1. 概要
個人の生命保険設計では、万一の際に遺族が経済的に困らないよう「必要保障額」を正確に算出することが出発点です。CFP試験では、必要保障額の積み上げ計算(支出見込額から収入見込額を差し引く方法)、遺族生活費の係数(現在の生活費の70%・50%)、団体信用生命保険の仕組みと住宅ローンとの関係、財形貯蓄や総合福祉団体定期保険の制度概要が頻出論点です。必要保障額はライフステージの変化に応じて変動するため、保険設計の定期的な見直しの視点も重要です。
2. 個人の必要保障額
必要保障額の基本的な考え方
必要保障額とは、被保険者が死亡した場合に遺族の生活に不足するお金(支出見込額から収入見込額を差し引いた金額)を指します。この不足分を死亡保険でまかなうのが基本的な考え方です。
| 必要保障額の計算式 | |
|---|---|
| 必要保障額 | 支出見込額合計 ー 収入見込額合計 |
支出見込額(遺族に必要となるお金)
| 項目 | 内容・計算方法 |
|---|---|
| 遺族の生活費(末子独立まで) | 現在の月間生活費 × 70% × 12か月 × (22歳 − 末子の年齢) |
| 配偶者の生活費(末子独立後) | 現在の月間生活費 × 50% × 12か月 × (配偶者の平均余命 − 末子独立後の年数) |
| 子どもの教育費 | 幼稚園〜大学までの教育費(進路によって大きく異なる) |
| 死後整理資金 | 葬儀費用・墓石代・当面の生活立て直し資金など(目安:約300〜500万円) |
| 住宅関連費用 | 賃貸の場合は家賃。持ち家・団信加入の場合は住宅ローン残高は不要(団信で消滅) |
📌 生活費の係数(試験頻出)
・末子独立まで(子あり期間):現在の生活費の70%
・末子独立後(配偶者のみ):現在の生活費の50%
これは被保険者(大黒柱)が不在になることで生活費が減少するという前提に基づいています。
収入見込額(遺族が受け取れるお金)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | 子のある配偶者または子が受け取れる公的年金。子が18歳年度末(一定の障害がある場合は20歳未満)まで支給 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金加入者の遺族(配偶者・子等)が受け取れる年金。子が独立後も配偶者は受給可能。中高齢寡婦加算(40歳以上65歳未満の子のない妻)あり |
| 配偶者の老齢年金 | 配偶者が65歳以降に受け取る老齢基礎年金・老齢厚生年金 |
| 配偶者の収入(就労収入) | 遺族となった配偶者が就労することで得られる収入 |
| 死亡退職金・弔慰金 | 勤務先から支給される場合がある |
| 現在の金融資産(貯蓄) | 現在保有する預貯金・有価証券等 |
| 既加入保険の死亡保険金 | すでに加入している生命保険の死亡保険金 |
必要保障額の変動とライフステージ
必要保障額は一定ではなく、ライフステージの変化とともに増減します。保険の定期的な見直しが必要です。
| ライフステージ | 必要保障額の傾向 |
|---|---|
| 結婚・子ども誕生 | 増加(扶養家族が増え、教育費・生活費の補填必要額が大きくなる) |
| 子どもの成長・独立 | 減少(子の教育費が不要になり、必要保障期間が短くなる) |
| 住宅ローン完済 | 減少(住居費の不安が軽減される) |
| 定年退職・老後 | 大幅減少(収入喪失リスクが小さくなり、葬儀費用程度で足りる場合も) |
3. 公的年金(遺族年金)の確認ポイント
必要保障額の算出において、公的な遺族年金は収入見込額の重要な構成要素です。被保険者の職業(自営業か会社員か)によって受け取れる年金の種類が異なります。
| 被保険者の職業 | 受け取れる遺族年金 |
|---|---|
| 自営業者・国民年金加入者 | 遺族基礎年金のみ(子のある配偶者または子が対象) |
| 会社員・公務員(厚生年金加入者) | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
⚠️ 自営業者の保障の薄さに注意
自営業者は遺族厚生年金を受け取れないため、会社員と比較して公的保障が手薄です。必要保障額の計算上、自営業者の遺族は会社員世帯より大きな保険保障が必要となります。また、自営業者には傷病手当金もないため、就業不能リスクへの備えも重要です。
4. 団体信用生命保険(団信)
団信の基本的な仕組み
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの返済期間中に債務者(借入人)が死亡または高度障害状態になった場合、保険金によって住宅ローン残高が全額弁済される保険制度です。金融機関が保険契約者・保険金受取人となり、住宅ローン利用者が被保険者となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険契約者・受取人 | 金融機関(保険金は住宅ローン残高の返済に充当) |
| 被保険者 | 住宅ローン利用者 |
| 保険料の負担 | 民間ローン:金融機関が負担(借入金利に含まれる)が多い。フラット35:上乗せ金利(0.2%)で加入者が実質負担 |
| 加入の要否 | 民間金融機関:原則として加入が必須条件。フラット35:加入は任意(未加入の場合は金利が0.2%低くなる) |
| 加入年齢の上限 | 一般的に満70歳未満(商品による) |
団信と必要保障額の関係
住宅ローンに団信が付いている場合、被保険者の死亡時にローン残高が消滅するため、必要保障額の算出において住宅ローン残高を支出見込額に含める必要はありません。一方、団信に加入していない場合(フラット35の任意加入を選択しない場合等)は、住宅ローン残高相当額を必要保障額に加算する必要があります。
📌 ペアローン・連帯債務型の注意点
夫婦でペアローンを組んでいる場合、一方が死亡しても自分の持分のローンのみが消滅し、もう一方のローンは残ります。この点は必要保障額の算出で見落としやすい論点です。フラット35のペア連生団信(連生団信)に加入すれば、夫婦いずれかの死亡で双方のローン残高が全額消滅します。
団信の特約種類
| 種類 | 保障内容 |
|---|---|
| 一般団信 | 死亡・高度障害状態になった場合にローン残高を弁済 |
| 三大疾病付団信 | 一般団信の保障に加え、がん・急性心筋梗塞・脳卒中と診断された場合も弁済 |
| 八大疾病付団信 | 三大疾病に加え、糖尿病・高血圧症・肝疾患・慢性腎不全・慢性膵炎も対象 |
| ペア連生団信(フラット35) | 夫婦どちらか一方の死亡・高度障害で双方のローン残高が全額消滅 |
5. 財形貯蓄制度と団体定期保険
財形貯蓄制度
財形貯蓄制度は、勤労者が事業主を通じて給与天引きで貯蓄する制度です。一般財形・財形住宅・財形年金の3種類があります。
| 種類 | 目的 | 非課税の条件 | 非課税限度額 |
|---|---|---|---|
| 一般財形 | 目的自由 | なし(利子等に課税) | なし |
| 財形住宅 | 住宅取得・増改築 | 住宅取得等への充当 | 財形年金と合わせて元本550万円まで利子等非課税 |
| 財形年金 | 老後の年金 | 年金として受け取る | 財形住宅と合わせて元本550万円まで(保険型は払込保険料385万円まで)利子等非課税 |
団体定期保険(Bグループ保険)
団体定期保険は、企業等が保険契約者となり、従業員を被保険者とする1年更新の定期保険です。個人で加入する定期保険と比較して保険料が割安という特徴があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| Aグループ保険(総合福祉団体定期保険) | 企業が全額保険料を負担。死亡・高度障害時に遺族への弔慰金・死亡退職金の原資とする。被保険者(従業員)の同意が必要 |
| Bグループ保険(団体定期保険) | 従業員が任意加入し、保険料を自己負担。個人の生命保険より割安。死亡保険金は遺族が受け取る |
総合福祉団体定期保険のポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険契約者 | 企業(事業主) |
| 被保険者 | 従業員・役員(加入に際して被保険者の同意が必要) |
| 保険料負担 | 企業が全額負担。法人の損金に算入できる |
| 保険金受取人 | 被保険者の遺族(または企業) |
| ヒューマン・ヴァリュー特約 | 従業員の死亡による企業側の損失(採用・教育コスト等)を補填するための特約。保険金受取人は企業 |
6. 確定拠出年金・国民年金基金・小規模企業共済
個人型確定拠出年金(iDeCo)
iDeCoは、加入者が自ら掛金を拠出・運用し、老後に年金として受け取る私的年金制度です。掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)となるため、生命保険設計において節税効果のある老後準備手段として位置づけられます。
| 加入対象 | 掛金上限額(月額) |
|---|---|
| 自営業者(国民年金第1号被保険者) | 68,000円(国民年金基金との合算) |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 20,000円 |
| 会社員(確定給付年金あり等) | 12,000円 |
| 公務員 | 12,000円 |
| 専業主婦(夫)(第3号被保険者) | 23,000円 |
国民年金基金・小規模企業共済
| 制度 | 対象 | 主な特徴 | 税制上の扱い |
|---|---|---|---|
| 国民年金基金 | 国民年金第1号被保険者(自営業者等) | 老齢基礎年金を補完する公的な上乗せ年金。掛金はiDeCoと合算で月額68,000円が上限 | 掛金は社会保険料控除の対象 |
| 小規模企業共済 | 小規模企業の経営者・役員・個人事業主 | 廃業・退職時に退職金として共済金を受け取れる。掛金月額は1,000円〜70,000円 | 掛金は全額小規模企業共済等掛金控除の対象 |
7. 試験の重要ポイント
- 必要保障額 = 支出見込額 − 収入見込額(不足分を死亡保険で補う)
- 遺族の生活費の係数:末子独立まで70%、末子独立後(配偶者のみ)50%
- 自営業者は遺族厚生年金がなく公的保障が薄いため、必要保障額が会社員より大きくなる
- 団信加入時:住宅ローン残高は死亡時に消滅するため支出見込額に含めない
- 民間ローンの団信は原則加入必須。フラット35の団信は加入任意(未加入で金利0.2%引下げ)
- 財形住宅・財形年金の非課税限度額は合わせて元本550万円(保険型の財形年金は払込保険料385万円)
- 総合福祉団体定期保険は企業が保険料全額負担。加入に際し被保険者(従業員)の同意が必要
- iDeCoの掛金は全額小規模企業共済等掛金控除(所得控除)の対象
- 国民年金基金の掛金は社会保険料控除の対象(iDeCoとは控除の種類が異なる)
参考・出典
- 公益財団法人 生命保険文化センター「万一の際に必要な保障額の算出方法」https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1218.html
- 住宅金融支援機構「新機構団体信用生命保険制度」https://www.flat35.com/danshin_menu/shin-danshin/
- 国税庁「財形貯蓄制度について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1176.htm
- 中小企業庁「小規模企業共済制度」https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
本記事は令和7年(2025年)時点の法令および制度に基づき作成しています。保険業法・保険法は改正されることがあります。実際の保険契約・手続きについては、最新の法令および金融庁の情報を確認するとともに、専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

