相続税の計算・申告・納付

CFP

概要

相続税の計算は、課税財産の把握から始まり、税額の算出・各種控除の適用・申告・納付まで複数のステップを踏みます。この記事では、相続税の計算フロー全体を7つのステップで整理し、速算表・各種税額控除・2割加算・申告・納付方法(延納・物納)まで、CFP試験で問われる重要論点を体系的に解説します。

相続税の計算フロー(7ステップ)

相続税の計算は、①課税価格の計算 ②課税遺産総額の計算 ③相続税の総額の計算 ④各人の相続税額の按分 ⑤2割加算 ⑥税額控除の適用 ⑦納付税額の確定、という順序で進みます。

ステップ1:各人の課税価格を計算する

各相続人等が取得した財産(本来の相続財産+みなし相続財産)から、債務・葬式費用を控除し、生前贈与加算分を加えたものが「課税価格」です。主な内訳は次のとおりです。

  • 本来の相続財産:土地・建物・現預金・有価証券・その他財産
  • みなし相続財産:死亡保険金・死亡退職金(各々、非課税限度額「500万円×法定相続人の数」を超える部分が課税対象)
  • 相続時精算課税適用財産:令和6年以後は基礎控除110万円を控除した残額を加算
  • 生前贈与加算:相続開始前最長7年以内の暦年課税による贈与財産(3年超7年以内の分は合計100万円を控除)
  • 控除:債務(借入金・未払金等)・葬式費用

ステップ2:課税遺産総額を計算する

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)

基礎控除の「法定相続人の数」は相続放棄があっても放棄がなかったものとして数えます。養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで算入できます。課税遺産総額がゼロ以下になれば申告不要です(ただし特例適用で税額ゼロの場合は申告必要)。

ステップ3:相続税の総額を計算する

課税遺産総額を法定相続分で按分し、速算表の税率・控除額を当てはめて各人の仮税額を合算したものが「相続税の総額」です。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

速算表に当てはめるのは「法定相続分に応ずる取得金額」(仮定計算)です。実際に各人が相続した金額ではありません。この仮定計算で出した各人の税額を合計したものが「相続税の総額」となり、この総額を実際の取得割合で按分して各人の税額が決まります。

ステップ4〜7:按分・2割加算・税額控除・納付税額確定

各人の税額=相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計額。その後、2割加算(配偶者・父母・子以外の取得者に20%加算)を適用し、贈与税額控除→配偶者の税額軽減→未成年者控除→障害者控除→相次相続控除→外国税額控除の順に控除します。

税額控除内容
配偶者の税額軽減1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い額まで非課税。申告必須
未成年者控除(18歳-相続開始時年齢)×10万円。端数切捨て
障害者控除一般:(85歳-年齢)×10万円、特別:×20万円。端数切捨て
相次相続控除10年以内の相次相続に適用。経過年数に応じて逓減

計算例

相続人が配偶者と子2人(計3人)の場合で、課税価格の合計が2億円のケースです。

基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円 → 課税遺産総額:2億円-4,800万円=1億5,200万円

法定相続分による仮取得額:配偶者7,600万円(×30%-700万円=1,580万円)、子A・B各3,800万円(×20%-200万円=各560万円)。相続税の総額:1,580万円+560万円+560万円=2,700万円

準確定申告

被相続人が年の途中で死亡した場合、相続人は被相続人の1月1日から死亡日までの所得について確定申告を行わなければなりません。この申告を準確定申告といいます。

項目準確定申告通常の確定申告
申告義務者相続人(被相続人に代わり)納税者本人
申告期限相続開始を知った日の翌日から4か月以内翌年2月16日〜3月15日
提出先被相続人の死亡当時の住所地を管轄する税務署納税者の住所地を管轄する税務署

所得控除の判定は「死亡日の現況」で行います。月割計算なし。死亡後に相続人が支払った医療費は被相続人の準確定申告の医療費控除に含められません。

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

相続または遺贈により取得した土地・建物・株式などを一定期間内に譲渡した場合、負担した相続税額の一部を譲渡所得の取得費に加算できる特例があります(租税特別措置法第39条)。

  • 要件:相続・遺贈で取得した財産に相続税が課税されていること、相続開始の翌日から申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
  • 計算式:取得費加算額=その者の相続税額×譲渡した財産の相続税評価額÷その者の課税価格(債務控除前)
  • 注意:譲渡所得のみ適用(事業所得・雑所得は不可)。上限は譲渡益

個人版事業承継税制

青色申告の個人事業者の後継者が事業用資産を贈与または相続で取得した場合に、贈与税・相続税の全額(100%)の納税が猶予される制度です(租税特別措置法第70条の6の8〜)。

項目内容
対象資産特定事業用資産(土地400㎡まで、建物床面積800㎡まで、その他一定の減価償却資産)
適用期間平成31年(2019年)1月1日〜令和10年(2028年)12月31日の贈与・相続
猶予割合贈与税・相続税の全額(100%)

個人版事業承継税制を適用するには、都道府県知事による「円滑化法の認定」を事前に受ける必要があります。法人版事業承継税制(非上場株式を対象)とは別制度です。在庫や売掛金は対象外です。

相続税の申告

課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合は申告が必要です。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを適用した結果、税額がゼロになる場合でも申告書の提出は必須です。

申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」。期限延長は原則不可。遺産分割が未確定の場合は法定相続分で「未分割申告」し「分割見込書」を提出。分割確定後4か月以内に更正の請求で特例適用が可能です。

相続税の納付方法

納付方法主な要件特徴
金銭一括納付なし(原則)最もシンプル。期限厳守
延納税額10万円超・金銭納付困難・担保提供最長20年の分割。利子税あり
物納延納でも困難・相続財産での納付延納が優先。財産種類に制限あり

試験の重要ポイント

計算フロー・税額控除の頻出論点

  • 速算表に当てはめるのは「法定相続分に応ずる取得金額」(実際の相続額ではなく仮定計算)
  • 基礎控除の法定相続人の数:放棄があっても放棄がなかったものとして数える。養子は実子あり1人・実子なし2人まで
  • 2割加算の対象:兄弟姉妹・祖父母・孫(代襲相続人の孫は除く)等。配偶者・父母・子(代襲含む)以外
  • 配偶者の税額軽減:1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い額まで非課税。申告が前提
  • 税額控除の適用順序(贈与税額→配偶者の税額軽減→未成年者→障害者→相次相続→外国税額)も試験で問われる

準確定申告・取得費加算・個人版事業承継税制の頻出論点

  • 準確定申告の期限:「相続開始を知った日の翌日から4か月以内」。相続税の申告期限(10か月)と混同に注意
  • 準確定申告の所得控除は「死亡日の現況」で判定。月割計算なし
  • 取得費加算の特例:相続開始翌日から「申告期限の翌日以後3年」以内の譲渡が要件。譲渡所得のみ適用
  • 個人版事業承継税制:対象は青色申告の個人事業者の事業用資産(土地400㎡・建物800㎡まで等)。令和10年12月31日まで
  • 個人版と法人版の違い:個人版は個人事業の事業用資産が対象、法人版は非上場株式が対象

参考・出典

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

タイトルとURLをコピーしました