所得控除

CFP

1. 概要

所得控除とは、納税者の個人的な事情(家族構成・医療費・社会保険料の支払い等)を税負担に反映させるために、総所得金額等から一定の金額を差し引く制度です。所得控除を差し引いた後の金額が「課税所得金額」となり、これに税率を掛けて所得税額を計算します。令和7年度税制改正により、基礎控除・給与所得控除・扶養控除等の所得要件が見直されています。

📌 所得控除と税額控除の違い
所得控除:課税所得金額を減らす → 税率をかける前に差し引く
税額控除:計算した税額から直接差し引く

節税効果は税額控除の方が大きい。所得控除は適用される税率によって効果が変わります(税率が高い人ほど節税効果が大きい)。

2. 所得控除の種類一覧

所得控除は全部で16種類あります。大きく「物的控除(支出に関するもの)」と「人的控除(人に関するもの)」に分けられます。

物的控除(支出・損失に関するもの)

控除の種類控除額・要件
雑損控除災害・盗難・横領による損失。(損失額-保険金等補填額)-総所得金額等×10%、または災害関連支出-5万円のいずれか多い方
医療費控除(支払医療費-保険金等補填額)-10万円(総所得金額等の5%いずれか低い方)。最大200万円。
【特例:セルフメディケーション税制】特定一般用医薬品等の購入額-1万2,000円、最大8万8,000円(通常の医療費控除との選択適用)
社会保険料控除支払った社会保険料の全額(国民健康保険・国民年金・厚生年金・介護保険料等)
小規模企業共済等掛金控除支払った掛金の全額(iDeCo・小規模企業共済・企業型DC等)
生命保険料控除新契約(平成24年以降):一般・介護医療・個人年金 各最大4万円、合計最大12万円
旧契約(平成23年以前):一般・個人年金 各最大5万円、合計最大10万円
地震保険料控除地震保険料:最大5万円。旧長期損害保険料:最大1万5,000円(併用時の合計上限も5万円)
寄附金控除(特定寄附金の合計額-2,000円)。上限:総所得金額等の40%。ふるさと納税も対象(ワンストップ特例制度利用時は住民税から控除)

人的控除(納税者本人・家族に関するもの)

控除の種類控除額・要件(令和7年分)
障害者控除障害者:27万円、特別障害者:40万円、同居特別障害者:75万円
寡婦控除27万円(夫と離婚・死別後再婚していない女性で、合計所得金額500万円以下)
ひとり親控除35万円(婚姻歴不問。生計を一にする子(合計所得58万円以下)がいる未婚・離婚・死別の単身者。合計所得500万円以下)
勤労学生控除27万円(合計所得金額85万円以下で、給与所得等以外の所得が10万円以下)
配偶者控除配偶者の合計所得金額58万円以下の場合。本人の合計所得900万円以下:38万円(配偶者70歳以上:48万円)、900万円超950万円以下:26万円、950万円超1,000万円以下:13万円、1,000万円超:適用不可
配偶者特別控除配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下の場合。本人・配偶者の所得に応じて最大38万円(逓減)。本人の合計所得1,000万円超:適用不可
扶養控除一般扶養親族(16歳以上):38万円
特定扶養親族(19〜22歳):63万円
老人扶養親族(70歳以上・同居以外):48万円
老人扶養親族(70歳以上・同居老親):58万円
特定親族特別控除令和7年分から新設。19〜23歳未満の親族(合計所得金額58万円超123万円以下)を扶養している場合:最大63万円(親族の所得に応じて逓減)。扶養控除との同時適用は不可
基礎控除合計所得金額2,500万円以下の人が対象。所得金額に応じて16万円〜58万円(令和7・8年分は最大95万円)。詳細は下表参照

3. 主な所得控除の詳細

医療費控除

1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合に適用できます。生計を一にする家族全員分の医療費を合算できます。

📌 医療費控除の計算式
控除額 =(支払医療費 - 保険金等補填額)- 10万円※
※総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等 × 5%
控除額の上限:200万円

医療費控除の対象になるもの対象にならないもの
病院・歯科の診療費・治療費健康診断・人間ドック(疾病が発見され治療した場合は対象)
処方箋による医薬品購入費予防接種・美容整形
通院のための交通費(電車・バス)自家用車のガソリン代・駐車場代
入院時の食事代(療養のため)差額ベッド代(本人都合)
介護保険サービス(医療系)眼鏡・コンタクトレンズ(治療用を除く)

生命保険料控除

平成24年(2012年)1月1日以後に締結した契約(新契約)と、それ以前の契約(旧契約)で控除額の計算方法が異なります。

区分年間支払保険料控除額(所得税)
新契約
(平成24年以降)
各区分最大4万円
2万円以下支払保険料の全額
2万円超4万円以下支払保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下支払保険料×1/4+2万円
8万円超一律4万円
旧契約
(平成23年以前)
各区分最大5万円
2万5,000円以下支払保険料の全額
2万5,000円超5万円以下支払保険料×1/2+1万2,500円
5万円超10万円以下支払保険料×1/4+2万5,000円
10万円超一律5万円

📌 新契約・旧契約の合計上限
新契約のみ:合計最大12万円(一般4万円+介護医療4万円+個人年金4万円)
旧契約のみ:合計最大10万円(一般5万円+個人年金5万円)
新旧混在:合計最大12万円(各区分の合算方法に注意)

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者の所得金額に応じて、配偶者控除または配偶者特別控除のいずれかが適用されます(両方の同時適用は不可)。

配偶者の合計所得金額給与収入換算(目安)適用される控除
58万円以下〜123万円以下配偶者控除(最大38万円)
58万円超133万円以下123万円超201.6万円以下配偶者特別控除(最大38万円〜逓減)
133万円超201.6万円超どちらも適用不可

⚠️ 令和7年度税制改正:配偶者・扶養の所得要件が変わりました
配偶者控除・扶養控除等の所得要件が48万円以下 → 58万円以下に引き上げられました。給与収入換算では「103万円の壁」が「123万円」に引き上げられています。

基礎控除(令和7年分)

合計所得金額基礎控除額(令和7年分)
2,350万円以下58万円
2,350万円超2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円(適用なし)

📌 令和7・8年分の基礎控除額(所得段階別)
合計所得金額132万円以下:95万円(恒久措置)
合計所得金額132万円超336万円以下:88万円(令和9年以降は58万円)
合計所得金額336万円超489万円以下:68万円(令和9年以降は58万円)
合計所得金額489万円超655万円以下:63万円(令和9年以降は58万円)
合計所得金額655万円超2,350万円以下:58万円(恒久措置)

令和9年以降は、合計所得2,350万円以下の方は一律58万円に統一されます。

4. 給与所得控除の速算表(令和7年分)

会社員・会社役員(役員報酬を含む)に適用される給与所得控除の速算表です。個人事業主には給与所得控除は適用されず、収入から必要経費を差し引いた事業所得に対して課税されます。

給与収入(役員含む)給与所得控除額
190万円以下一律 65万円
190万円超 360万円以下収入×30%+8万円
360万円超 660万円以下収入×20%+44万円
660万円超 850万円以下収入×10%+110万円
850万円超一律 195万円(上限)

📌 年収別・給与所得早見表(令和7年分)

給与収入(役員含む)給与所得控除額給与所得
250万円83万円(250万×30%+8万)167万円
500万円144万円(500万×20%+44万)356万円
1,000万円195万円(上限)805万円

📌 個人事業主との違い
個人事業主には給与所得控除がありません。収入から実際の必要経費を差し引いた金額が事業所得となります。経費が多い業種では有利ですが、経費が少ない業種では給与所得者より課税所得が高くなる場合があります。青色申告特別控除(最大65万円)を活用することで負担を軽減できます。

5. 試験の重要ポイント

  • 所得控除は16種類。「物的控除」と「人的控除」に大別される
  • 所得控除は課税所得を減らす控除。税額控除は税額を直接減らす控除。節税効果は税額控除が大きい
  • 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除は支払額の全額が控除される
  • 医療費控除:上限200万円。生計を一にする家族全員分を合算できる
  • 生命保険料控除:新契約は3区分(一般・介護医療・個人年金)各最大4万円、合計最大12万円
  • 地震保険料控除:最大5万円(旧長期損害保険料との合計上限も5万円)
  • 配偶者控除の所得要件:配偶者の合計所得58万円以下(令和7年改正。給与収入換算で123万円以下)
  • 配偶者特別控除:配偶者の合計所得58万円超133万円以下。配偶者控除との同時適用は不可
  • 扶養控除:16歳未満は対象外。特定扶養親族(19〜22歳)は63万円と控除額が大きい
  • 特定親族特別控除:令和7年分から新設。19〜23歳未満の親族の合計所得が58万円超123万円以下の場合に最大63万円。扶養控除との同時適用は不可
  • 基礎控除:令和7年分は58万円(合計所得2,350万円以下)。令和7・8年分は最大95万円の加算措置あり
  • 雑損控除・医療費控除・寄附金控除は年末調整では適用できず、確定申告が必要

参考・出典

  • 国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm
  • 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
  • 国税庁「No.1140 生命保険料控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
  • 国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
  • 国税庁「No.1191 配偶者控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
  • 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
  • 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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