取引相場のない株式の評価と株価対策

CFP

概要

中小企業オーナーの相続・事業承継では、自社株式(取引相場のない株式)の評価額が相続税・贈与税の計算に直結します。この記事では、財産評価基本通達に基づく非上場株式の評価方法(株主区分の判定・会社規模の判定・各評価方式)と、事業承継を有利に進めるための株価引き下げ対策を解説します。

評価方式を決めるための2つの判定

①株主区分の判定

株式を取得した株主が「同族株主等」かどうかで、適用される評価方式が大きく異なります。同族株主等が取得する場合は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式)、それ以外の少数株主が取得する場合は特例的評価方式(配当還元方式)を使います。

会社の状況取得者の状況評価方式
同族株主のいる会社同族株主(議決権30%以上のグループ)に属する株主が取得原則的評価方式
同族株主のいる会社同族株主以外の株主が取得(取得後の議決権割合5%未満等)配当還元方式
同族株主のいない会社議決権15%以上のグループに属する中心的な株主等が取得原則的評価方式
同族株主のいない会社上記以外の株主が取得配当還元方式

株主区分の判定は「取得後」の議決権割合で行います。取得前の割合ではない点に注意が必要です。

②会社規模の判定

原則的評価方式が適用される場合、次に会社の規模を「大会社・中会社(大・中・小)・小会社」の5段階に判定します。判定基準は①従業員数、②総資産価額(帳簿価額)、③直前期末以前1年間の取引金額(売上高)の3要素です。従業員数が70人以上の場合は、他の要素にかかわらず大会社です。

原則的評価方式の各評価方法

大会社:類似業種比準方式

評価会社と類似する上場会社群の株価を基に、1株当たりの配当金額(Ⓑ)・利益金額(Ⓒ)・純資産価額(帳簿価額)(Ⓓ)の3要素を類似業種の数値(B・C・D)と比較して算出します。計算式の概要:類似業種の株価(A)×(Ⓑ/B+Ⓒ/C+Ⓓ/D)÷3×斟酌率。斟酌率は大会社0.7・中会社0.6・小会社0.5です。

小会社:純資産価額方式

会社の総資産・負債を相続税評価額(時価)に洗い替えた純資産から、評価差額に対する法人税額等相当額(37%)を控除して計算します。

純資産価額方式では「評価差額に対する法人税額等相当額37%」を控除できます。これは会社が保有資産を売却した場合に生じる法人税負担を考慮したものです。この37%控除は試験でよく出題される数字です。

中会社:併用方式(類似業種比準+純資産価額)

会社規模Lの割合(類似業種)純資産価額の割合
大会社1.0(100%)0%(純資産価額のみも可)
中会社の大0.9(90%)10%
中会社の中0.75(75%)25%
中会社の小0.6(60%)40%
小会社0.5(50%、選択可)50%(純資産価額のみが原則)

特例的評価方式:配当還元方式

少数株主(同族株主等以外)が取得した株式は配当還元方式で評価します。計算式:その株式にかかる年配当金額(1株50円当たり)÷10%。配当ゼロの場合は2円50銭で計算します。

株価引き下げ対策

類似業種比準価額を下げる対策

  • 役員報酬の引き上げ:費用計上により当期利益(利益金額)が減少し株価が下がる
  • 役員退職金の支給:純資産の減少と利益の圧縮が同時に生じ、3要素いずれにも効果がある
  • 配当を低く設定する:通常配当を低く抑えつつ特別配当を活用(特別配当・記念配当は評価上の配当金額に含めない)

純資産価額を下げる対策

  • 不動産・設備投資の実施:現金を不動産等に替えると相続税評価上の価額に圧縮される。ただし取得後3年間は時価評価のため、承継の3年以上前に実施する必要がある
  • 含み損資産の売却:損失を実現させ純資産を減少させる

株価引き下げ対策は事業承継の3〜5年前から計画的に実施することが重要です。評価基準日の直前期末の数値が評価に使われるため、対策のタイミングを誤ると効果が出ません。

試験の重要ポイント

評価方式の判定フロー

  • 判定の順序は「①株主区分 → ②会社規模 → ③特定会社該当確認 → ④評価方式決定」
  • 株主区分は「取得後」の議決権割合で判定(取得前ではない)
  • 従業員70人以上は無条件で大会社
  • 財産評価基本通達上の「大会社・中会社・小会社」は、会社法や中小企業基本法の区分とは無関係

各評価方式の計算上の注意点

  • 類似業種比準価額の3要素(配当・利益・純資産)は1株50円換算で計算する
  • 純資産価額方式では「評価差額×37%」を控除する(法人税額等相当額)
  • 中会社の併用方式は「類似業種比準価額×L+純資産価額×(1−L)」。Lの値は中大0.9・中中0.75・中小0.6
  • 配当還元方式の計算式は「年配当金額(1株50円換算)÷10%」。配当ゼロの場合は2円50銭で計算する

参考・出典

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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