区分所有法とマンション管理の知識

CFP

1. 概要

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)は、分譲マンションのように1棟の建物を複数の区分所有者が所有する場合の権利関係・管理・意思決定のルールを定めた法律です(昭和37年制定)。CFP試験では、専有部分と共用部分の区別、管理組合・管理者、集会の決議要件(普通決議・特別決議・特殊決議)の正確な数字が頻出です。また、令和7年(2025年)5月に改正法が成立し、令和8年(2026年)4月1日に施行されることから、最新の改正内容も把握が必要です。

2. 区分所有建物の基本概念

(1)専有部分・共用部分・敷地利用権

区分内容・具体例特徴
専有部分構造上区分されており、独立して住居・店舗等として使用できる部分(各住戸内部など)各区分所有者が単独所有。自由に利用・処分できる
共用部分専有部分以外の建物部分(廊下・階段・エレベーター・外壁・屋根など)および管理規約で共用部分とされた専有部分(集会室・管理人室など)区分所有者全員の共有。持分割合は専有部分の床面積の割合による(規約で別段の定めも可)
敷地利用権専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利(所有権・地上権・賃借権等)原則として専有部分と分離して処分不可(規約で分離処分を認めることも可)

📌 法定共用部分と規約共用部分
法定共用部分:構造上当然に共用部分となる部分(廊下・階段・外壁等)
規約共用部分:本来は専有部分になり得るが、管理規約で共用部分とされた部分(集会室・管理人室等)。規約共用部分は登記が必要(登記しないと善意の第三者に対抗不可)

(2)区分所有者の権利と義務

項目内容
専有部分の利用区分所有者は専有部分を自由に使用・収益・処分できる。ただし建物の管理・使用につき区分所有者共同の利益に反する行為は禁止(区分所有法6条)
共用部分の利用各区分所有者は持分に応じて共用部分を使用できる
管理費・修繕積立金区分所有者は規約・集会の決議に従い、管理費・修繕積立金等を負担する義務がある

3. 管理組合・管理者・管理規約

(1)管理組合

区分所有者全員は、区分所有建物等の管理を行うための団体(管理組合)を構成します(区分所有法3条)。管理組合は法律上当然に成立するもので、任意に脱退することはできません。管理組合は法人化することもでき(管理組合法人)、その場合は登記が必要です。

(2)管理者

集会の決議によって、区分所有者以外の者(管理会社等)を管理者として選任することもできます(区分所有法25条)。管理者は区分所有者を代理して共用部分等の管理を行います。分譲マンションでは、理事長が管理者となることが一般的です。

(3)管理規約

管理規約は、区分所有者間の権利義務・管理の方法等を定める自治的な規則です。規約の設定・変更・廃止は集会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成)で行います。規約は区分所有者のみならず、その承継人・専有部分の占有者にも効力が及びます。

4. 集会(総会)の決議要件

区分所有法上の意思決定は集会(総会)の決議によります。決議の内容に応じて必要な賛成の割合が異なります。CFP試験で最も重要な部分です。

決議の種類必要な賛成割合主な対象事項
普通決議区分所有者および議決権の各過半数共用部分の通常の管理(軽微な修繕・管理者の選任・解任等)
特別決議(3/4)区分所有者および議決権の各4分の3以上規約の設定・変更・廃止、共用部分の重大な変更(大規模修繕等)、管理組合法人の設立・解散
特別決議(4/5)区分所有者および議決権の各5分の4以上建物の建替え決議(原則)
全員同意区分所有者全員の合意規約の設定における専有部分に関する特別の影響を及ぼす事項(当該専有部分の区分所有者の承諾が必要な場合)

集会の招集・通知

項目内容
定期集会の開催少なくとも年1回開催が必要
集会招集の通知期限会日の1週間前まで(規約で伸長可。改正後は短縮不可)
招集権者原則として管理者。管理者がいない場合や区分所有者の5分の1以上(議決権の5分の1以上)が集会の招集を請求できる
議決権の行使書面または代理人によっても議決権を行使できる(電磁的方法も可)

5. 建替え決議

(1)建替え決議の手続き

建替え決議には、集会の招集通知を会日の2か月前までに行う必要があります(通常の集会の1週間前より大幅に長い)。また、招集通知には建替えの概要・費用負担の概算・建替えをしない場合の建物の維持・修繕に関する計画等を記載した書面を添付しなければなりません。

項目内容
決議要件(原則)区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成
招集通知期限会日の2か月前まで
建替え不参加者への対応建替え賛成者は、決議後2か月以内に不参加者に対し区分所有権等の売渡し請求(時価)ができる
売渡し請求後の明渡し売渡し請求を受けた者は、建物の取壊し工事着手日の6か月前までに明け渡さなければならない

6. 令和7年(2025年)区分所有法改正【令和8年4月1日施行】

令和7年(2025年)5月23日、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、令和8年(2026年)4月1日から施行されます。「建物の老い」と「居住者の老い」という「2つの老い」が深刻化するなか、マンションの管理・再生を円滑化することを目的とした大規模改正です。

(1)改正の主なポイント

改正内容改正前改正後(2026年4月〜)
建替え決議要件の緩和原則として区分所有者・議決権各5分の4以上原則は5分の4のまま。ただし耐震性不足・火災安全性不足・外壁剥落危険等の客観的事由がある場合は4分の3以上に緩和
共用部分変更の特別決議の緩和区分所有者・議決権各4分の3以上バリアフリー化等一定の場合は3分の2以上に緩和
新たな再生手法の導入建替えのみ(マンション建替え円滑化法上の敷地売却は別途)「建物更新(一棟リノベ)」「建物取壊し」「建物敷地売却」「建物取壊し敷地売却」の決議が多数決で可能に
所在等不明区分所有者の除外所在不明者も決議の分母に算入裁判所の決定により、所在等不明区分所有者を決議の分母から除外可能
集会招集通知の見直し1週間前まで(規約で短縮・延長可)1週間前まで(規約で延長のみ可。短縮は不可に変更)。通知に「議案の要領」の記載を追加

(2)新たな再生手法の決議要件

再生手法必要な賛成割合
建物の建替え(原則)区分所有者・議決権各5分の4以上
建物の更新(一棟リノベ)・建物取壊し区分所有者・議決権各5分の4以上
建物敷地売却・建物取壊し敷地売却区分所有者・議決権・敷地利用権の持分価格の各5分の4以上

⚠️ 改正前・改正後の決議要件の整理(CFP試験対策)
改正後も建替えの原則要件は5分の4のまま据え置かれています。耐震性不足等の客観的要件がある場合のみ4分の3に緩和される点を正確に押さえてください。「2026年改正で建替えが4分の3になった」という誤った理解にならないよう注意が必要です。

7. マンションに関する法律

(1)マンション管理適正化法

マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)は、管理業者・マンション管理士の制度を定め、マンション管理の適正化を推進するための法律です。

項目内容
マンション管理士管理組合の運営・規約の改定・大規模修繕の計画等に関するコンサルティングを行う国家資格者。名称独占資格(業務独占ではない)
管理業者(マンション管理業者)管理組合から管理事務を受託する業者。国土交通大臣への登録が必要(有効期間5年)
管理計画認定制度管理組合が一定水準以上の管理計画を策定し、地方公共団体の認定を受けることができる制度(2022年施行)
管理業者管理者方式管理会社が管理者(管理組合の理事長相当)として業務を担う方式。2026年4月改正施行後は、この方式の場合に宅建業者が重要事項説明でその旨を説明することが義務化(宅建業法施行規則改正)

(2)マンション建替え等の円滑化に関する法律(マンション再生法)

老朽化マンションの建替えや敷地売却等の実施を円滑化するための手続きを定めた法律です。2025年5月の改正(2026年4月施行)により「マンション再生法」に名称が変更され、新たな再生手法(一棟リノベ・建物取壊し敷地売却等)の手続きも規定されました。

制度内容
マンション敷地売却事業耐震性不足等の要件を満たすマンションについて、区分所有者・議決権・敷地利用権の各5分の4以上の多数決で建物と敷地を一括売却できる制度
容積率緩和特例耐震性不足等の要件を満たすマンションを建て替える場合、容積率を緩和する特例(100分の10以上100分の50以内の範囲で市町村長が許可)
マンション長寿命化促進税制一定の長寿命化工事を行ったマンションについて、翌年の固定資産税を減額する特例(2023年度〜2027年3月31日までの工事が対象。減額割合は1/6〜1/2)

8. 試験の重要ポイント

  • 専有部分は単独所有、共用部分は区分所有者全員の共有(持分は床面積割合)
  • 規約共用部分は登記が必要(未登記だと善意の第三者に対抗不可)
  • 敷地利用権は原則として専有部分と分離処分不可
  • 管理組合は区分所有者全員で構成(任意脱退不可)
  • 普通決議:区分所有者・議決権の各過半数
  • 特別決議(規約変更・共用部分の重大変更等):区分所有者・議決権の各4分の3以上
  • 建替え決議(原則):区分所有者・議決権の各5分の4以上
  • 集会の招集通知は会日の1週間前まで(建替え決議は2か月前まで
  • 令和7年(2025年)5月成立・令和8年(2026年)4月1日施行の改正:耐震性不足等の客観的事由がある場合は建替え要件が4分の3以上に緩和。新たな再生手法(建物更新・建物取壊し等)の導入。所在等不明区分所有者を裁判所決定で分母から除外可能に
  • 集会招集通知の改正後:1週間前(規約による短縮は不可・延長のみ可)に変更
  • マンション管理士は名称独占資格(業務独占なし)
  • 管理業者は国土交通大臣への登録が必要(有効期間5年
  • マンション長寿命化促進税制:一定の長寿命化工事実施後翌年の固定資産税を1/6〜1/2減額(2027年3月31日まで)

参考・出典

  • 法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00375.html
  • 国土交通省「マンション管理の適正化の推進に関する法律」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000008.html
  • 国土交通省「マンション建替え等の円滑化に関する法律」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000009.html
  • 国土交通省「マンション長寿命化促進税制」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000168.html

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。令和7年5月成立・令和8年(2026年)4月1日施行の改正区分所有法・マンション再生法等の最新情報を反映しています。制度は今後も改正されることがあります。実際のマンション管理・建替え等の手続きについては、弁護士・マンション管理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

タイトルとURLをコピーしました