1. 概要
非課税所得とは、所得税法や租税特別措置法などの規定により、所得税が課されない所得のことです。収入があっても課税対象とならないため、確定申告も不要です。
非課税とされる理由はさまざまで、社会政策的な配慮、生活上の必需性、二重課税の排除などが挙げられます。CFP試験では「非課税になるかどうか」の判断が問われるため、主要な項目を正確に押さえておくことが重要です。
2. 主な非課税所得の一覧
① 社会保険・給付金関係
| 非課税所得の種類 | 内容・根拠 |
|---|---|
| 遺族年金・遺族恩給 | 遺族が受け取る公的年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金等) |
| 障害年金・障害恩給 | 障害基礎年金・障害厚生年金等 |
| 健康保険の給付金 | 傷病手当金・出産手当金・出産育児一時金等 |
| 雇用保険の給付金 | 失業給付(基本手当)・育児休業給付金・介護休業給付金等 |
| 労災保険の給付 | 療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付等 |
② 給与・手当関係
| 非課税所得の種類 | 内容・限度額 |
|---|---|
| 通勤手当 | 月額15万円まで非課税(交通機関利用の場合) |
| 出張旅費・宿泊費 | 実費相当額(社会通念上相当と認められる範囲) |
| 宿直・日直手当 | 1回につき4,000円まで非課税 |
| 在宅勤務手当(通信費・光熱費) | 国税庁の算定方法による相当額 |
③ 資産の譲渡・運用関係
| 非課税所得の種類 | 内容・限度額 |
|---|---|
| NISA口座内の配当・売却益 | つみたて投資枠・成長投資枠ともに非課税(恒久化) |
| 生活用動産の譲渡益 | 家具・衣類・自動車等(1個または1組の価額が30万円以下) |
| 強制換価手続による資産の譲渡 | 資力を喪失して債務の弁済が困難な場合の強制換価 |
| 国債・地方債等の利子(一部) | 障害者等のマル優制度(元本350万円まで) |
④ 損害賠償・保険金関係
| 非課税所得の種類 | 内容 |
|---|---|
| 損害賠償金・慰謝料 | 心身に加えられた損害または突発的な事故による資産損害に対するもの |
| 生命保険の入院給付金・手術給付金 | 身体の傷害に起因して支払われる給付金 |
| 損害保険の保険金 | 資産の損害に対する損害保険金(実損補填分) |
⑤ その他
| 非課税所得の種類 | 内容 |
|---|---|
| 学資金・奨学金 | 給付型奨学金、学校から支給される奨学金等 |
| 香典・見舞金・祝物 | 社会通念上相当と認められる金額 |
| 相続・贈与により取得した財産 | 所得税ではなく相続税・贈与税の対象(二重課税排除) |
| 宝くじの当選金 | 当せん金付証票法により非課税 |
| オリンピック等の報奨金 | 日本オリンピック委員会等から支給される報奨金 |
3. 非課税所得の詳細解説
通勤手当の非課税限度額
通勤手当は全額非課税ではなく、交通手段ごとに非課税限度額が定められています。限度額を超えた部分は給与所得として課税されます。
| 通勤手段 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 交通機関(電車・バス等)のみ利用 | 月額15万円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道2km以上10km未満) | 月額4,200円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道10km以上15km未満) | 月額7,100円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道15km以上25km未満) | 月額12,900円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道25km以上35km未満) | 月額18,700円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道35km以上45km未満) | 月額24,400円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道45km以上55km未満) | 月額28,000円 |
| マイカー・自転車のみ利用(片道55km以上) | 月額31,600円 |
生活用動産の譲渡
日常生活で使用する家具・衣類・自動車などを売却した場合、原則として非課税です。ただし、貴金属・宝石・書画・骨董品など1個または1組の価額が30万円を超えるものは課税対象となります。
⚠️ 注意:生活用動産の30万円基準
・貴金属・宝石・書画・骨董等で1個(1組)30万円超のものは課税対象
・自動車は金額に関わらず原則非課税(事業用を除く)
・ゴルフ会員権は生活用動産に該当せず、譲渡益は課税対象
NISAの非課税
2024年から恒久化・拡充された新NISAでは、NISA口座内で保有する金融商品から生じる配当金・分配金・売却益がすべて非課税です。損益通算や繰越控除の対象外である点にも注意が必要です。
| 区分 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 年間投資上限額 | 120万円 | 240万円 |
| 生涯非課税限度額 | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) | |
| 非課税の対象 | 配当金・分配金・売却益 | |
| 損益通算 | 不可(他口座との損益通算はできない) | |
相続・贈与財産が所得税非課税である理由
相続や贈与によって取得した財産は、相続税・贈与税の課税対象となるため、所得税は課されません。これは二重課税を防ぐための規定です。ただし、相続した不動産を賃貸した場合の家賃収入は、相続後に生じた所得として不動産所得の課税対象となります。
4. 非課税と課税の比較(まぎらわしい項目)
試験では「非課税になりそうで実は課税」「課税になりそうで実は非課税」という紛らわしい項目が出題されます。以下の対比を整理しておきましょう。
| 項目 | 課税・非課税の区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金・老齢厚生年金 | ❌ 課税(雑所得) | 公的年金等控除が適用される |
| 遺族年金・障害年金 | ✅ 非課税 | 所得税法第9条により非課税 |
| 失業給付(雇用保険) | ✅ 非課税 | 雇用保険法により非課税 |
| 育児休業給付金 | ✅ 非課税 | 雇用保険法により非課税 |
| 傷病手当金 | ✅ 非課税 | 健康保険法により非課税 |
| 宝くじの当選金 | ✅ 非課税 | 当せん金付証票法により非課税 |
| 競馬・競輪の払戻金 | ❌ 課税(一時所得または雑所得) | 継続的な場合は雑所得 |
| 生命保険の死亡保険金 | ❌ 相続税・所得税・贈与税のいずれか | 契約形態により課税関係が異なる |
| 生命保険の入院給付金 | ✅ 非課税 | 身体の傷害に起因するため |
| ゴルフ会員権の譲渡益 | ❌ 課税(譲渡所得) | 生活用動産に該当しない |
5. 試験の重要ポイント
- 遺族年金・障害年金は非課税、老齢年金は課税(雑所得)という対比を押さえる
- 通勤手当の非課税限度額は交通機関利用の場合月額15万円
- 生活用動産の譲渡は原則非課税だが、1個30万円超の貴金属・宝石等は課税対象
- 宝くじの当選金は非課税、競馬・競輪の払戻金は課税
- 失業給付・傷病手当金・育児休業給付金はいずれも非課税
- NISA口座内の利益は非課税だが、損益通算・繰越控除は不可
- 相続・贈与財産が所得税非課税なのは二重課税排除のため(相続税・贈与税が課される)
- 生命保険の入院給付金・手術給付金は非課税、死亡保険金は契約形態により課税関係が異なる
参考・出典
- 国税庁「No.2011 課税される所得と非課税所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2011.htm
- 国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm
- 国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
- 国税庁「No.1700 損害賠償金等の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1700.htm
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

