1. 概要
事業所得とは、個人が農業・漁業・製造業・小売業・サービス業など各種事業を営むことによって生じる所得です。自営業者・フリーランス・個人事業主に直接関わる所得区分であり、必要経費の計上や青色申告制度の活用など、税負担を適正に管理するうえで重要な知識が求められます。
CFP試験では、事業所得の計算方法・必要経費の範囲・青色申告の特典・雑所得との区分・損益通算の取り扱いが頻出テーマです。
2. 所得の定義
所得税法第27条において、事業所得は次のとおり定義されています。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営む個人のその事業から生ずる所得(山林所得または譲渡所得に該当するものを除く)をいう。(所得税法第27条第1項)
事業所得金額 = 総収入金額 - 必要経費
3. 該当する所得・該当しない所得
事業所得に該当する主な所得
- 個人事業主(小売業・飲食業・サービス業等)の売上収入
- 農業・漁業・林業(ただし山林の伐採・譲渡は山林所得)から生じる収入
- 医師・弁護士・税理士・建築士等の自由業からの報酬収入
- 社会通念上「事業」と認められる規模で継続的に行われる副業収入
事業所得に該当しない主な所得
- 不動産の賃貸収入 → 不動産所得(原則)
- 山林の伐採・譲渡収入 → 山林所得
- 事業規模に満たない副業・小規模な業務収入 → 雑所得
- 商品・棚卸資産の売却益 → 事業所得(譲渡所得ではない)
4. 総収入金額に含まれるもの
事業所得の総収入金額には、現金による売上のほかに以下のものも含まれます。収入の計上時期は原則として権利確定主義(実際に受け取ったかどうかに関わらず、収入すべき権利が確定した時点)によります。
| 収入の種類 | 内容 |
|---|---|
| 物品・権利等の経済的利益 | 金銭以外の物や権利を対価として受け取った場合のその価額 |
| 家事消費・贈与 | 商品を自家用に消費した場合や贈与した場合のその商品の価額 |
| 棚卸資産の保険金・損害賠償金 | 商品等に損失が生じたことにより受け取る保険金や損害賠償金 |
| 各種補助金・助成金 | 事業に関連して受け取る国・地方公共団体からの補助金等 |
5. 必要経費
事業所得の必要経費とは、総収入金額を得るために直接要した費用および販売費・一般管理費その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用の額をいいます。
| 経費の種類 | 内容 |
|---|---|
| 売上原価 | 商品・製品の仕入れ原価(期首棚卸高 + 仕入高 - 期末棚卸高) |
| 人件費 | 従業員への給与・賞与・法定福利費等 |
| 地代・家賃 | 事務所・店舗・工場等の賃借料 |
| 減価償却費 | 事業用資産(建物・機械・車両等)の取得費を耐用年数で費用化 |
| 借入金の利子 | 事業用資金の借入に係る支払利息 |
| 租税公課 | 事業税・固定資産税・印紙税等(所得税・住民税は不可) |
| 通信費・広告宣伝費 | 電話代・インターネット費用・広告費等 |
| 旅費交通費 | 事業に関連する交通費・出張費等 |
⚠️ 家事関連費の取り扱い
自宅を事務所兼用にしている場合など、家事上の経費と事業上の経費が混在する「家事関連費」は、事業遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合のみ必要経費として認められます。按分計算を行う際は合理的な根拠が必要です。
6. 事業所得と雑所得の区分
副業収入が事業所得になるか雑所得になるかは、その活動が社会通念上「事業」と認められる規模かどうかで判定します。令和4年の所得税基本通達の改正により、判断基準がより明確化されました。
| 判断要素 | 事業所得の目安 |
|---|---|
| 収入金額の規模 | おおむね年間300万円超が一つの目安(300万円以下は雑所得と推定) |
| 継続性・反復性 | 営利目的で継続・反復して行われている |
| 自己の計算と危険負担 | 自らの判断と責任において業務を遂行している |
| 人的・物的設備 | 事務所・設備・従業員等を有している |
| 帳簿書類の記録・保存 | 収支の記録を帳簿に記帳・保存している |
📌 事業所得と雑所得の主な違い
・事業所得の赤字は給与所得等と損益通算が可能(雑所得の赤字は通算不可)
・事業所得は青色申告が適用できる(雑所得は不可)
・事業所得は純損失の繰越控除・繰戻還付が可能(雑所得は不可)
7. 青色申告制度
事業所得者は、税務署に「青色申告承認申請書」を提出することで青色申告が認められ、さまざまな特典を受けることができます。
| 青色申告の特典 | 内容 |
|---|---|
| 青色申告特別控除(65万円) | 複式簿記による記帳 + 電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存を行った場合 |
| 青色申告特別控除(55万円) | 複式簿記による記帳 + 貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告した場合 |
| 青色申告特別控除(10万円) | 簡易簿記による記帳の場合 |
| 青色事業専従者給与 | 生計を一にする配偶者・親族への給与を必要経費に算入できる(届出が必要) |
| 純損失の繰越控除 | 事業所得の損失を翌年以後3年間繰り越して控除できる |
| 純損失の繰戻還付 | 損失を前年の所得に繰り戻して前年分の所得税の還付を受けられる |
| 少額減価償却資産の特例 | 取得価額30万円未満の資産を全額即時償却できる(年間上限300万円) |
⚠️ 青色申告承認申請書の提出期限
・新規開業の場合:開業日から2か月以内
・既存の事業者が翌年分から適用する場合:適用を受けようとする年の3月15日まで
期限を過ぎると、その年分は白色申告となります。
8. 計算例
【例①】事業所得金額の計算(青色申告・65万円控除)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上収入(総収入金額) | 800万円 |
| 売上原価 | △ 300万円 |
| 人件費・地代家賃・その他経費 | △ 200万円 |
| 減価償却費 | △ 30万円 |
| 必要経費合計 | △ 530万円 |
| 差引所得金額 | 270万円 |
| 青色申告特別控除 | △ 65万円 |
| 事業所得金額 | 205万円 |
【例②】損益通算(事業所得に損失が生じた場合)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得 | 600万円 |
| 事業所得(損失) | △ 150万円 |
| 損益通算後の合計所得金額 | 450万円 |
📌 事業所得の損失は給与所得・不動産所得・譲渡所得等と損益通算できます。ただし、生活に通常必要でない資産(別荘等)に係る損失は通算できません。
9. 試験の重要ポイント
- 事業所得金額は「総収入金額 - 必要経費」で計算する
- 収入計上は権利確定主義(実際の受領の有無を問わない)
- 家事関連費は事業遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合のみ必要経費に算入可
- 副業収入の事業所得・雑所得の区分は社会通念上の事業規模で判定(年収300万円が一つの目安)
- 青色申告特別控除の最大額は65万円(複式簿記 + e-Tax等の要件を満たす場合)
- 青色事業専従者給与は届出が必要で、専従者は配偶者控除・扶養控除の対象外となる
- 青色申告の純損失は3年間の繰越控除または前年への繰戻還付が可能
- 事業所得の損失は他の所得と損益通算できる(雑所得の損失は通算不可)
参考・出典
- 国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1350.htm
- 国税庁「No.2200 収入金額とその計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2200.htm
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
- 国税庁「No.2250 損益通算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

