1. 概要
生命保険と税金の関係は、①保険料を支払うとき(生命保険料控除)、②保険金・給付金を受け取るとき(課税関係)の2つの場面で発生します。CFP試験では、生命保険料控除の新旧制度の区分・控除額計算・合計限度額、死亡保険金の課税区分(相続税・所得税・贈与税)と計算方法、満期保険金・解約返戻金の一時所得計算、そして年金受取時の雑所得の扱いが頻出です。なお、令和8年(2026年)分の所得税について、23歳未満の扶養親族がいる世帯を対象に一般生命保険料控除の限度額が4万円から6万円に引き上げられる改正(1年間の時限措置)が行われています。
2. 生命保険料控除
新制度と旧制度の区分
生命保険料控除は、契約締結日により「新制度」と「旧制度」に分かれます。更新・特約中途付加等を行った場合は、以後の保険料が新制度の適用となります。
| 区分 | 対象契約 | 控除の種類 |
|---|---|---|
| 新制度 | 2012年(平成24年)1月1日以降に締結した契約 | ①一般生命保険料控除 ②介護医療保険料控除 ③個人年金保険料控除 |
| 旧制度 | 2011年(平成23年)12月31日以前に締結した契約 | ①一般生命保険料控除 ②個人年金保険料控除(介護医療保険料控除はなし) |
📌 新制度で控除対象外となる特約
傷害特約・災害割増特約など、身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる特約の保険料は、新制度では生命保険料控除の対象外です(旧制度では対象)。
各控除の対象となる主な保険・特約
| 控除の種類 | 対象となる主な保険・特約 |
|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 終身保険・定期保険・養老保険・学資保険・変額保険・収入保障保険等の死亡・生存に基因して支払われる保険の保険料 |
| 介護医療保険料控除(新制度のみ) | 医療保険・がん保険・介護保険・入院特約・医療特約・先進医療特約等の保険料 |
| 個人年金保険料控除 | 税制適格特約(個人年金保険料税制適格特約)を付加した個人年金保険の保険料 |
個人年金保険料控除の要件
個人年金保険料控除を受けるには「個人年金保険料税制適格特約」を付加することに加え、以下の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 年金受取人 | 保険料の払込者本人または配偶者であること |
| 保険料払込期間 | 10年以上であること(一時払は不可) |
| 受取開始年齢 | 確定年金・有期年金の場合、60歳以降に受取開始かつ受取期間が10年以上であること |
⚠️ 上記の要件を満たさない個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除ではなく一般生命保険料控除の対象となります。
控除額の計算(新制度・所得税)
| 年間払込保険料 | 控除額(所得税・各区分) |
|---|---|
| 20,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 20,001円〜40,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 10,000円 |
| 40,001円〜80,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 20,000円 |
| 80,001円以上 | 一律 40,000円(上限) |
控除額の計算(新制度・住民税)
| 年間払込保険料 | 控除額(住民税・各区分) |
|---|---|
| 12,000円以下 | 払込保険料の全額 |
| 12,001円〜32,000円 | 払込保険料 × 1/2 + 6,000円 |
| 32,001円〜56,000円 | 払込保険料 × 1/4 + 14,000円 |
| 56,001円以上 | 一律 28,000円(上限) |
控除額の合計限度額
| 区分 | 各区分の上限 | 3区分合計の上限 |
|---|---|---|
| 所得税(新制度) | 各40,000円 | 120,000円 |
| 住民税(新制度) | 各28,000円 | 70,000円 |
| 所得税(旧制度) | 各50,000円 | 100,000円(2区分のみ) |
| 住民税(旧制度) | 各35,000円 | 70,000円 |
📌 令和8年(2026年)分の特例措置
23歳未満の扶養親族を有する居住者については、令和8年分の所得税に限り、一般生命保険料控除(新制度)の適用限度額が4万円→6万円に引き上げられます(1年間の時限措置)。ただし、3区分合計の上限12万円は変わりません。
新旧両契約がある場合の取扱い
一般生命保険料控除・個人年金保険料控除については、新旧両制度の契約がある場合、それぞれで計算した控除額を合計できます。ただし、合計後の各区分の上限は所得税40,000円・住民税28,000円です。旧制度のみで計算した方が有利な場合は、旧制度のみで申告することも可能です。
3. 医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に所得から控除できる制度です。生命保険との関係では、保険金・給付金等で補填された金額は医療費控除の対象から除く必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額の計算 | (実際に支払った医療費 − 保険金等で補填された金額)− 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか少ない方) |
| 控除の上限 | 200万円 |
| 保険金等の補填額の取扱い | 入院給付金・手術給付金・高度障害保険金等で補填された金額は、その補填対象となる医療費から差し引く(他の医療費からは差し引かない) |
| 申告方法 | 確定申告(年末調整では適用不可) |
4. 保険金等の税務
非課税となる給付金
身体の傷害・疾病に基因して支払われる給付金は、原則として非課税です。
| 非課税となる主な給付金・保険金 |
|---|
| 入院給付金・手術給付金・通院給付金 |
| がん診断給付金・がん入院給付金 |
| 高度障害保険金・障害給付金 |
| 介護給付金・リビング・ニーズ特約による生前給付金 |
| 先進医療給付金 |
死亡保険金の課税区分
死亡保険金の課税区分は、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによって決まります。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金 |
|---|---|---|---|
| 夫 | 夫 | 妻・子(相続人) | 相続税(みなし相続財産) |
| 妻 | 夫 | 妻 | 所得税(一時所得) |
| 夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
相続税の計算(死亡保険金の非課税枠)
契約者(保険料負担者)=被保険者の場合、死亡保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象となります。ただし、相続人が受け取る場合に限り非課税枠があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 非課税限度額 | 500万円 × 法定相続人の数 |
| 非課税の適用対象 | 相続人が受け取った死亡保険金のみ。相続放棄した者が受け取った死亡保険金は非課税枠の適用なし(ただし法定相続人の数には含める) |
| 各人の課税価格 | 各人が受け取った死亡保険金 − 非課税限度額 × (各人の受取保険金 ÷ 全相続人の受取保険金合計) |
所得税の計算(一時所得)
契約者(保険料負担者)=受取人、被保険者が異なる場合、死亡保険金は一時所得として所得税・住民税の対象となります。
| 計算ステップ | 計算式 |
|---|---|
| ①一時所得の金額 | 受け取った保険金総額 − 支払済み保険料 − 特別控除額(50万円) |
| ②課税対象額 | 一時所得の金額 × 1/2 |
| ③総合課税 | ②の金額を他の所得と合算して総合課税(累進税率を適用) |
📌 一時所得の計算例
死亡保険金1,000万円、払込保険料総額700万円の場合:
①一時所得 = 1,000万円 − 700万円 − 50万円 = 250万円
②課税対象額 = 250万円 × 1/2 = 125万円(他の所得と合算して課税)
満期保険金・解約返戻金の税務
| 契約者=受取人の場合 | 税務の取扱い |
|---|---|
| 通常の満期保険金・解約返戻金 | 一時所得として所得税・住民税の対象。計算方法は死亡保険金の一時所得と同様 |
| 金融類似商品に該当する場合 | 源泉分離課税(20.315%)。一時払保険で保険期間5年以内、または5年以内に解約した場合等が該当 |
5. 年金の税務(雑所得)
個人年金保険の年金受取時
個人年金保険の年金は、受取人の種類によって課税関係が異なります。
| 契約形態 | 課税関係 |
|---|---|
| 契約者(保険料負担者)本人が年金受取人 | 年金は雑所得として所得税・住民税の対象。雑所得の金額 = 受取年金額 − 払込保険料のうち当該年金額に対応する部分 |
| 契約者と年金受取人が異なる(例:夫が契約・妻が受取) | 年金受給権に対し贈与税が課税(年金受給権の評価額に基づく)。翌年以降の各年金は雑所得として所得税・住民税の対象 |
年金の源泉徴収
個人年金保険の年金受取時には、原則として所得税が源泉徴収されます。年金額から必要経費相当額を差し引いた残額に対して源泉徴収が行われ、確定申告で精算します。
6. 保険に関する調書
保険会社は一定の条件を満たす保険金・年金等を支払った場合、税務署への支払調書の提出が義務づけられています。CFP試験では、調書の提出が必要となる主な基準を把握しておくことが重要です。
| 調書の種類 | 提出が必要となる主な基準 |
|---|---|
| 生命保険契約等の一時金の支払調書 | 一時金の支払額が100万円超 |
| 生命保険契約等の年金の支払調書 | 年金の支払額が20万円超 |
| 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書 | 支払金額が100万円超 |
7. 試験の重要ポイント
- 生命保険料控除は新制度(2012年以降)が3区分、旧制度(2011年以前)が2区分
- 新制度の所得税の各区分上限は4万円、3区分合計上限は12万円
- 令和8年(2026年)分は、23歳未満扶養親族がいる世帯の一般生命保険料控除上限が6万円に拡充(1年の時限措置)
- 個人年金保険料控除の要件:税制適格特約の付加・払込期間10年以上・確定年金は60歳以降・10年以上受取
- 傷害特約・災害割増特約の保険料は新制度では控除対象外
- 入院給付金・手術給付金・高度障害保険金・リビング・ニーズ特約の生前給付金は非課税
- 死亡保険金の課税区分:契約者=被保険者→相続税、契約者=受取人→所得税(一時所得)、3者全員異なる→贈与税
- 死亡保険金の相続税非課税枠:500万円×法定相続人の数(相続放棄者は対象外だが人数には含む)
- 一時所得の課税対象額 =(受取保険金 − 払込保険料 − 50万円)× 1/2
- 保険に関する調書:一時金は100万円超、年金は20万円超で支払調書の提出が必要
参考・出典
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
- 国税庁「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm
- 国税庁「No.1490 一時所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251227taikou.pdf
- 公益財団法人 生命保険文化センター「新旧両制度で対象契約がある場合の生命保険料控除は?」https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/tax/560.html
本記事は令和7年(2025年)時点の法令および制度に基づき作成しています。税制・保険法は改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

