1. 概要
不動産の「共有」は、相続や共同購入などによって複数人が一つの不動産の所有権を持つ状態です。共有不動産は管理・処分をめぐってトラブルが生じやすく、特に所有者不明土地問題の主因でもあります。令和5年(2023年)4月施行の民法改正では、共有制度の大幅な見直しと新たな管理制度が導入されました。本記事では、共有・競売・土地建物管理制度・不動産調査の4分野を解説します。
2. 共有
(1)共有の基本
共有とは、複数人が一つの不動産に対してそれぞれ「持分」という割合的な権利を持つ状態です。各共有者はその持分割合に応じて不動産全体に対する権利を有します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 持分の処分 | 各共有者は、自己の持分を単独で自由に処分(売却・担保設定等)できる |
| 共有物の使用 | 各共有者は、持分に応じて共有物の全部を使用できる(民法249条) |
| 持分の推定 | 持分割合が不明な場合は等しいものと推定される(民法250条) |
| 共有物の分割 | 各共有者はいつでも共有物の分割を請求できる(民法256条)。ただし5年を超えない期間、分割を禁止する特約を結ぶことも可能 |
(2)共有物の行為の種類と必要な同意【令和5年改正対応】
共有物に関する行為は「保存行為」「管理行為(軽微変更を含む)」「変更行為(処分行為)」の3種類に分類され、必要な同意の範囲が異なります。令和5年(2023年)4月施行の民法改正により、管理行為の範囲が拡大されました。
| 行為の種類 | 主な例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 共有物の現状を維持する行為(修繕・不法占拠者への明渡請求など) | 各共有者が単独で行うことができる |
| 管理行為(利用・改良行為) | 共有物の賃貸借(短期)・共有者の使用方法の決定・整地・アスファルト舗装など | 各共有者の持分価格の過半数で決定 |
| 軽微な変更(改正で追加) | 外観・構造・機能・用途の変化が小さい行為(砂利道→アスファルト舗装、建物外壁の大規模修繕など) | 各共有者の持分価格の過半数で決定(改正により全員同意不要に) |
| 変更行為(処分行為) | 共有物の売却・農地→宅地への地目変更・抵当権の設定・建物の取壊しなど | 共有者全員の同意が必要 |
📌 短期賃借権の設定(管理行為として持分の過半数で決定できる期間)
改正民法では、以下の期間内の賃借権等の設定は「管理行為」として持分の過半数で決定できることが明確化されました。
・山林の賃借権等:10年以内
・山林以外の土地の賃借権等:5年以内
・建物の賃借権等:3年以内(ただし普通借家契約は原則全員同意が必要)
・動産の賃借権等:6か月以内
(3)所在等不明共有者がいる場合の特例【令和5年改正・新設】
必要な調査を尽くしても氏名・所在が不明な共有者(所在等不明共有者)がいる場合、令和5年(2023年)4月施行の改正民法により、以下の手続きが可能になりました。
| 手続き | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 変更・管理の決定 | 裁判所の決定を得たうえで、不明共有者以外の共有者全員の同意により変更、または不明共有者以外の持分過半数により管理に関する事項を決定できる | 民法251条2項・252条2項 |
| 持分の取得 | 裁判所の決定を得たうえで、不明共有者の持分を他の共有者が取得できる(時価相当額を供託) | 民法262条の2 |
| 持分ごと第三者に譲渡 | 裁判所の決定を得たうえで、不明共有者の持分を含めた不動産全体を第三者に譲渡できる(時価相当額を供託) | 民法262条の3 |
(4)共有物分割の方法
共有者間で分割について協議が整わない場合は、裁判所に共有物分割請求を申立てることができます。分割の方法には以下の3種類があります。
| 分割方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 共有物を物理的に分割し、各共有者に割り当てる(例:一筆の土地を複数に分筆して分割) |
| 換価分割(競売分割) | 共有物を競売または任意売却で売却し、その代金を持分割合に応じて分配する |
| 全面的価格賠償(価格賠償分割) | 共有者の一人が他の共有者の持分を買い取り(相当額を支払い)、単独所有にする |
(5)共有物の管理者制度【令和5年改正・新設】
改正民法では、共有者の持分の過半数により「共有物の管理者」を選任・解任できる制度が新設されました(民法252条の2)。管理者は共有者以外の者(第三者)でも選任可能です。管理者は管理に関する行為(軽微変更を含む)を単独で実施できますが、変更行為には共有者全員の同意が必要です。
3. 競売
(1)競売の種類
不動産の競売とは、債務者(所有者)が債務を履行できない場合に、裁判所が強制的に不動産を売却し、その代金から債権者への弁済を行う手続きです。主に以下の2種類があります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 担保不動産競売 | 抵当権等の担保権の実行による競売。住宅ローンの返済が滞った場合など、担保権者(金融機関等)の申立てにより開始 |
| 強制競売 | 金銭債権の強制執行として行われる競売。裁判所の確定判決等を得た債権者の申立てにより開始 |
(2)競売の手続きの流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①申立て | 債権者が地方裁判所に競売申立て。差押えの登記がなされる |
| ②現況調査・評価 | 執行官による現況調査と不動産鑑定士による評価。競売物件の状況が確認される |
| ③売却基準価額の決定 | 裁判所が評価額を参考に売却基準価額(最低売却価格の基準)を決定 |
| ④入札(売却) | 一般に公告され、一般の個人・法人が入札に参加できる(期間入札方式が一般的) |
| ⑤代金納付・所有権移転 | 最高価買受申出人(最高入札者)が代金を納付すると所有権が移転。抵当権等は消滅 |
(3)競売における重要な概念
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 売却基準価額 | 競売における最低売却金額の基準となる価額。市場価格(実勢価格)より低く設定されることが多い(概ね市場価格の60~70%程度) |
| 買受申出保証額 | 入札に参加する際に供託しなければならない保証金。売却基準価額の20%以上 |
| 3点セット | 競売物件情報として公開される①現況調査報告書、②不動産評価書、③物件明細書の3書類。インターネット(BIT・裁判所のウェブサイト)で閲覧可能 |
| 引渡命令 | 代金を納付した買受人が、占有者に対して不動産の引渡しを求める裁判所への申立て制度。代金納付日から6か月以内に申立て可能 |
⚠️ 競売物件の注意点
・内覧制度はあるが、内部の詳細確認が困難な場合がある
・瑕疵担保責任(契約不適合責任)は適用されない
・占有者がいる場合、引渡しまでに時間・費用がかかる場合がある
・農地・借地権が付着している物件など権利関係が複雑なケースがある
4. 土地・建物管理制度【令和5年改正・新設】
令和5年(2023年)4月施行の改正民法では、所有者不明土地・建物問題および管理不全状態の不動産問題に対応するため、以下の4つの新制度が創設されました。
(1)所有者不明土地・建物管理制度
調査を尽くしても所有者が不明、または所有者の所在が不明な土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることで、裁判所が管理人を選任し、その不動産の管理・処分等を行える制度です(民法264条の2〜264条の8)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立権者 | 対象土地・建物の管理について利害関係人(公共事業の実施者、共有者、隣接地の所有者等)、地方公共団体の長等 |
| 申立先 | 地方裁判所 |
| 管理人の権限 | 保存行為・利用行為・改良行為は単独で実施可能。売却等の処分行為は裁判所の許可が必要 |
| 従来制度との違い | 不在者財産管理制度が「人(所有者)単位」なのに対し、不動産単位で管理できるため、手続きが効率的 |
| 費用 | 管理費用・管理人報酬は原則として所有者が負担。申立人は予納金を支払う |
(2)管理不全土地・建物管理制度
所有者は判明しているが、適切な管理が行われず周辺に悪影響を及ぼしている(または及ぼすおそれがある)土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることで、裁判所が管理人を選任できる制度です(民法264条の9〜264条の14)。
| 比較項目 | 所有者不明土地・建物管理制度 | 管理不全土地・建物管理制度 |
|---|---|---|
| 対象 | 所有者が不明または所在不明の不動産 | 所有者は明らかだが管理が不全な不動産 |
| 申立先 | 地方裁判所 | 地方裁判所 |
| 申立権者 | 利害関係人・地方公共団体の長等 | 利害関係人 |
| 管理人の処分権限 | 裁判所の許可で売却も可能 | 所有者の同意+裁判所の許可が必要 |
(3)相続土地国庫帰属制度【令和5年4月27日施行】
相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、法務大臣(窓口は法務局)の承認を得て、その土地を国庫に帰属させる(国に引き取ってもらう)制度です(令和5年4月27日施行)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 相続や遺贈で土地を取得した相続人(法人は不可)。共有地の場合は共有者全員で申請 |
| 対象外となる土地 | 建物がある土地・担保権等が設定されている土地・通路等の用に供されている土地・土壌汚染がある土地・境界が不明確な土地など |
| 負担金 | 承認された場合、管理費用(10年分の標準的な管理費用相当額)として20万円が原則(農地・森林等は別途計算) |
| 審査費用 | 審査手数料が必要(1筆あたり1万4,000円) |
5. 不動産の調査
(1)公的機関での調査
不動産取引・投資に際しては、事前に以下の公的機関でさまざまな情報を確認することが重要です。
| 調査先 | 調査できる主な内容 |
|---|---|
| 法務局(登記所) | 登記事項証明書(所有者・抵当権・地目・地積等)、公図(地図に準じる図面)、地積測量図、建物図面・各階平面図、筆界特定手続き |
| 市区町村役場(建築指導課・都市計画課等) | 用途地域・建蔽率・容積率(都市計画法・建築基準法上の規制)、道路種別(建築基準法上の道路か否か)、開発許可・建築確認の履歴 |
| 市区町村役場(税務課等) | 固定資産税評価証明書・課税台帳(評価額・地積等)。所有者のみ請求可能 |
| 農業委員会 | 農地転用の可否・農地法の規制 |
| 都道府県庁・地方整備局 | 地価公示・基準地標準価格、土地区画整理事業・都市開発の計画等 |
(2)現地調査・その他の確認事項
公的機関での書類調査に加え、現地での確認も重要です。主な確認事項は以下のとおりです。
| 確認項目 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 接道状況 | 建築基準法上の道路(幅員4m以上)に2m以上接しているかを確認。接道が不十分な場合は建物の建替えができない(再建築不可) |
| 境界の確認 | 隣地との境界標(境界杭・境界石等)の有無を確認。境界が不明確な場合は隣地所有者との確認・確定測量が必要 |
| 越境・地役権等 | 隣地からの建物・塀・木の枝等の越境の有無を確認 |
| 埋設物・地盤 | 地下に埋設物・旧基礎・土壌汚染の可能性がないかを確認 |
| ハザードマップの確認 | 洪水・土砂災害・津波リスクの確認(令和8年度税制改正で災害レッドゾーン内の新築住宅は住宅ローン控除の対象外となる点にも注意) |
(3)公図と地積測量図
| 書類名 | 内容・特徴 |
|---|---|
| 公図(地図に準じる図面) | 土地の形状・地番・道路・水路の概略を示す図面。法務局で取得可能。精度は低いため実際の測量結果とは異なる場合がある |
| 地積測量図 | 土地の分筆登記等の際に法務局に提出された実測図面。地積(面積)・境界点・座標値等が記載されている。登記情報として法務局で取得可能 |
| 確定測量図 | 隣地所有者・道路管理者等との立会いのもと、全ての境界を確定した最も信頼性の高い測量図。取引や分筆の際に必要になる場合がある |
6. 試験の重要ポイント
- 共有物の行為区分:保存行為(単独)・管理行為(持分の過半数)・変更行為(全員の同意)
- 令和5年(2023年)民法改正で「軽微な変更」は持分の過半数で決定可能になった
- 短期賃借権の設定:土地5年以内・建物3年以内などは持分の過半数で決定可能(普通借家契約は原則全員同意必要)
- 所在等不明共有者がいる場合:裁判所の決定を得て変更・管理・持分取得・第三者譲渡が可能(改正民法)
- 共有物分割の方法:現物分割・換価分割(競売)・全面的価格賠償の3種類
- 競売の入札保証金(買受申出保証額)は売却基準価額の20%以上
- 競売物件には契約不適合責任(瑕疵担保責任)が適用されない
- 引渡命令の申立期限は代金納付日から6か月以内
- 所有者不明土地管理制度:令和5年(2023年)4月施行。申立先は地方裁判所。不動産単位で管理(人単位の不在者財産管理制度と区別)
- 相続土地国庫帰属制度:令和5年(2023年)4月27日施行。負担金は原則20万円
- 不動産調査の基本:法務局で登記事項証明書・公図・地積測量図、役所で用途地域・建蔽率・容積率を確認
参考・出典
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
- 裁判所「不動産競売手続について」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_04_02_01/index.html
- 法務局「登記・供託オンライン申請システム」https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。令和5年(2023年)4月施行の民法改正(共有制度・所有者不明土地管理制度等)についても記載していますが、今後さらに制度が変更される場合があります。実際の共有不動産の管理・処分、競売手続き、その他の不動産に関する法的手続きについては、弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

