概要
本記事では、働き方に関連する主要法令と、労働者を守る労働保険(労災保険・雇用保険)を解説します。労働基準法・育児介護休業法などの働き方関連法令は、顧客の雇用状況を把握するうえでFPに欠かせない知識です。また雇用保険からの各種給付は、離職・育児・介護などライフイベントに直結するため、CFP試験でも幅広く出題されます。
給付の種類と受給要件の数値(被保険者期間・給付日数・給付率など)は試験で繰り返し問われます。各給付の目的と対象者をまず整理し、その後に数値を覚えるという順序で学習するのが効果的です。
最近の働き方とその関連法令
労働基準法
労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。主な規定は以下の通りです。
- 法定労働時間:1日8時間・1週40時間(特例措置対象事業場は週44時間)
- 休日:毎週少なくとも1日(または4週4日)の休日
- 年次有給休暇:6か月継続勤務・出勤率80%以上で10日付与。勤続年数に応じて最大20日まで増加
- 有給休暇の時季指定義務:年10日以上の有給が付与される労働者に対し、使用者は年5日以上を時季指定して取得させる義務がある
時間外労働と割増賃金
法定労働時間を超える労働(時間外労働)や休日・深夜労働には、割増賃金の支払いが義務づけられています。
| 区分 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働(月60時間以内) | 25%以上 |
| 時間外労働(月60時間超) | 50%以上(中小企業は2023年4月から適用) |
| 休日労働(法定休日) | 35%以上 |
| 深夜労働(午後10時〜午前5時) | 25%以上 |
| 時間外+深夜 | 50%以上 |
| 休日+深夜 | 60%以上 |
最低賃金法
最低賃金法は、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた法律です。最低賃金には「地域別最低賃金」(都道府県ごとに設定)と「特定最低賃金」(特定の産業・職種ごとに設定)の2種類があります。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、高い方が適用されます。
短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
パートタイム労働者等の短時間労働者への社会保険(健康保険・厚生年金)の適用が段階的に拡大されています。現在、以下の要件をすべて満たす短時間労働者は被用者保険に加入します。
- 週所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8,000円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生でない
育児・介護休業法
育児・介護休業法は、育児や介護を行う労働者が仕事を継続しやすくするための制度を定めた法律です。主な制度は以下の通りです。
| 制度 | 対象・内容 |
|---|---|
| 育児休業 | 原則子が1歳になるまで(保育所未入所等の場合は最長2歳まで延長可)。父母ともに取得可能 |
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可。2回に分割して取得可能 |
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可 |
| 子の看護休暇 | 小学校就学前の子1人につき年5日(2人以上は10日)。時間単位での取得可 |
| 介護休暇 | 対象家族1人につき年5日(2人以上は10日)。時間単位での取得可 |
労働者災害補償保険(労災保険)
労災保険の概要
労災保険は、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害・死亡に対して保険給付を行う制度です。保険料は全額事業主負担であり、労働者の負担はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用対象 | 原則として労働者を1人でも使用するすべての事業(農林水産業の一部を除く) |
| 保険料負担 | 全額事業主負担 |
| 給付の種類 | 療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付・傷病補償年金など |
| 通勤災害 | 通勤途中の災害も対象。ただし給付名称が「補償」ではなく「通勤災害」となる(例:療養給付) |
業務災害の給付には「補償」という言葉が付き(療養補償給付など)、通勤災害の給付には「補償」が付きません(療養給付など)。試験で給付名称を問われることがあるため、両者の区別を意識しておきましょう。
主な給付の内容
- 療養(補償)給付:労災指定病院での治療費は無料(現物給付)。指定外の医療機関では費用を立替後に請求。
- 休業(補償)給付:業務災害・通勤災害により休業した場合、休業4日目から給付基礎日額の60%を給付。別途特別支給金として20%が支給されるため、合計80%相当となる。
- 障害(補償)給付:治癒後に障害が残った場合、障害等級(第1〜14級)に応じて年金または一時金を給付。
- 遺族(補償)給付:労働者が死亡した場合、遺族に年金または一時金を給付。
雇用保険
雇用保険の概要と適用範囲
雇用保険は、労働者が失業した場合や育児・介護などで雇用の継続が困難になった場合に給付を行い、生活の安定と再就職を支援する制度です。
- 適用対象:週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者(パート・アルバイトも対象)
- 保険料負担:事業主と労働者の両方が負担(事業主の方が負担率が高い)
- 給付の種類:求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4種類
基本手当(失業給付)
基本手当は、離職して失業状態にある間に支給される給付です。受給するには、ハローワークに求職の申込みをし、積極的に就職活動をしていることが必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受給要件 | 離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(特定受給資格者・特定理由離職者は離職前1年間に6か月以上) |
| 給付額 | 賃金日額の45〜80%(賃金が低いほど給付率が高い) |
| 給付日数 | 90〜360日(離職理由・年齢・被保険者期間により異なる) |
| 待期期間 | 離職後7日間(全員共通) |
| 給付制限 | 自己都合退職の場合は待期後さらに2か月間(5年間で2回目以降は3か月)の給付制限あり |
| 受給期間 | 原則として離職日の翌日から1年間 |
再就職手当・就業手当
基本手当の受給資格者が早期に再就職した場合に支給される給付です。
- 再就職手当:安定した職業(雇用期間1年超の見込み)に就いた場合に支給。所定給付日数の3分の1以上を残して再就職すると支給率50%、3分の2以上残すと70%。
- 就業手当:再就職手当の対象とならない形態(短時間労働等)で就業した場合に、就業日1日につき基本手当日額の30%を支給。
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、労働者の主体的な能力開発を支援するため、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講・修了した場合に費用の一部を支給する制度です。
| 種類 | 対象講座 | 支給率・上限 | 受給要件(被保険者期間) |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 語学・資格取得等の一般的な講座 | 受講費用の20%(上限10万円) | 3年以上(初回は1年以上) |
| 特定一般教育訓練給付金 | 速やかな再就職・早期キャリア形成に資する講座 | 受講費用の40%(上限20万円) | 3年以上(初回は1年以上) |
| 専門実践教育訓練給付金 | 中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な講座 | 受講費用の50%(上限年間40万円)。資格取得後1年以内に就職等の場合は70%(上限年間56万円) | 3年以上(初回は2年以上) |
高年齢雇用継続給付
60歳以降も継続して働く高齢者の雇用を促進するための給付です。高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があります。
- 高年齢雇用継続基本給付金:60歳到達時の賃金と比べて75%未満の賃金で働いている場合に支給。被保険者期間5年以上が必要。支給額は現在の賃金の最大15%相当(段階的に縮小予定)。
- 高年齢再就職給付金:基本手当を受給後に再就職した場合の給付。基本手当の支給残日数が100日以上必要。
高年齢求職者給付金
65歳以上の被保険者(高年齢被保険者)が離職した場合に支給される一時金です。基本手当とは異なり、一時金として支給されます。
- 被保険者期間1年以上:基本手当日額の50日分
- 被保険者期間1年未満:基本手当日額の30日分
育児休業等給付
育児休業を取得した場合に支給される給付です。育児休業給付金として、休業前賃金の一定割合が支給されます。
- 支給額:休業開始から180日間は休業前賃金の67%、181日目以降は50%
- 支給期間:原則子が1歳になるまで(延長の場合は最長2歳まで)
- 受給要件:休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上あること
2025年4月施行の改正により「育児休業給付」が「育児休業等給付」に改称され、新たに「出生後休業支援給付金」(給付率13%上乗せで最大80%相当)と「育児時短就業給付金」が創設されました。最新の制度名と給付率を確認しておきましょう。
介護休業給付金
介護休業を取得した場合に支給される給付です。対象家族1人につき通算93日分(3回まで分割可)、休業前賃金の67%が支給されます。受給要件は育児休業給付金と同様、休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上あることです。
試験の重要ポイント
割増賃金率の数値を整理する
時間外労働の割増率は月60時間を境に25%と50%で切り替わります。中小企業への月60時間超50%割増の適用は2023年4月からです。休日労働35%・深夜25%の数値とあわせて確実に覚えましょう。
雇用保険の各給付の受給要件比較
| 給付名 | 受給要件(被保険者期間) | 給付率・金額 |
|---|---|---|
| 基本手当 | 離職前2年間に12か月以上(特定受給資格者等は1年間に6か月以上) | 賃金日額の45〜80% |
| 高年齢求職者給付金 | 離職前1年間に6か月以上 | 30日分または50日分(一時金) |
| 育児休業給付金 | 休業前2年間に11日以上の月が12か月以上 | 67%(180日まで)・50%(181日以降) |
| 介護休業給付金 | 休業前2年間に11日以上の月が12か月以上 | 67%(通算93日分) |
| 教育訓練給付金(一般) | 3年以上(初回1年以上) | 受講費用の20%(上限10万円) |
労災保険と雇用保険の保険料負担の違い
- 労災保険:保険料は全額事業主負担。労働者の負担なし。
- 雇用保険:事業主と労働者の両方が負担。事業主の方が負担率が高い。
参考・出典
- 日本FP協会「CFP資格審査試験 出題範囲」
- 厚生労働省「労働基準法のあらまし」
- 厚生労働省「労災保険給付の概要」
- 厚生労働省「雇用保険制度の概要」
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

