法人税額から取得価額の7%(または10%)を直接控除
節税効果将来分を前倒しするだけで、耐用年数全体では節税総額は変わらない確実な節税効果(税額そのものが減少)
赤字法人赤字(課税所得なし)でも費用計上可法人税額がなければ控除できない
向いているケース黒字が大きい年に利益を圧縮したい場合黒字で確実に節税したい場合

5. 法人税額計算の具体的な流れ

計算例(中小法人・資本金1億円以下)

📌 計算例
前提:資本金5,000万円、当期所得金額1,500万円、繰越欠損金200万円

① 所得金額:1,500万円
② 欠損金の繰越控除:△200万円(中小法人は全額控除可)
③ 課税所得:1,300万円

④ 法人税額の計算:
  800万円以下の部分:800万円 × 15% = 120万円
  800万円超の部分:500万円 × 23.2% = 116万円
  法人税額:236万円

⑤ 地方法人税:236万円 × 10.3% = 約24.3万円
⑥ 申告・納付税額(法人税+地方法人税):約260.3万円
(この他に法人住民税・法人事業税が別途課税されます)

6. 申告・納付

区分内容期限
確定申告事業年度終了後に法人税・地方法人税を申告・納付事業年度終了日の翌日から2か月以内
中間申告(前期実績基準)前期法人税額の2分の1を納付(事業年度が6か月超の法人)事業年度開始後6か月経過後2か月以内
中間申告(仮決算)期中の実績で仮決算を行い、実際の税額を申告・納付同上
申告期限の延長定款等に定めがある場合、税務署長の指定を受けることで1か月延長可ただし納付期限は延長されない(利子税が発生)

7. 試験の重要ポイント

  • 欠損金の繰越期間:法人(青色)は10年。個人(青色)の純損失は3年。この違いは頻出
  • 繰越控除の控除限度額:中小法人等は所得金額の100%(全額)。大法人は50%
  • 繰り戻し還付は中小法人等のみ利用可。大法人には原則適用なし
  • 繰り戻し還付は法人税・地方法人税のみ。事業税・住民税(地方税)には適用なし
  • 繰り戻せる期間は前1年以内に開始した事業年度(通常は前事業年度のみ)
  • 繰り戻し還付の請求は確定申告書と同時に還付請求書を提出。提出期限を過ぎると利用不可
  • 税額控除は損金算入より節税効果が高い。ただし法人税額がなければ適用できない
  • 中小企業投資促進税制の税額控除は取得価額の7%(資本金3,000万円以下)。経営強化税制は10%(資本金3,000万円超1億円以下は7%)
  • 両税額控除の合計上限は法人税額の20%。超過分は翌事業年度に繰越可
  • 確定申告・納付期限は事業年度終了日の翌日から2か月以内。申告期限は延長できるが納付期限は延長不可

参考・出典

  • 国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm
  • 国税庁「No.5763 欠損金の繰戻しによる還付」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm
  • 中小企業庁「中小企業税制(令和7年度版)」https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/pamphlet/zeisei_r6.pdf
  • 国税庁「令和7年度法人税関係法令の改正の概要」

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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