相続税の仕組みと課税財産

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概要

相続税は、亡くなった人(被相続人)から財産を受け継いだときにかかる税金です。課税される財産の範囲は民法上の相続財産だけではなく、「みなし相続財産」も含まれます。一方、一定の財産は非課税とされ、債務や葬式費用は課税財産から差し引くことができます。この記事では相続税の基本的な仕組みと、課税財産・非課税財産・債務控除の範囲を、CFP試験頻出の論点を中心に整理します。

相続税の基本的な仕組み

相続税とは

相続税は相続や遺贈によって財産を取得した個人に対して課される税で、贈与税とともに「資産の移転課税」として機能します。贈与税は相続税の補完税として位置づけられており、生前の財産移転にも課税することで相続税の回避を防いでいます。

相続税は遺産全体に一括して課税されるのではなく、各相続人等が実際に取得した財産(課税価格)をもとに計算されます。ただし税額の計算では、いったん全員が法定相続分で取得したと仮定して総額を算出し、実際の取得割合で按分するという独特の手順をとります(詳細は「相続税の計算・申告・納付」を参照)。

相続税の納税義務者

相続や遺贈で財産を取得した個人が納税義務者です。法定相続人に限らず、遺贈を受けた受遺者や特別縁故者も含まれます。また、相続放棄をした人でも、みなし相続財産(生命保険金等)を受け取った場合には相続税の納税義務が生じます。

課税割合の実態

平成27年(2015年)1月1日から基礎控除額が「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられ、課税対象となる相続が大幅に増加しました。財務省の公表によると令和5年分の相続税課税割合は亡くなられた方の約9.9%となっています。

課税財産の3区分

相続税における課税財産は「本来の相続財産」「みなし相続財産」「生前贈与加算財産・相続時精算課税適用財産」の3つに区分されます。

①本来の相続財産

被相続人が死亡時に所有していた財産のすべてが本来の相続財産です。プラスの財産とマイナスの財産(債務)があります。

課税対象となる主なプラスの財産は、現金・預貯金、土地・建物などの不動産、上場株式・投資信託などの有価証券、ゴルフ会員権・リゾート会員権、貸付金、書画骨董・美術品(換金性あり)、著作権・特許権などの知的財産権、事業用財産などです。

②みなし相続財産

民法上は被相続人の財産ではないものの、被相続人の死亡を原因として相続人等が受け取るため、相続税法上は相続・遺贈によって取得したとみなして課税される財産です(相続税法第3条)。

代表的なみなし相続財産として、被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金があります。保険料を誰が負担していたかによって適用される税目が異なる点に注意が必要です。被相続人が保険料を負担し、受取人が相続人の場合は相続税の対象です。受取人と保険料負担者が同一(相続人)の場合は所得税(一時所得)、保険料負担者・被保険者・受取人がすべて異なる場合は贈与税の対象となります。

死亡退職金・功労金も代表的なみなし相続財産です。死亡後3年以内に支給が確定したものが対象で、3年を超えて支給が確定したものは受取人の一時所得として所得税の対象となります。

みなし相続財産は民法上の相続財産ではないため、遺産分割協議の対象になりません。受取人固有の財産として直接受け取ることができます。また、相続放棄をしても受け取ることは可能ですが、非課税枠の適用は受けられなくなります。

みなし相続財産の非課税枠

生命保険金(死亡保険金)と死亡退職金には、遺族の生活保障のため、それぞれ次の非課税限度額が設けられています。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

この非課税枠は生命保険金・死亡退職金で各々別枠です(合算しません)。相続人以外(受遺者等)が受け取った場合は非課税枠の適用はありません。

非課税限度額の「法定相続人の数」は、相続放棄があっても放棄がなかったものとして数えます。また養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで算入できます。相続放棄した人が生命保険金を受け取った場合は、その人は法定相続人の数に含まれますが、非課税枠を使うことはできません(相続放棄により相続人の地位を失うため)。

③生前贈与加算財産・相続時精算課税適用財産

相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間内(令和8年12月31日以前の相続開始では3年以内、以後は段階的に最長7年まで延長)に被相続人から暦年課税で贈与を受けた財産は、相続税の課税価格に加算されます(生前贈与加算)。相続開始前3年超7年以内の贈与については合計100万円を加算しない緩和措置があります。

また、相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた財産は、特定贈与者の相続開始時に相続財産に加算して精算します(令和6年以後の贈与は年110万円の基礎控除分は加算不要)。

相続税がかからない非課税財産

次の財産は相続税が課税されません(相続税法第12条)。

  • 墓地・墓石・仏壇・仏具・神具など日常礼拝に使用するもの(ただし投資目的・骨董的価値のあるものは課税対象)
  • 宗教・慈善・学術その他公益目的の事業に使われることが確実な財産
  • 生命保険金のうち非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下の部分
  • 死亡退職金のうち非課税限度額(500万円×法定相続人の数)以下の部分
  • 心身障害者共済制度に基づく給付金を受ける権利

墓地・墓石・仏壇などは相続財産に含まれないため、生前に購入しておけば相続財産の圧縮効果があります。ただし、相続発生後に相続財産の現金で購入しても非課税扱いにはなりません。

債務控除・葬式費用控除

控除できる債務

被相続人が死亡時に現に存在した確実な債務を課税価格から差し引くことができます(相続税法第13条)。控除できる主な債務は次のとおりです。借入金・住宅ローン、未払金(医療費・固定資産税・所得税等の未払分)、連帯債務のうち負担分など確実と認められる債務です。

なお、相続人等の責任に基づく延滞税・加算税、被相続人の非違行為に基づく罰金等は控除できません。

葬式費用として控除できるもの・できないもの

葬式費用は被相続人の債務ではありませんが、相続開始によって必然的に生じる費用として課税価格から控除できます。控除できるのは相続人・包括受遺者です(制限納税義務者や特定受遺者は除く)。

控除できる葬式費用控除できない費用
通夜・告別式・火葬・埋葬・納骨にかかる費用香典返しの費用
お寺へのお布施・読経料・戒名料墓地・墓石の購入費・借入費用
死体の捜索・運搬にかかる費用初七日・四十九日・法事の費用(繰上げ初七日は除く)
仮葬式と本葬式の両方の費用遺体の解剖費用
死亡診断書の費用位牌・仏壇の購入費用

葬式費用は税額控除ではなく、課税価格(遺産額)から差し引く「課税価格の計算上の控除」です。相続税額から直接引くわけではない点に注意が必要です。

弔慰金の取り扱い

被相続人の死亡に伴い支払われる弔慰金は、社会通念上相当な範囲内のものは非課税とされています。業務上の死亡の場合は「死亡時の普通給与×3年分」まで、業務外の死亡の場合は「死亡時の普通給与×6か月分」までが非課税です。これを超える部分は死亡退職金とみなして相続税の課税対象となります。

課税財産と非課税財産の整理

区分主な内容備考
本来の相続財産(課税)現金・預貯金・不動産・有価証券・ゴルフ会員権・事業用資産等被相続人が所有していたすべての財産
みなし相続財産(課税)死亡保険金・死亡退職金(非課税限度額超過分)民法上の相続財産ではない。遺産分割の対象外
生前贈与加算(課税)相続開始前最長7年以内の暦年課税贈与財産3年超7年以内の分は合計100万円を加算除外
相続時精算課税(課税)精算課税の贈与財産(令和6年以後は基礎控除超過分)時効なし。全額を相続時に精算
非課税財産墓地・仏壇・生命保険金の非課税枠・退職金の非課税枠等相続税法第12条
債務・葬式費用(控除)借入金・未払金・葬儀費用等課税価格から差し引く(税額控除ではない)

試験の重要ポイント

みなし相続財産の頻出論点

  • 生命保険金の課税区分は「誰が保険料を負担したか」で決まる。被相続人が負担 → 相続税。受取人と保険料負担者が同一 → 所得税(一時所得)。負担者・被保険者・受取人が全員異なる → 贈与税
  • 死亡退職金は「死亡後3年以内に支給が確定」したものがみなし相続財産。3年超は受取人の所得税(一時所得)
  • 生命保険金・死亡退職金の非課税枠はそれぞれ独立した別枠(500万円×法定相続人の数)
  • 相続放棄をした人がみなし相続財産を受け取った場合:受け取ることはできるが非課税枠は使えない

非課税財産・債務控除の頻出論点

  • 墓地・仏壇は非課税財産。ただし被相続人の死亡後に相続財産から購入しても非課税扱いにはならない(生前購入がポイント)
  • 香典は非課税(相続税・贈与税ともに課税なし)。ただし香典返しの費用は葬式費用として控除できない
  • 葬式費用の控除は「税額控除」ではなく「課税価格の計算上の控除」。税額から直接引くのではない
  • 初七日・法事の費用は葬式費用に含まれない(繰上げ初七日の費用は含めることができる)
  • 墓地・墓石・仏壇の購入費用は葬式費用として控除できない

参考・出典

本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

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