厚生年金の仕組みと計算方法

📊 この記事の出題頻度:★★★(高)
厚生年金は「ライフプランニングと資金計画」の最頻出テーマのひとつです。保険料の計算・老齢厚生年金の受給要件・在職老齢年金の支給停止計算は毎回出題されます。2025年度の最新数値で学習してください。

厚生年金とは:公的年金の「2階部分」

厚生年金保険は、会社員・公務員などが加入する公的年金で、国民年金(基礎年金)の上に上乗せされる「2階部分」に当たります。将来受け取る年金が、過去の収入と加入期間に比例して増える報酬比例型の制度です。

国民年金の第2号被保険者として厚生年金に加入すると、老齢・障害・遺族のそれぞれの場面で、基礎年金に加えて厚生年金の給付も受け取ることができます。自営業者が国民年金(1階)だけであるのに対し、会社員は「1階+2階」の手厚い保障を得られる点が最大の特徴です。

厚生年金の加入要件

原則として厚生年金の適用事業所に勤めるすべての従業員が加入対象です。パート・アルバイトの場合は、勤務時間・賃金の要件によって加入義務が生じます。

区分加入条件
正社員・フルタイム適用事業所に勤めていれば原則全員加入
短時間労働者(パート等)①週所定労働時間20時間以上 ②月額賃金8.8万円以上 ③学生でない ④勤務先が51人以上の事業所(2024年10月〜)
70歳以上保険料負担なし・加入不可(ただし在職老齢年金の調整は適用)

⚠️ 社会保険の適用拡大(試験頻出の改正ポイント)
短時間労働者への社会保険適用は段階的に拡大されています。2016年10月:501人以上 → 2022年10月:101人以上 → 2024年10月:51人以上に引き下げられました。「何人以上の事業所か」を問う問題が出題されます。

厚生年金保険料の仕組みと計算方法

厚生年金の保険料は、毎月の給与を一定の幅で区切った標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。算出した保険料は事業主と被保険者が折半して負担します。

💴 2025年度の厚生年金保険料(試験頻出数値)
保険料率:18.3%(2017年9月以降、全国一律で固定)
計算式:標準報酬月額 × 18.3% = 保険料総額(労使合計)
    被保険者負担:総額の1/2(9.15%)

【計算例】標準報酬月額30万円の場合
 保険料総額:300,000円 × 18.3% = 54,900円
 被保険者負担:54,900円 ÷ 2 = 27,450円(給与天引き額)
 事業主負担:同じく27,450円

標準報酬月額の等級と範囲(2025年度)

標準報酬月額は報酬額に応じて32等級に区分されます。毎年4〜6月の給与の平均をもとに、9月から翌年8月まで適用される等級が決まります(定時決定)。

区分標準報酬月額該当する報酬月額の目安
最低等級(第1級)88,000円93,000円未満
例:第19等級300,000円290,000円以上〜310,000円未満
最高等級(第32級)650,000円635,000円以上

💡 賞与にも保険料がかかる(総報酬制)
2003年4月から「総報酬制」が導入され、賞与にも月給と同率(18.3%)の保険料が課されます。賞与分の計算基礎を「標準賞与額」といい、1か月あたりの上限は150万円です(年間上限:賞与の累計が150万円/月×12か月)。

老齢厚生年金の受給要件と計算式

老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給要件(受給資格期間10年以上)を満たし、かつ厚生年金の被保険者期間が1か月以上あれば、65歳から受給できます。

年金額の計算式(報酬比例部分)

老齢厚生年金(報酬比例部分)は、在職中の平均収入と加入期間に応じて計算されます。2003年4月に総報酬制が導入されたため、それ以前と以降で計算式が異なります。FP3級では、簡略化した下記の計算式が出題されます。

📐 老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式

<2003年3月以前の加入期間分>
 平均標準報酬月額 × 7.125/1,000 × 被保険者期間の月数
<2003年4月以降の加入期間分(総報酬制導入後)>
 平均標準報酬額 × 5.481/1,000 × 被保険者期間の月数

※平均標準報酬月額:月給のみをもとにした平均収入(2003年3月以前の期間用)
※平均標準報酬額:月給+賞与を含めた平均収入(2003年4月以降の期間用)

【計算例】2003年4月以降のみ30年間(360か月)加入・平均標準報酬額30万円の場合
 300,000円 × 5.481/1,000 × 360か月 = 591,948円/年(約59.2万円)

加給年金額(配偶者・子への加算)

厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が65歳になったとき、一定の要件を満たす配偶者や子がいる場合、老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。「厚生年金版の家族手当」と理解しておきましょう。

  • 配偶者への加給年金:配偶者が65歳になるまで加算(配偶者自身が20年以上の厚生年金を持っている場合は支給停止)
  • 子への加算:18歳到達年度末(障害がある場合は20歳未満)の子がいる場合に加算

在職老齢年金:働きながら受け取る年金の調整

厚生年金に加入しながら働き、老齢厚生年金も受け取っている場合、給与と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部が支給停止される制度を在職老齢年金といいます。FP3級では計算問題として頻出です。

📐 在職老齢年金の計算式(2025年度)
支給停止調整額:51万円(2025年度。2024年度は50万円)

・基本月額+総報酬月額相当額 ≦ 51万円 → 年金は全額支給
・基本月額+総報酬月額相当額 > 51万円 → 支給停止あり

支給停止額 = (基本月額 + 総報酬月額相当額 − 51万円) ÷ 2
受取年金月額 = 基本月額 − 支給停止額

※基本月額:加給年金を除いた老齢厚生年金の月額(老齢基礎年金は含まない)
※総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額 + 過去1年間の標準賞与額 ÷ 12

【計算例】基本月額10万円・総報酬月額相当額45万円の場合
 合計55万円 > 51万円なので停止あり
 支給停止額:(10万 + 45万 − 51万)÷ 2 = 2万円
 受取年金月額:10万 − 2万 = 8万円

⚠️ 2026年4月からの在職老齢年金改正
2025年6月に年金制度改正法が成立し、在職老齢年金の支給停止調整額が2026年4月から65万円に引き上げられます(2025年度は51万円)。CBT試験の法令基準日(2025年4月1日)では「51万円」が正解ですが、「FPとして当然知っておくべき事項」として2026年4月以降の改正が問われることもあります。

障害厚生年金・遺族厚生年金の概要

障害厚生年金

厚生年金加入中に初診日がある病気やケガで障害状態になった場合に支給されます。障害基礎年金と同時に受け取ることができます。

  • 1級・2級:障害基礎年金に上乗せして支給。報酬比例部分の計算で、被保険者期間が300か月(25年)未満の場合は300か月として計算
  • 3級:障害基礎年金(国民年金)には該当しないが、厚生年金独自の給付として支給。最低保障額あり(2025年度:年623,800円)
  • 障害手当金:軽度の障害が治癒した場合の一時金。厚生年金独自の給付

遺族厚生年金

厚生年金加入者が死亡した場合、遺族に支給されます。遺族基礎年金と異なり、子のない配偶者にも支給される点が重要です。

  • 支給額:死亡した人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の3/4
  • 最低保障:被保険者期間が300か月(25年)未満の場合は300か月として計算
  • 支給対象:配偶者(子のない妻の場合は原則として夫が死亡時に30歳未満だと有期給付)・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)
比較項目遺族基礎年金(国民年金)遺族厚生年金(厚生年金)
支給対象子のある配偶者または子配偶者(子なしも可)・子・父母・孫・祖父母
子のない配偶者受給不可受給可
支給額の計算基礎年金満額+子の加算報酬比例部分の3/4

試験によく出る重要数値まとめ

📋 厚生年金 最重要数値(2025年度・法令基準日2025年4月1日)
・保険料率:18.3%(固定・2017年9月〜) 負担:労使折半(各9.15%)
・標準報酬月額:32等級、最低88,000円〜最高650,000円
・標準賞与額の上限:月150万円
・老齢厚生年金の受給要件:受給資格期間10年以上+厚生年金加入1か月以上
・給付乗率(2003年4月以降):5.481/1,000
・給付乗率(2003年3月以前):7.125/1,000(月給のみ)
・加給年金の要件:厚生年金加入20年以上
・在職老齢年金 支給停止調整額:51万円(2025年度)
・遺族厚生年金の支給額:報酬比例部分の3/4
・障害・遺族の最低保障月数:300か月(25年)みなし計算
・社会保険適用拡大(短時間労働者):51人以上の事業所(2024年10月〜)

FP2級ではここが加わる

FP3級では「制度の仕組みと基本数値の理解」が中心ですが、FP2級では以下が加わります。

  • 在職老齢年金の複合計算問題(繰下げ受給との組み合わせ)
  • 在職定時改定(毎年10月に加入実績を年金額に反映する制度、2022年〜)
  • 特別支給の老齢厚生年金(生年月日に応じた支給開始年齢の変化)
  • 離婚時の年金分割(3号分割・合意分割の計算)

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・制度は毎年改正されることがあります。実際の手続き・申告・納税については、最新の法令および公式情報を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はFP3級試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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