CFP試験「相続・事業承継設計」は、民法上の相続知識から相続税・贈与税の計算、財産評価、事業承継対策まで幅広い分野にわたります。この記事では、各分野の頻出論点と計算パターンを横断的に整理します。令和5・6年度の税制改正点も含めてまとめていますので、試験直前の総仕上げにご活用ください。
この記事はシリーズ全体のまとめです。各分野の詳細は個別記事もあわせてご参照ください。
相続の基礎知識 頻出ポイント
相続人の範囲と順位
法定相続人の順位は、配偶者は常に相続人となり、第1順位が子(直系卑属)、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。先順位の相続人がいる場合、後順位の者は相続人になれません。
代襲相続は、相続人となるべき子または兄弟姉妹が、相続開始以前に死亡・相続欠格・廃除により相続できない場合に、その者の子が代わって相続するものです。代襲の範囲は、子については孫・ひ孫と無制限に続きますが、兄弟姉妹については甥・姪の1代限りです。
法定相続分の計算パターン
試験では相続分の計算が頻出です。組合せごとの相続分を整理します。
| 相続人の組合せ | 配偶者 | その他 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 1/2(子で均等分割) |
| 配偶者+直系尊属 | 2/3 | 1/3(直系尊属で均等分割) |
| 配偶者+兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4(兄弟姉妹で均等分割) |
| 配偶者のみ | 全部 | ― |
養子は実子と同じ相続分を持ちます。ただし、相続税計算上の法定相続人に算入できる養子の数には制限があります(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで)。
遺産分割の方法と遺留分
遺産分割の方法には、財産をそのまま分ける現物分割、売却して代金を分ける換価分割、特定の相続人が取得し他の相続人に金銭を払う代償分割の3種類があります。
遺留分は、一定の相続人に最低限保障される相続財産の割合です。遺留分の権利者は、配偶者・子(直系卑属)・直系尊属に限られ、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の1/3、その他の場合は1/2です。各相続人の遺留分は、この割合に法定相続分を乗じて求めます。
遺留分を侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害額の金銭請求(遺留分侵害額請求権)ができます。令和元年(2019年)の民法改正により、現物返還から金銭請求へ変更されています。試験では「遺留分減殺請求」という旧称が出題されることもあるため注意が必要です。
相続税の計算 頻出ポイント
相続税の計算フロー
相続税の計算は大きく3つのステップで進みます。まず①各人の課税価格を計算し、②相続税の総額を求め、③各人の納付税額を按分・調整します。このフローを頭に入れておくことが計算問題攻略の基本です。
課税価格の計算(ステップ①)
各人の課税価格は次の式で計算します。
課税価格 = 本来の相続財産 + みなし相続財産 - 非課税財産 - 債務・葬式費用 + 生前贈与加算
みなし相続財産の代表例は死亡保険金と死亡退職金です。それぞれ「500万円×法定相続人の数」が非課税限度額となります。受取人固有の財産ですが、遺産分割の対象にはならない点にも注意が必要です。
【令和5年度改正】生前贈与加算の対象期間が、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から「相続開始前3年以内」から「相続開始前7年以内」に段階的に延長されています。ただし延長された4年分(相続開始前3年超7年以内)については、合計100万円を相続財産に加算しない緩和措置があります。なお、令和8年(2026年)12月31日以前に相続が開始した場合は改正前の3年ルールが適用されます。
相続税の総額の計算(ステップ②)
相続税の総額は、実際の分割割合ではなく、法定相続分で按分した仮の取得額に税率を適用して求めます。具体的な手順は次のとおりです。
- 各人の課税価格を合計し、課税価格の合計額を求める
- 課税価格の合計額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引き、課税遺産総額を求める
- 課税遺産総額を各法定相続人が法定相続分で取得したと仮定して按分する
- 按分後の各人の仮取得額に相続税の税率(10%~55%の8段階)を適用して各人の仮税額を求める
- 各人の仮税額を合計したものが「相続税の総額」となる
各人の納付税額の計算(ステップ③)
相続税の総額を実際の取得割合で按分し、各人の算出税額を求めます。その後、税額の加算・控除を適用して納付税額を確定します。
2割加算は、被相続人の配偶者・父母・子(代襲相続人を含む)以外の者が相続・遺贈で財産を取得した場合に、算出税額に20%が加算されるものです。孫養子(被相続人の子の代襲相続人でない孫で養子となった者)も対象となります。
主な税額控除は次のとおりです。配偶者の税額軽減は配偶者が取得した財産が「1億6千万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い額まで相続税が課税されない制度です。贈与税額控除は生前贈与加算された財産に対応する贈与税額を控除するものです。そのほか未成年者控除、障害者控除、相次相続控除があります。
贈与税と相続時精算課税制度 頻出ポイント
贈与税の課税方式
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があります。原則は暦年課税で、一定の要件を満たす場合に相続時精算課税を選択できます。一度選択すると、その贈与者との間では暦年課税に戻ることができない点が重要です。
暦年課税の基礎控除は受贈者1人につき年間110万円です。複数の贈与者から贈与を受けた場合でも、受贈者単位で合計して判定します。
各種非課税特例のまとめ
| 特例の名称 | 非課税限度額 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 贈与税の配偶者控除 | 2,000万円 | 婚姻期間20年以上・居住用不動産等 |
| 住宅取得等資金の非課税 | 省エネ等住宅1,000万円・その他500万円(令和8年12月31日まで) | 直系尊属から18歳以上の子・孫へ |
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円(学校等以外は500万円) | 30歳未満の子・孫への金融機関経由の贈与 |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(結婚費用は300万円) | 18歳以上50歳未満の子・孫への金融機関経由の贈与 |
相続時精算課税制度(令和6年改正後)
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択できる制度です。累積2,500万円の特別控除があり、超過分には一律20%の税率が適用されます。相続時に贈与財産と相続財産を合算して相続税を精算します。
【令和5年度改正・令和6年施行】相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました(令和6年1月1日以後の贈与から適用)。この基礎控除内の贈与は贈与税が非課税となるだけでなく、相続開始後も相続財産への加算が不要です。暦年課税の生前贈与加算(最長7年)の対象外となる点が大きなメリットです。また、基礎控除以下の贈与であれば贈与税の申告も不要となりました(ただし初年度は選択届出書の提出が必要)。
相続時精算課税の基礎控除110万円は、複数の特定贈与者から贈与を受けた場合、各贈与者への贈与額に応じて按分します。贈与者ごとに110万円ずつ使えるわけではない点に注意が必要です。
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年間110万円 | 年間110万円(令和6年以後) |
| 特別控除 | なし | 累積2,500万円 |
| 超過分の税率 | 累進(10%〜55%) | 一律20% |
| 生前贈与加算 | 相続開始前最長7年(段階的移行) | 基礎控除超過分のみ加算(基礎控除内は不要) |
| 課税方式の変更 | 選択不要(原則) | 一度選択すると暦年課税に戻れない |
| 小規模宅地等の特例 | 適用可 | 適用不可(精算課税で取得した宅地) |
相続財産の評価 頻出ポイント
宅地の評価方式
宅地の評価方式には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。路線価方式は路線価が設定されている地域(主に市街地)で適用し、倍率方式は路線価のない地域で固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて求めます。
路線価方式の計算式は「路線価×各種補正率×地積」です。補正率には奥行価格補正率(奥行きの長短による補正)、不整形地補正率(形状による補正)、側方路線影響加算率(角地の場合の加算)などがあります。
貸地・借地権・貸家建付地など権利関係が絡む場合の評価は頻出です。自用地評価額を基礎として、借地権割合・借家権割合(全国一律30%)を用いて計算します。
| 宅地の種類 | 評価額の計算 |
|---|---|
| 自用地 | 路線価×補正率×地積 |
| 貸宅地(底地) | 自用地評価額×(1-借地権割合) |
| 借地権 | 自用地評価額×借地権割合 |
| 貸家建付地 | 自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続・遺贈で取得した宅地について、一定の要件を満たす場合に評価額を大幅に減額できる制度です。
| 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を併用する場合は、合計730㎡(330㎡+400㎡)まで限度面積を合計して適用できます。貸付事業用宅地等と他の区分を併用する場合は、面積の調整計算が必要となります。
家なき子特例(被相続人と同居していない親族が特定居住用宅地等の特例を受けるケース)は要件が厳しく設定されています。相続開始前3年以内に自己または配偶者が所有する家屋に居住していないこと、相続開始時に居住している家屋を過去に所有したことがないことなどが要件です。
事業承継・自社株評価 頻出ポイント
取引相場のない株式の評価方法
取引相場のない株式(非上場株式)の評価は、まず会社規模を「大会社・中会社・小会社」に判定し、次に株主の属性(同族株主等か否か)によって評価方式を決定します。
同族株主等が取得する株式は「原則的評価方式」で評価します。大会社は類似業種比準価額、小会社は純資産価額、中会社は両者の折衷で評価します。一方、同族株主以外の少数株主が取得する場合は、配当還元方式(特例的評価方式)を使います。
株主区分の判定は「取得後の議決権割合」で行います。同族株主グループが30%以上の議決権を保有している場合でも、取得者本人の議決権割合が5%未満であれば配当還元方式を適用できるケースがあります。判定手順を正確に覚えることが試験対策のカギです。
事業承継税制(特例措置)
法人版事業承継税制の特例措置は、後継者が非上場株式を贈与・相続で取得した際の贈与税・相続税の全額(100%)を納税猶予し、一定の要件を満たすと免除される制度です。一般措置(相続税は80%猶予)と比べて有利な内容となっています。
| 比較項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
| 対象株式数 | 上限なし(全株式) | 発行済議決権株式の2/3まで |
| 猶予割合 | 贈与税・相続税ともに100% | 贈与税100%・相続税80% |
| 後継者の人数 | 最大3人 | 1人のみ |
| 雇用確保要件 | 実質緩和(正当な理由があれば猶予継続) | 5年平均80%維持が必要 |
【重要な期限】特例措置の適用には事前に「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。提出期限は令和8年(2026年)3月31日です。また、贈与・相続の実行期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されないことが政府与党により二度にわたって明示されています。早急な準備が必要です。
試験の重要ポイント
頻出の計算問題パターン
試験でよく出題される計算問題のパターンを整理します。
相続税の総額計算は「課税価格の合計→基礎控除額を差し引く→法定相続分で按分→税率適用→合計」の手順が基本です。基礎控除額の計算式(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は確実に覚えておく必要があります。法定相続人の数には養子の算入制限があること、相続放棄があっても法定相続人の数は変わらないことにも注意が必要です。
宅地評価の計算では、路線価による自用地評価から始め、権利関係(貸家建付地など)を考慮し、最後に小規模宅地等の特例を適用するという順序で解くと正確に計算できます。
贈与税の有利判定では、暦年課税と相続時精算課税のどちらが節税になるかを判断する問題が出題されます。相続財産が基礎控除以下で相続税がかからないケースでは暦年課税が有利、多額の財産移転が必要なケースでは相続時精算課税の特別控除(2,500万円)が有効です。令和6年以降は精算課税にも110万円基礎控除が追加されたため、比較ポイントが変化しています。
間違えやすいポイントまとめ
- 死亡保険金・死亡退職金は「みなし相続財産」であり、民法上の相続財産ではないため遺産分割の対象にならない。ただし相続税の課税対象にはなる(非課税限度額あり)。
- 2割加算の対象外は配偶者・父母・子のみ。代襲相続人(孫)は「子の立場」として対象外だが、相続税法上は2割加算の対象外となる。一方、被相続人の孫を養子とした場合(孫養子)は2割加算の対象となる。
- 相続時精算課税は一度選択すると撤回できない。また選択届出書の提出は贈与を受けた年の翌年3月15日が期限で、期限後の提出は認められない。
- 小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」は減額割合が50%で他の区分(80%)より低い。面積の調整計算では貸付事業用の面積は換算が必要。
- 遺産分割協議書の作成は相続税申告の要件ではない。申告期限(相続開始から10か月以内)までに分割が確定していなくても申告は行う必要がある。
令和5・6年度改正の総まとめ
近年の主要改正点を一覧で確認します。いずれも令和6年(2024年)1月1日以後の贈与・相続から適用されています。
| 改正項目 | 改正前 | 改正後(令和6年以後) |
|---|---|---|
| 暦年課税の生前贈与加算期間 | 相続開始前3年以内 | 相続開始前最長7年以内(段階的移行。令和9年1月2日以後の相続から順次延長) |
| 延長4年分の加算額 | ―(3年ルールのみ) | 延長4年分の合計から100万円を控除した額を加算 |
| 相続時精算課税の基礎控除 | なし(少額でも申告必要) | 年間110万円の基礎控除を新設(基礎控除内は申告不要・相続財産加算不要) |
| 事業承継税制・特例承継計画の提出期限 | 令和6年(2024年)3月31日 | 令和8年(2026年)3月31日に延長(贈与・相続の実行期限は令和9年12月31日で変更なし) |
参考・出典
- 国税庁「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年度)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/202304/index.htm - 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm - 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm - 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zeisei.html - e-Gov法令検索「相続税法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

