確定拠出年金(DC)の完全ガイド

CFP

1. 概要

確定拠出年金(DC:Defined Contribution Plan)は、拠出する掛金が確定しており、運用結果によって将来の給付額が変わる年金制度です。企業が実施する「企業型DC」と、個人が任意で加入する「個人型DC(iDeCo)」の2種類があります。掛金・運用益・給付の3段階すべてに税制優遇があることが最大の特徴です。CFP試験では加入資格・掛金限度額・税制優遇・給付の種類・ポータビリティが頻出テーマです。

2. 確定拠出年金の全体像

企業型DCとiDeCoの比較

項目企業型DC個人型DC(iDeCo)
実施主体企業(規約に基づき実施)国民年金基金連合会
加入対象企業型DCを導入した企業の従業員原則として国内に居住する20歳以上65歳未満の者
掛金の拠出者事業主(従業員のマッチング拠出も可)加入者本人
運用指図加入者本人が行う加入者本人が行う
給付開始年齢原則60歳以降(通算加入期間による)原則60歳以降(通算加入期間による)

確定給付型(DB)との違い

項目確定拠出年金(DC)確定給付型年金(DB)
確定しているもの拠出する掛金将来の給付額
運用リスク加入者が負う企業(実施主体)が負う
運用指図加入者本人企業・基金が行う
将来の給付額運用結果によって変動あらかじめ確定

3. 加入資格と掛金限度額

iDeCoの加入対象者と掛金限度額

2022年10月の制度改正により、企業型DCの加入者もiDeCoに同時加入できるようになりました(規約の定めは不要)。加入対象者と掛金限度額は以下のとおりです。

加入者の区分月額掛金上限年額上限
自営業者等(国民年金第1号被保険者)68,000円816,000円
会社員(企業型DC・DBなし)23,000円276,000円
会社員(企業型DCあり・DBなし)20,000円240,000円
会社員(企業型DC・DBあり、またはDBのみ)12,000円144,000円
公務員等(共済組合加入者)12,000円144,000円
専業主婦(夫)等(国民年金第3号被保険者)23,000円276,000円

⚠️ 自営業者の上限に注意
自営業者等(第1号被保険者)の上限月額68,000円は、国民年金基金または国民年金付加保険料との合算上限です。国民年金基金に加入している場合は、その掛金と合わせて月額68,000円が上限となります。

企業型DCの掛金限度額

区分月額上限年額上限
DBなし(DCのみ)55,000円660,000円
DBあり27,500円330,000円

📌 マッチング拠出
企業型DCでは、事業主掛金に上乗せして従業員が自ら掛金を拠出できる「マッチング拠出」が認められています。マッチング拠出の掛金は①事業主掛金を超えないこと、②事業主掛金と合わせて月額上限(DBなし:55,000円)を超えないことが条件です。マッチング拠出した掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。

4. 税制上の優遇措置

確定拠出年金は「掛金を拠出するとき」「運用しているとき」「給付を受け取るとき」の3段階すべてで税制優遇が受けられます。

段階税制優遇の内容
① 掛金拠出時iDeCoの掛金は全額小規模企業共済等掛金控除(所得控除)として課税所得から控除。企業型DCの事業主掛金は損金算入(法人)または非課税(従業員への給与として課税されない)
② 運用期間中運用益(利息・配当・売却益等)が全額非課税(通常は20.315%課税)
③ 給付受取時一時金受取→退職所得控除が適用。年金受取→公的年金等控除が適用

退職所得控除(一時金受取の場合)

加入期間退職所得控除額
20年以下40万円 × 加入期間(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (加入期間 − 20年)

退職所得 = (受取一時金 − 退職所得控除額)× 1/2  ※退職所得は他の所得と分離して課税(分離課税)

📌 計算例:加入期間30年・一時金2,000万円の場合
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (30年 − 20年)= 1,500万円
退職所得 = (2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円が課税対象

5. 運用と運用商品の選定

運用商品の種類

種類内容特徴
元本確保型定期預金・保険商品元本が保証される。低リスク・低リターン
元本変動型投資信託(株式型・債券型・バランス型等)運用成果により元本が増減。長期運用でのリターン期待

運用商品は加入者自身が選択・変更(スイッチング)できます。DCの運営管理機関は3つ以上35本以内の運用商品をラインナップに提供することが義務付けられており、そのうち1本以上は元本確保型を含めなければなりません。

デフォルト商品(指定運用方法)

加入者が運用指図を行わない場合に自動的に適用される商品を「指定運用方法(デフォルト商品)」といいます。2018年の法改正で制度化されました。従来は元本確保型がデフォルトになることが多かったですが、バランス型投資信託等が指定される場合もあります。

6. 給付の種類と受取方法

給付の種類受給要件・内容課税区分
老齢給付金通算加入者等期間に応じた年齢から受給開始。60歳から75歳までの間で受給開始時期を選択可(2022年改正)一時金→退職所得 年金→雑所得(公的年金等控除)
障害給付金75歳未満で一定の障害状態になった場合。障害認定日以後いつでも請求可非課税
死亡一時金加入者が死亡した場合、遺族が受け取る相続税の対象(みなし相続財産)。ただし生命保険の非課税枠は適用されない
脱退一時金iDeCoを脱退する場合に一定要件(通算加入期間5年以下等)を満たすと受給可一時金→退職所得

老齢給付金の受給開始年齢と通算加入期間

通算加入者等期間受給開始可能年齢
10年以上60歳から
8年以上10年未満61歳から
6年以上8年未満62歳から
4年以上6年未満63歳から
2年以上4年未満64歳から
1か月以上2年未満65歳から

⚠️ 受給開始の上限は75歳
2022年4月の改正により、老齢給付金の受給開始上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。受給を遅らせるほど運用期間が延びますが、受給を遅らせても給付額が増額される仕組み(公的年金の繰下げ増額のような制度)はありません。

7. 離転職時の手続き(ポータビリティ)

確定拠出年金の最大の特徴の一つが「持ち運び可能(ポータブル)」であることです。転職・退職時に積み立てた資産を新しい制度に移換(移管)できます。

転職先・状況移換先
企業型DCのある会社へ転職転職先の企業型DCへ移換
企業型DCのない会社へ転職・独立iDeCoへ移換
専業主婦(夫)になった場合iDeCoへ移換
DBのみの会社へ転職iDeCoへ移換(または企業型DCへの移換が可能な場合あり)
移換手続きをしない場合国民年金基金連合会へ自動移換(運用はされず管理手数料が引かれ続ける)

⚠️ 自動移換のデメリット
転職後6か月以内に移換手続きをしないと、資産が国民年金基金連合会に自動移換されます。自動移換中は①運用が行われない(現金のまま放置)、②管理手数料が毎月引かれる、③加入期間としてカウントされない、という3つのデメリットがあります。速やかに移換手続きを行うことが重要です。

8. 試験の重要ポイント

  • DCはDefined Contribution(確定拠出)の略。将来の給付額は確定しておらず、運用結果によって変動する
  • 税制優遇は掛金(所得控除)・運用益(非課税)・給付(退職所得控除または公的年金等控除)の3段階
  • iDeCoの掛金上限:自営業者68,000円/月、会社員(DCのみ)23,000円/月、公務員・DB加入者12,000円/月
  • 自営業者の上限68,000円は国民年金基金・付加保険料との合算上限
  • 企業型DCの掛金上限:DBなし55,000円/月、DBあり27,500円/月
  • マッチング拠出は事業主掛金以下かつ月額上限以内の2条件
  • 運用商品は3本以上35本以内(うち1本以上は元本確保型)を提供義務
  • 老齢給付金の受給開始:通算10年以上なら60歳から。上限は75歳(2022年改正で70歳→75歳に引き上げ)
  • 障害給付金は非課税。死亡一時金は相続税の対象(生命保険の非課税枠は適用なし
  • 退職所得控除:20年以下は40万円×年数、20年超は800万円+70万円×(年数−20年)
  • 自動移換の3つのデメリット:①運用なし ②手数料徴収 ③加入期間不算入

参考・出典

  • 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html
  • 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」https://www.ideco-koushiki.jp/
  • 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
  • 確定拠出年金法(DC法)

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

タイトルとURLをコピーしました