1. 概要
宅地建物取引業法(宅建業法)は、宅地・建物の取引を業として行う者を規制し、購入者・借主等の消費者保護を図ることを目的とした法律です。CFP試験では、免許制度・媒介契約の種類・重要事項説明(35条書面)・契約締結時の書面(37条書面)・クーリングオフ・手付金等の保全措置・契約不適合責任の各制度が重要です。近年は重要事項説明のオンライン化(IT重説)の全面解禁や、空き家流通促進のための報酬規制の改正など、注目すべき改正が続いています。
2. 宅地建物取引業の免許制度
(1)免許の種類と有効期間
| 免許の種類 | 対象 | 免許権者 |
|---|---|---|
| 国土交通大臣免許 | 2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合 | 国土交通大臣 |
| 都道府県知事免許 | 1つの都道府県内にのみ事務所を設置する場合 | 都道府県知事 |
免許の有効期間は5年で、引き続き業を営む場合は更新が必要です(更新の申請は有効期間満了日の90日前から30日前までの間に行う)。
(2)宅地建物取引士(宅建士)の設置義務
宅建業者は、事務所ごとに業務に従事する者5名につき1名以上の割合で、専任の宅建士を設置しなければなりません。
3. 媒介契約の種類
売主・買主が宅建業者に不動産の売買・交換等の仲介を依頼するときに締結する契約が媒介契約です。媒介契約には3種類あり、それぞれ依頼者の制約と宅建業者の義務が異なります。
| 比較項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
|---|---|---|---|
| 他業者への依頼 | 複数業者に依頼可 | 他業者への依頼不可 | 他業者への依頼不可 |
| 自己発見取引(依頼者が自分で買主を見つける) | 可 | 可 | 不可(業者を通じなければならない) |
| 有効期間 | 法律上の制限なし(指定は3か月以内が推奨) | 3か月以内(更新可。依頼者の申出があれば更新) | 3か月以内(更新可) |
| 指定流通機構(レインズ)への登録義務 | なし | 媒介契約締結から7日以内に登録 | 媒介契約締結から5日以内に登録 |
| 業務処理状況の報告義務 | 規定なし | 2週間に1回以上報告 | 1週間に1回以上報告 |
📌 レインズ(指定流通機構)とは
宅建業者間で物件情報を共有するためのコンピューターネットワークシステムです。専任・専属専任媒介では登録が義務付けられており、登録後は業者が買主側からも情報を受け取れるため、物件の成約スピードが向上します。2025年1月施行の規則改正で、取引申込みの受付状況などがレインズの登録事項に追加され、「囲い込み」防止強化が図られました。
4. 重要事項説明(35条書面)
(1)重要事項説明の概要
宅建業者は、売買・交換・賃貸借の契約が成立する前に、購入者・借主に対して宅建士が重要事項を記載した書面(35条書面)を交付し、説明しなければなりません(宅建業法35条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 説明義務者 | 宅建士(宅建士証を提示して説明) |
| 説明のタイミング | 契約締結前 |
| 説明の相手方 | 購入者・借主(売主・貸主への説明義務はない) |
| IT重説(オンライン重説) | 2022年5月以降、売買・交換・賃貸借すべてでIT重説が可能(テレビ会議等による説明) |
(2)重要事項説明の主な内容
| 区分 | 主な説明事項 |
|---|---|
| 物件の権利関係 | 登記された権利の種類・内容(所有権・抵当権等)、私道負担の有無 |
| 法令上の制限 | 用途地域・建蔽率・容積率・都市計画上の規制、盛土規制法上の許可の要否 |
| 建物状況調査 | 実施後1年以内の調査(RC造・SRC造の共同住宅は2年以内〔2024年4月改正〕)の有無・結果の概要 |
| インフラ・設備 | 飲料水・ガス・電気・排水施設の整備状況 |
| 水害リスク | 水防法に基づく水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップ上の所在地の説明(義務化済) |
| 管理・修繕 | マンション:管理規約・修繕積立金・大規模修繕の計画等。管理業者管理者方式の場合はその旨も説明(令和8年4月1日施行改正) |
| 代金・賃料 | 売買代金・賃料の額、手付金の額、敷金・保証金等の額 |
| 契約解除 | 契約解除に関する事項(違約金・解除の条件) |
| その他 | 石綿(アスベスト)使用調査の結果、耐震診断の内容等 |
5. 契約締結時の書面(37条書面)
宅建業者は、売買・交換・賃貸借の契約が成立したときは、遅滞なく37条書面を契約の各当事者に交付しなければなりません(宅建業法37条)。
| 比較項目 | 35条書面(重要事項説明書) | 37条書面(契約書面) |
|---|---|---|
| タイミング | 契約締結前 | 契約締結後(遅滞なく) |
| 交付・説明者 | 宅建士が記名・説明 | 宅建士が記名(説明義務なし) |
| 交付相手 | 購入者・借主 | 契約の両当事者(売主・買主など) |
| 電磁的方法での交付 | 相手方の承諾があれば可 | 相手方の承諾があれば可 |
| 主な記載内容 | 物件の権利関係・法令制限・取引条件等 | 物件・代金・引渡し時期・契約解除・違約金等 |
6. クーリングオフ
宅建業者が自ら売主となる場合、買主が宅建業者以外の個人等であるときに、以下の要件のもとでクーリングオフ(申込みの撤回・契約の解除)が認められます(宅建業法37条の2)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用場面 | 宅建業者が自ら売主となる売買契約(業者間取引は対象外) |
| 申込み・契約の場所 | 事務所以外の場所(テント張りの案内所・喫茶店・買主の自宅等)での申込みまたは契約 |
| 期間 | クーリングオフができる旨および方法を書面で告知された日から8日以内 |
| 効果 | 撤回・解除の書面発送日が基準(到達不要)。手付金等はすべて返還される |
| クーリングオフできない場合 | ①告知から8日経過後、②買主が物件の引渡しを受けかつ代金の全額を支払った後 |
| 事務所等でのクーリングオフ不可の場所 | 宅建業者の事務所・継続的に業務を行える施設のある場所・買主が自ら申し出た自宅・勤務先 |
7. 手付金等の保全措置
宅建業者が自ら売主となる場合、買主(宅建業者以外)から受領する手付金等が一定額を超えるときは、受領前に保全措置を講じなければなりません(宅建業法41条・41条の2)。
| 物件の種類 | 保全措置が必要な金額 | 保全の方法 |
|---|---|---|
| 未完成物件(工事完了前) | 代金の5%超または1,000万円超 | ①銀行等の保証、②保険事業者の保険 |
| 完成物件(工事完了後) | 代金の10%超または1,000万円超 | ①銀行等の保証、②保険事業者の保険、③指定保管機関(手付金等寄託契約+質権設定) |
📌 手付金の上限
宅建業者が自ら売主となる売買契約において、受領できる手付金の額は売買代金の20%以内に制限されています(宅建業法39条)。
8. 不動産売買契約と契約不適合責任
(1)売買契約の成立と効力
不動産の売買契約は、売主と買主の合意(諾成契約)で成立します。書面の作成は効力要件ではありませんが、宅建業法上は37条書面の交付が義務付けられています。
(2)契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
売主が引き渡した目的物が契約の内容に適合しない場合(種類・品質・数量が契約と異なる場合)、買主は以下の救済を求めることができます(民法562条〜564条・566条)。
| 買主が行使できる権利 | 内容 |
|---|---|
| 追完請求 | 修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを請求 |
| 代金減額請求 | 追完を催告し相当期間内に追完がない場合、代金の減額を請求(不能の場合は催告不要) |
| 損害賠償請求 | 債務不履行(民法415条)の要件を満たす場合に請求可能 |
| 契約解除 | 追完の催告後相当期間内に履行がない場合(軽微な不適合を除く)、または不能の場合に解除可能 |
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 権利行使期間(原則) | 不適合を知った時から1年以内に売主に通知(民法566条) |
| 宅建業者が自ら売主の場合の特則 | 引渡しから2年以上の期間を定める特約が有効(通常の民法の期間より長い)。2年未満を設定する特約は無効 |
| 業者間取引 | 宅建業法の特則の適用なし(当事者間で自由に設定可能) |
9. 媒介報酬(仲介手数料)の上限
(1)売買の場合の報酬上限(原則)
宅建業者が売買・交換の媒介で受けられる報酬額の上限は、国土交通大臣告示により定められています。依頼者の一方から受けられる上限の速算式は次のとおりです。
| 売買価格(税抜) | 報酬上限(税抜)の速算式 |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% |
| 200万円超 400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 |
| 400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 |
📌 計算例:売買価格3,000万円の場合
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円(税抜)が上限。これに消費税10%を加えると 105.6万円(税込)。売主・買主それぞれからこの金額まで受領できる(合計最大211.2万円)。
(2)低廉な空き家等の媒介特例【2024年7月改正】
空き家流通促進のため、2024年7月1日施行の改正により、売買価格が800万円以下の低廉な宅地・建物(使用状態・築年数は問わない)については報酬の上限が引き上げられました。
| 項目 | 改正前(〜2024年6月) | 改正後(2024年7月〜) |
|---|---|---|
| 対象物件 | 売買価格400万円以下 | 売買価格800万円以下 |
| 報酬上限(税込) | 売主からのみ最大19.8万円 | 売主・買主それぞれから最大33万円(両者合計最大66万円) |
| 適用要件 | ー | 媒介契約締結前に依頼者(売主・買主)への説明と合意が必要 |
(3)賃貸借の場合の報酬上限
| 種類 | 上限 |
|---|---|
| 居住用建物の賃貸借 | 貸主・借主の合計で1か月分の賃料 × 1.1倍以内。借主から受け取る場合、依頼を受けるに当たって事前の承諾がある場合を除き、借主から受け取れるのは0.55か月分以内 |
| 事業用建物・土地の賃貸借 | 貸主・借主の合計で1か月分の賃料 × 1.1倍以内(居住用と異なり0.5か月の制限なし) |
| 長期空き家等の賃貸借(2024年7月改正) | 貸主から受け取れる報酬の上限が通常の2.2倍(最大2か月分相当)まで引き上げ可能 |
10. 不動産広告の規制
宅建業法では、虚偽・誇大広告を禁止しています(宅建業法32条)。また、実際に取引できない物件や条件が変わっている物件を広告し続けることも禁止されています(おとり広告・虚偽広告の禁止)。
| 規制の種類 | 内容 |
|---|---|
| 誇大広告の禁止 | 著しく事実に相違する表示・実際より著しく優良・有利と人を誤認させる表示の禁止 |
| 広告開始時期の制限 | 宅地の造成・建物の建築の工事完了前は、開発許可・建築確認等の処分後でなければ広告できない |
| 取引開始時期の制限 | 開発許可・建築確認等の処分前は、売買・交換の契約や媒介・代理の申込みを受けることはできない |
11. 不動産取引に関する主な法律
| 法律名 | 主な内容・ポイント |
|---|---|
| 民法 | 売買・贈与・賃貸借の基本ルール。契約不適合責任・解除・損害賠償等 |
| 不動産登記法 | 登記手続き・効力。2024年4月から相続登記義務化 |
| 農地法 | 農地の売買・転用には農業委員会・知事・農林水産大臣の許可が必要(3条・4条・5条) |
| 国土利用計画法 | 一定面積以上の土地取引では、契約後2週間以内に都道府県知事への届出が必要(事後届出制) |
| 消費者契約法 | 事業者と消費者の間の契約に関し、不当な勧誘・不当な契約条項を取り消し・無効とする |
12. 試験の重要ポイント
- 宅建業の免許有効期間は5年。大臣免許は2都道府県以上、知事免許は1都道府県内
- 専任宅建士は事務所の従業者5名につき1名以上の設置義務
- 媒介契約:専属専任はレインズ登録5日以内・報告週1回以上。専任は7日以内・2週間1回以上
- 重要事項説明は契約前に宅建士が相手方(買主・借主)へ説明。IT重説は売買・賃貸ともに全面解禁
- 建物状況調査(インスペクション):原則1年以内、RC造・SRC造共同住宅は2年以内(2024年4月改正)
- クーリングオフ:事務所等以外での契約・申込みが対象。書面告知から8日以内
- 手付金の保全措置:未完成物件は代金の5%超または1,000万円超、完成物件は10%超または1,000万円超で必要
- 手付金の上限は売買代金の20%以内
- 契約不適合責任:宅建業者が売主の場合、引渡しから2年以上の特約が有効(2年未満の特約は無効)
- 報酬の速算式(400万円超の売買):売買価格×3%+6万円(税抜)が依頼者一方からの上限
- 2024年7月改正:800万円以下の物件の報酬上限が売主・買主それぞれ最大33万円(税込)に拡充
- 広告は開発許可・建築確認前は禁止。取引(契約)も同様に許可・確認前は不可
参考・出典
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html
- 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の改正について(重要事項説明項目の追加等)」
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(2024年7月)」https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
- 国土交通省「定期建物賃貸借・IT重説の全面解禁について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。2024年7月施行の報酬規制改正、2025年1月・4月施行の宅建業法施行規則改正等の最新情報を反映しています。税制・制度は今後も改正されることがあります。実際の不動産取引については、宅地建物取引士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

