1. 概要
山林所得とは、山林(立木)を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡することによって生じる所得です。山林は長期間にわたって育成されるという特殊性から、他の所得と合算せず申告分離課税が適用されます。また、最高50万円の特別控除や「5分5乗方式」による税額計算など、独自の課税ルールがあります。
CFP試験では出題頻度は高くないものの、山林所得の計算方法・5年以内の譲渡との区分・5分5乗方式・損益通算の制限は確実に押さえておくべきポイントです。
2. 所得の定義
所得税法第32条において、山林所得は次のとおり定義されています。
山林所得とは、山林の伐採または譲渡による所得をいう。ただし、山林をその取得の日以後5年以内に伐採しまたは譲渡することによる所得を除く。(所得税法第32条第1項)
山林所得金額 = 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最高50万円)
3. 山林所得に該当するもの・該当しないもの
山林所得に該当する主なもの
- 取得後5年を超えた山林(立木)を伐採して売却した場合の所得
- 取得後5年を超えた山林(立木)を立木のまま譲渡した場合の所得
山林所得に該当しない主なもの
- 取得後5年以内に伐採・譲渡した場合 → 事業所得または雑所得
- 山林を土地付きで譲渡した場合の土地部分 → 譲渡所得
- 伐採した木材を加工・販売する事業から生じる所得 → 事業所得
⚠️ 土地付き山林の譲渡は所得が分かれる
山林(立木)と土地をセットで譲渡した場合、立木部分は山林所得、土地部分は譲渡所得として、それぞれ別々に計算します。両者を合算せず、各所得区分のルールに従って申告します。
4. 総収入金額と必要経費
総収入金額
山林所得の総収入金額は、山林の譲渡対価(売却代金)が基本となります。なお、山林を伐採して自己の家屋の建築など家事のために消費した場合は、その消費したときの時価が総収入金額に算入されます。
必要経費
| 経費の種類 | 内容 |
|---|---|
| 取得費 | 植林費・苗木代・購入代金など、山林の取得にかかった費用 |
| 育成費 | 下刈り費・枝打ち費・間伐費など、山林の育成にかかった費用 |
| 管理費 | 山林の維持管理のために要した費用 |
| 譲渡費用 | 伐採費・運搬費・仲介手数料など、譲渡のために直接要した費用 |
📌 概算経費控除の特例
山林の取得費・育成費・管理費が不明な場合や実額が少ない場合、収入金額の50%相当額を必要経費とみなす概算経費控除を選択できます(租税特別措置法第30条)。
5. 特別控除額(最高50万円)
山林所得には、総収入金額から必要経費を差し引いた後の金額から、さらに最高50万円の特別控除が認められています。
| 収入-必要経費の金額 | 特別控除額 |
|---|---|
| 50万円以上 | 50万円(上限) |
| 50万円未満 | 収入-必要経費の金額(全額控除) |
6. 課税方法:5分5乗方式
山林所得は申告分離課税の対象ですが、税額の計算には「5分5乗方式」という特殊な計算方法が用いられます。山林は長年にわたって育成されるため、一時に多額の所得が発生することによる税負担の集中を緩和する趣旨です。
📌 5分5乗方式の計算手順
① 山林所得金額 × 1/5 を計算する(「5分」)
② ①の金額に対して通常の所得税率を適用して税額を計算する
③ ②の税額 × 5 を計算する(「5乗」)
④ ③が山林所得に対する所得税額となる
この方式により、山林所得を5年分に均等割りして税率を適用することで、累進課税による過重な税負担を防ぐことができます。
7. 損益通算の取り扱い
山林所得に損失(赤字)が生じた場合、原則として他の所得と損益通算することができません。山林所得の損失は、その年の他の所得から差し引くことができず、翌年以降への繰越しも認められていません。
⚠️ 山林所得の損失は損益通算不可
山林所得・譲渡所得・退職所得は、それぞれ他の所得との損益通算が制限または不可とされています。山林所得の損失は完全に切り捨てとなり、給与所得や事業所得と通算することはできません。
8. 計算例
【例①】山林所得金額の計算
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 山林の売却収入 | 800万円 | 取得後20年経過した立木を伐採・売却 |
| 取得費・育成費・管理費 | △ 300万円 | 植林費・下刈り費等の合計 |
| 譲渡費用 | △ 50万円 | 伐採費・運搬費・仲介手数料 |
| 必要経費合計 | △ 350万円 | |
| 収入-必要経費 | 450万円 | |
| 特別控除額 | △ 50万円 | 最高50万円 |
| 山林所得金額 | 400万円 |
【例②】5分5乗方式による税額計算
| 手順 | 金額 | 計算内容 |
|---|---|---|
| ① 山林所得金額 × 1/5 | 80万円 | 400万円 × 1/5 |
| ② 通常の所得税率を適用(仮に税率10%・控除97,500円の場合) | 70,250円 | 80万円 × 10% - 97,500円(※速算表による) |
| ③ ② × 5 | 351,250円 | 70,250円 × 5 |
| 山林所得に対する所得税額 | 351,250円 | 復興特別所得税は別途加算 |
【例③】概算経費控除を利用する場合
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 山林の売却収入 | 600万円 | |
| 概算経費(収入の50%) | △ 300万円 | 600万円 × 50% |
| 特別控除額 | △ 50万円 | 最高50万円 |
| 山林所得金額 | 250万円 |
9. 試験の重要ポイント
- 山林所得の計算式は「総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最高50万円)」
- 取得後5年以内の山林の伐採・譲渡は山林所得ではなく事業所得または雑所得
- 土地付き山林を譲渡した場合、立木部分は山林所得・土地部分は譲渡所得と区分される
- 取得費等が不明な場合は収入金額の50%相当額を概算経費として控除できる
- 課税方法は申告分離課税で、税額計算には5分5乗方式を使用する
- 5分5乗方式:山林所得の1/5に対して税率を適用し、算出税額を5倍にする
- 山林所得の損失は他の所得との損益通算不可(繰越しも不可)
参考・出典
- 国税庁「No.1480 山林所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1480.htm
- 国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm
- 国税庁「No.2250 損益通算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

