相続の開始・相続人・相続分

CFP

概要

相続とは、人の死亡によってその財産上の権利義務が他者(相続人)に包括的に承継されることをいいます。この記事では「民法上の親族の範囲」「相続の開始」「誰が相続人になるか(法定相続人の範囲と順位)」「どのくらいの割合で相続するか(法定相続分)」「相続財産の承継のしくみ」「遺贈と死因贈与」「相続の承認と放棄」まで、CFP試験の民法・相続法分野の基礎となる論点を体系的に解説します。

親族とは

民法上の親族の範囲

民法上「親族」とは、①6親等内の血族、②配偶者、③3親等内の姻族の3種類です(民法第725条)。相続や扶養の権利義務は、この「親族」の範囲を基礎として定められています。

種類範囲具体例
血族6親等内1親等:父母・子/2親等:祖父母・兄弟姉妹・孫/3親等:曾祖父母・おじ・おば・甥・姪・ひ孫
配偶者—(親等なし)法律上の婚姻関係にある夫・妻(内縁は含まない)
姻族3親等内配偶者の父母(1親等)、配偶者の兄弟姉妹(2親等)など

親等の数え方

親等とは親族間の遠近を示す単位で、世代をたどる数で数えます(民法第726条)。直系血族の場合は縦に数え、傍系血族の場合は共通の祖先まで上がってから下がる数の合計で数えます。たとえば、兄弟姉妹は自分から親(1)に上がり、さらに兄弟姉妹(1)に下がるため2親等となります。

「近親婚の禁止」(民法第734条〜第736条)として、①直系血族間・②3親等内の傍系血族間・③直系姻族間・④養親子等の間では婚姻ができません。また、扶養義務(民法第877条)は直系血族および兄弟姉妹の間に生じます。

相続の開始

相続開始の原因

相続は被相続人(亡くなった人)の死亡によって開始します(民法第882条)。死亡には自然死亡のほか、失踪宣告による死亡擬制も含まれます。失踪宣告とは、生死不明の状態が一定期間続く場合に家庭裁判所が「死亡したとみなす」効果を生じさせる制度です。普通失踪は7年間生死不明の場合、危難失踪(戦争・船の沈没・地震等の危難に遭遇した場合)は危難が去った後1年間生死不明の場合に申立てができます。

相続は被相続人の住所地(最後の住所地)において開始します(民法第883条)。また、同時に死亡した者の間では相互に相続は生じません(同時死亡の推定・民法第32条の2)。

相続財産の範囲

相続財産は被相続人の財産に属した一切の権利義務です(民法第896条)。ただし、被相続人の一身に専属したもの(扶養請求権・生活保護受給権・年金受給権のうち未払分を除く部分等)は相続の対象になりません。

法定相続人の範囲と順位

配偶者は常に相続人

被相続人の配偶者は常に相続人となります(民法第890条)。ただし、ここでいう配偶者とは戸籍上の婚姻関係にある者です。内縁の配偶者・事実婚の相手方は法定相続人にはなりません。また、離婚した元配偶者も相続人ではありません。

血族相続人の順位

配偶者以外の血族相続人には次の順位があります。先順位の相続人がいる場合、後順位の者は相続人になりません(民法第889条)。

順位相続人備考
第1順位子(直系卑属)子が先に死亡している場合は孫・ひ孫が代襲相続。養子も実子と同順位
第2順位直系尊属(父母・祖父母等)第1順位がいない場合。より近い世代が優先(父母 > 祖父母)
第3順位兄弟姉妹第1・第2順位がいない場合。兄弟姉妹が先に死亡している場合は甥・姪が代襲相続(1代限り)

第3順位の兄弟姉妹の代襲相続は「甥・姪まで(1代限り)」です。第1順位の子の代襲相続は孫・ひ孫と無限に続くのと異なります。この違いはCFP試験でも頻出の論点です。

胎児の相続能力

胎児は相続については「すでに生まれたもの」とみなされます(民法第886条)。被相続人の死亡時に胎児であっても相続人となることができますが、死産の場合はこれを適用しません。

養子の取り扱い

養子は養親の相続に関して実子と同様に扱われます(民法第809条)。養子は養親の第1順位の相続人となり、相続分も実子と同じです。また、養子縁組をしても実親との親族関係は消滅しないため、実親の相続についても相続人となります(特別養子縁組の場合は実親との関係が消滅)。ただし、相続税計算上は法定相続人に算入できる養子の数に制限があります(実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで)。

法定相続分

法定相続分は相続人間で遺産分割の合意ができなかった場合の持分割合であり、必ずこの割合で分ける必要はありません(民法第900条)。

相続人の組み合わせ配偶者血族相続人(合計)
配偶者+子1/21/2(子が複数なら均等に按分)
配偶者+直系尊属2/31/3(直系尊属が複数なら均等に按分)
配偶者+兄弟姉妹3/41/4(兄弟姉妹が複数なら均等に按分)
子のみ(配偶者なし)全部(子が複数なら均等に按分)
直系尊属のみ全部(均等に按分)
兄弟姉妹のみ全部(均等に按分)

父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の2分の1です(民法第900条4号ただし書)。嫡出子と非嫡出子の相続分は、平成25年(2013年)の民法改正により同等になりました。

相続財産の承継のしくみ

包括承継の原則

相続が開始すると、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を包括的に承継します(民法第896条・包括承継の原則)。これはプラスの財産(不動産・預貯金・債権等)だけでなく、マイナスの財産(借入金・保証債務等の債務)も含まれることを意味します。ただし、一身専属権(被相続人だけに帰属する権利義務)は承継されません。

共同相続における財産の帰属

相続人が複数いる場合(共同相続)、遺産分割が完了するまでの間、相続財産は相続人全員の「共有」となります(民法第898条)。各共同相続人は法定相続分に応じた持分を持ちますが、個々の財産を単独で処分することは原則としてできません。なお、財産の種類によって相続開始時の承継の態様が異なります。

財産の種類相続開始時の取り扱い
不動産・動産相続人全員の共有状態となる。遺産分割によって各人に帰属が確定する
預貯金(平成30年改正後)遺産分割の対象。ただし各相続人は相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分の額について単独で払戻請求が可能(仮払い制度・民法第909条の2)
可分債権(金銭債権等)相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割(判例。ただし預貯金は除く)
債務(借入金等)相続開始と同時に法定相続分に応じて当然に分割承継。債権者は各相続人にその割合で請求可

代襲相続

代襲相続とは、本来の相続人(被代襲者)が相続開始以前に死亡・欠格・廃除によって相続権を失った場合に、その者の直系卑属が代わって相続することをいいます(民法第887条・第889条)。相続放棄した者の子には代襲相続権は生じません。代襲相続人の相続分は、被代襲者が受けるはずだった相続分と同じです。代襲相続人が複数いる場合はその相続分を均等に按分します(民法第901条)。

相続人の資格喪失(欠格・廃除)

相続欠格

相続欠格とは、相続人が一定の重大な非行を行った場合に法律上当然に相続権を失うことです(民法第891条)。主な欠格事由として、故意に被相続人または先順位・同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた場合、詐欺・強迫によって被相続人の遺言の作成・取消・変更を妨げた場合や被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合が挙げられます。相続欠格は家庭裁判所の手続き不要で自動的に効果が生じます。欠格者の子には代襲相続権が生じます。

相続廃除

相続廃除とは、被相続人が生前に推定相続人(遺留分を有する者に限る)の相続権を剥奪する申立てを家庭裁判所に行い、審判で認められることです(民法第892条)。廃除事由は被相続人に対する虐待・重大な侮辱・著しい非行です。廃除は遺言によっても申立てができます。廃除された者の子には代襲相続権が生じます。

遺贈と死因贈与

遺贈とは

遺贈とは、遺言によって遺言者の財産を他人(受遺者)に無償で与えることをいいます(民法第964条)。遺贈の相手方は相続人に限らず、第三者(法人を含む)でも受遺者となれます。遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。

種類内容主な特徴
包括遺贈遺産全体の一定割合(例:「全財産の1/3を与える」)を遺贈する包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(民法第990条)。債務も引き受けるが放棄も可能(熟慮期間3か月)
特定遺贈特定の財産(例:「○○の土地を与える」)を遺贈する受遺者は遺言者の死亡後いつでも放棄可能。放棄した場合は相続開始時に遡って効力消滅

死因贈与とは

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与契約です(民法第554条)。遺贈が「遺言という単独行為」であるのに対し、死因贈与は「贈与者と受贈者の合意(契約)」によって成立します。そのため受贈者の同意なく撤回することは原則としてできません(ただし、書面によらない死因贈与は撤回可能)。

比較項目遺贈死因贈与
法的性質単独行為(遺言者の一方的意思表示)契約(当事者の合意が必要)
受け取る側の同意不要(ただし放棄は可能)必要(契約なので合意が必要)
効力発生時期遺言者の死亡時贈与者の死亡時
撤回遺言者はいつでも撤回可能原則として撤回不可(書面によらないものは撤回可)
相続税の課税相続税課税(みなし相続財産または遺贈)相続税課税(贈与者の死亡に起因するため)
適用される規定遺贈の規定(民法第964条等)遺贈に関する規定が準用される(民法第554条)

死因贈与・遺贈ともに、相続税の課税上は「相続または遺贈により取得した財産」として相続税が課税されます(相続税法第1条の3)。ただし、相続人以外の者が遺贈・死因贈与で取得した財産には相続税の2割加算が適用されます。

相続の承認と放棄

相続人は相続開始を知った時から3か月以内(熟慮期間)に相続方法を選択しなければなりません(民法第915条)。熟慮期間は家庭裁判所に申立てることで伸長が可能です。

方法内容手続き注意点
単純承認プラス・マイナスすべての財産を無限定に承継する特別な手続き不要(熟慮期間内に何もしなければ自動的に単純承認とみなされる)遺産の処分行為・熟慮期間の経過で法定単純承認となる
限定承認相続で取得した財産の限度でのみ債務を弁済する熟慮期間内に相続人全員が共同して家庭裁判所に申述相続人全員の共同申述が必要。手続きが複雑で実務上あまり使われない
相続放棄プラス・マイナスすべての財産の承継を拒否する熟慮期間内に各相続人が単独で家庭裁判所に申述初めから相続人でなかったものとみなされる。代襲相続は生じない。みなし相続財産(生命保険金等)の受取りは可能だが非課税枠を使えない

相続放棄をすると初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。そのため先順位の相続人全員が放棄すると次順位の者が相続人になります(例:子全員が放棄→親が相続人に)。また、相続放棄した者の子には代襲相続権が生じない点も重要です(欠格・廃除と異なる)。一度した相続放棄の撤回は認められません(民法第919条1項)。

試験の重要ポイント

親族・相続財産の承継

  • 民法上の親族:6親等内の血族+配偶者+3親等内の姻族
  • 相続は包括承継が原則:プラス財産もマイナス財産(債務)もすべて承継
  • 共同相続では遺産分割完了まで遺産は相続人全員の共有
  • 預貯金は遺産分割の対象だが、相続開始時の残高×1/3×法定相続分の額は単独払戻し可能(仮払い制度・民法第909条の2)

遺贈と死因贈与

  • 遺贈は遺言による単独行為・死因贈与は死亡を条件とする契約(合意が必要)
  • 包括遺贈の受遺者は相続人と同一の権利義務を持つ(債務も引き受ける)
  • 特定遺贈は遺言者の死亡後いつでも放棄可能
  • 遺贈・死因贈与ともに相続税課税。相続人以外の受遺者には2割加算

相続人・相続分の頻出論点

  • 配偶者は常に相続人(内縁・事実婚は不可)。血族相続人には第1〜第3順位がある
  • 法定相続分:配偶者+子→1/2ずつ。配偶者+直系尊属→2/3と1/3。配偶者+兄弟姉妹→3/4と1/4
  • 半血兄弟姉妹の相続分は全血兄弟姉妹の1/2
  • 嫡出子・非嫡出子の相続分は平成25年改正で同等
  • 胎児は相続については「すでに生まれたもの」とみなされる(死産の場合は除く)

代襲相続・欠格・廃除

  • 代襲原因:死亡・欠格・廃除(相続放棄は代襲相続の原因にならない)
  • 第1順位(子)の代襲:孫・ひ孫と無限に続く。第3順位(兄弟姉妹)の代襲:甥・姪まで1代限り
  • 欠格は自動的に効果発生(裁判所の手続き不要)。廃除は家庭裁判所の審判が必要

相続の承認・放棄の頻出論点

  • 熟慮期間:「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内
  • 単純承認はみなし規定あり。熟慮期間を過ぎると自動的に単純承認とみなされる
  • 限定承認は相続人全員の共同申述が必要(相続放棄は各人単独で可)
  • 相続放棄すると初めから相続人でなかったとみなされ、代襲相続権も生じない
  • 相続放棄しても生命保険金(みなし相続財産)は受け取れるが、非課税枠(500万円×法定相続人数)は使えない

参考・出典

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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