概要
本記事では、個人の消費生活に関わるキャッシュレス決済・各種ローン・貸金業法の総量規制と、中小法人・個人事業主の資金計画に関わる財務諸表の基礎・資金繰り・信用保証制度を解説します。個人分野と法人分野という異なる内容をまとめていますが、CFP試験では「家計の借入管理」と「事業資金の調達」という両面からFPが顧客を支援する場面として出題されます。
特に貸金業法の総量規制は数値(年収の3分の1)を正確に覚えることが重要です。また中小企業の財務諸表については、FPとして基本的な読み方を押さえておくことが求められます。
キャッシュレス決済
キャッシュレス決済の種類と特徴
キャッシュレス決済とは、現金を使わずに代金を支払う方法の総称です。支払いのタイミングによって「前払い(プリペイド)」「即時払い(リアルタイムペイ)」「後払い(ポストペイ)」の3種類に分類されます。
| 分類 | 主な手段 | 特徴 |
|---|---|---|
| 前払い(プリペイド) | 電子マネー(Suica・PASMO等)、プリペイドカード | 事前にチャージした金額の範囲内で利用。使いすぎの防止に役立つ |
| 即時払い | デビットカード、QRコード決済(銀行口座連携) | 利用と同時に口座から引き落とし。残高の範囲内でのみ利用可能 |
| 後払い(ポストペイ) | クレジットカード、QRコード決済(後払い設定) | 利用後に請求。1か月分をまとめて支払う。利用限度額あり |
クレジットカードの支払い方式
クレジットカードの支払い方式には、主に以下の種類があります。
- 1回払い:利用額を翌月一括で支払う。手数料なし。
- 分割払い:利用額を複数回に分けて支払う。回数に応じた手数料が発生する。
- リボルビング払い(リボ払い):毎月一定額を支払う方式。残高に対して手数料(実質年率15〜18%程度)が発生し続けるため、利用には注意が必要。
- ボーナス払い:夏・冬のボーナス時期にまとめて支払う。手数料なしの場合が多い。
リボルビング払いは毎月の支払額が一定で家計管理しやすく見えますが、残高が減らないまま手数料が積み重なる「リボ地獄」に陥るリスクがあります。FPとして顧客への説明が求められる重要ポイントです。
各種ローンと貸金業法の総量規制
各種ローンの種類と注意点
個人が利用する主なローンには、住宅ローン・自動車ローン・教育ローン・カードローン・フリーローンなどがあります。金融機関(銀行・信用金庫等)のローンと、消費者金融・クレジット会社のローンでは金利水準が大きく異なります。
| ローンの種類 | 用途 | 金利の目安 | 主な提供機関 |
|---|---|---|---|
| 住宅ローン | 住宅取得・増改築 | 年0.3〜3%程度(変動〜固定) | 銀行・住宅金融支援機構等 |
| 自動車ローン | 自動車購入 | 年1〜8%程度 | 銀行・ディーラーローン等 |
| カードローン(銀行系) | 自由(使途不問) | 年2〜14%程度 | 銀行 |
| カードローン(消費者金融) | 自由(使途不問) | 年15〜18%程度 | 消費者金融会社 |
| クレジットカードのキャッシング | 現金借入 | 年15〜18%程度 | クレジット会社 |
貸金業法の総量規制
貸金業法では、個人が消費者金融やクレジット会社(貸金業者)から借り入れられる総額に上限を設けています。これを「総量規制」といいます。
総量規制の上限:貸金業者からの借入残高の合計が、年収の3分の1を超えてはならない。
- 対象となる借入:貸金業者(消費者金融・クレジット会社等)からの貸付。銀行・信用金庫・信用組合・農協等の貸付は対象外。
- 対象外となる借入:住宅ローン・自動車ローン・有価証券担保ローンなど、不動産等を担保とする貸付は総量規制の対象外。
- 例外貸付:緊急の医療費など一時的な資金需要に対応する例外規定がある。
なお、銀行のカードローンは貸金業法の総量規制の対象外ですが、銀行独自の審査基準で貸付上限が設けられています。
中小企業の定義と財務諸表の基礎
中小企業の定義
中小企業基本法における中小企業の定義は業種によって異なります。資本金と従業員数のいずれか一方を満たせば中小企業に該当します。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
財務諸表の基礎
FPが中小法人・個人事業主の顧客を支援する際、財務諸表の基本的な読み方を理解していることが求められます。主な財務諸表は以下の3つです。
- 貸借対照表(バランスシート・B/S):特定時点における資産・負債・純資産の状況を示す。「資産=負債+純資産」の等式が成立する。
- 損益計算書(P/L):一定期間の収益・費用・利益を示す。売上高から各種費用を段階的に差し引いて当期純利益を算出する。
- キャッシュフロー計算書:一定期間の現金の流れを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3区分で示す。利益が出ていても資金繰りが厳しい状況(黒字倒産)を把握するために重要。
損益計算書の利益の5段階
損益計算書では、売上高から費用を段階的に差し引いて5つの利益が算出されます。
| 利益の種類 | 計算方法 | 意味 |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高-売上原価 | 商品・サービスそのものの稼ぐ力 |
| 営業利益 | 売上総利益-販売費及び一般管理費 | 本業の稼ぐ力 |
| 経常利益 | 営業利益+営業外収益-営業外費用 | 通常の事業活動全体の稼ぐ力 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益+特別利益-特別損失 | 臨時・特別項目を含めた利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益-法人税等 | 最終的な利益 |
資金繰りと信用保証制度
資金繰り
資金繰りとは、事業活動に必要な資金の収支を管理し、支払い能力を維持することです。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れる・仕入れの支払いが先行するなどの理由で手元資金が不足することがあります(黒字倒産)。
資金繰り管理の基本ツールが「資金繰り表」です。毎月の収入(売上入金・借入等)と支出(仕入支払・人件費・借入返済等)を時系列で管理し、月末残高がマイナスにならないよう計画します。資金不足が見込まれる場合は、事前に金融機関への融資相談や支払サイトの調整を行います。
信用保証制度
中小企業が金融機関から融資を受ける際、担保や信用力が不足している場合に「信用保証協会」が保証人となる制度です。中小企業は信用保証協会に保証料を支払い、万一返済できなくなった場合は信用保証協会が金融機関に代位弁済します。その後、中小企業は信用保証協会に対して返済義務を負います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保証機関 | 各都道府県・政令指定都市に設置された信用保証協会(全国52協会) |
| 対象 | 中小企業・小規模事業者 |
| 保証限度額 | 無担保保証:8,000万円/普通保証:2億円 |
| 保証料率 | 保証残高に対して年0.45〜1.90%程度(案件・協会により異なる) |
| 代位弁済後の求償 | 信用保証協会が金融機関に弁済後、中小企業に対して求償権を行使する |
信用保証制度を利用すると、担保や実績が少ない創業期の企業でも融資を受けやすくなります。国の政策として「セーフティネット保証」や「危機関連保証」など、経済状況に応じた特別保証制度も設けられています。
試験の重要ポイント
総量規制の適用範囲を整理する
| 借入先・種類 | 総量規制の対象 |
|---|---|
| 消費者金融のカードローン | 対象(年収の1/3以内) |
| クレジット会社のキャッシング | 対象(年収の1/3以内) |
| 銀行・信用金庫のカードローン | 対象外 |
| 住宅ローン・自動車ローン | 対象外 |
| 不動産担保ローン | 対象外 |
財務諸表の頻出ポイント
- 貸借対照表は「ストック(残高)」、損益計算書・キャッシュフロー計算書は「フロー(期間中の動き)」を表す
- 「黒字倒産」はキャッシュフロー計算書で把握できる。損益計算書上は利益があっても、資金が枯渇することがある
- 損益計算書の5段階利益(売上総利益→営業利益→経常利益→税引前当期純利益→当期純利益)の順序と計算方法を覚える
中小企業の定義の数値を覚える
中小企業の定義は資本金・従業員数のいずれか一方を満たせば該当します。製造業3億円・300人、卸売業1億円・100人、小売業5,000万円・50人、サービス業5,000万円・100人の数値を確実に押さえましょう。
参考・出典
- 日本FP協会「CFP資格審査試験 出題範囲」
- 金融庁「貸金業法のしくみ」
- 中小企業庁「中小企業基本法における中小企業の定義」
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度の概要」
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

