1. 概要
個人事業税(地方税)を理解するには、まず「住民税」と「事業税」がそれぞれ個人(自然人)向けと法人向けに別々に存在することを整理しておく必要があります。
| 税の種類 | 納税者 | 税の名称 | 課税主体 |
|---|---|---|---|
| 住民税 | 個人(自然人) | 個人住民税(道府県民税+市町村民税) | 都道府県・市区町村 |
| 法人 | 法人住民税(道府県民税+市町村民税) | 都道府県・市区町村 | |
| 事業税 | 個人(自然人) | 個人事業税 ←本記事 | 都道府県 |
| 法人 | 法人事業税 | 都道府県 |
つまり個人事業税は、個人(自然人)が営む事業にのみ課される税です。法人(株式会社・合同会社など)は対象外で、法人には別途「法人事業税」が課されます。
個人事業税(地方税)は、地方税法で定められた業種(法定業種)を営む個人事業主が都道府県に納める税です。事業を行うにあたって行政サービスを受けていることへの対価として課税されます。法定業種は70種類あり、第1種・第2種・第3種事業に分類されます。令和7年度税制改正において、個人事業税の税率・業種・事業主控除額に変更はありません。
📌 個人事業税の基本
・課税主体:都道府県(地方税)
・課税対象:法定業種(70種類)を営む個人事業主
・課税基準:前年の事業所得・不動産所得
・事業主控除:年額290万円(所得がこれ以下なら課税なし)
・税率:業種により3%・4%・5%
2. 課税対象となる業種と税率
個人事業税の対象となる法定業種は70種類で、第1種・第2種・第3種事業に分類されます。
| 事業区分 | 税率 | 業種数 | 主な業種 |
|---|---|---|---|
| 第1種事業 | 5% | 37業種 | 物品販売業・製造業・請負業・不動産貸付業・駐車場業・広告業・運送業・飲食店業・理容業・美容業 など |
| 第2種事業 | 4% | 3業種 | 畜産業・水産業・薪炭製造業 |
| 第3種事業 | 5% | 30業種 | 医業・歯科医業・弁護士業・税理士業・公認会計士業・司法書士業・行政書士業・コンサルタント業・設計業・不動産鑑定業 など |
| 第3種事業(軽減税率) | 3% | (第3種の一部) | あん摩・マッサージ・指圧業、はり業、きゅう業、柔道整復業、装蹄師業 |
⚠️ 個人事業税が課税されない主な業種
農業・林業・漁業(第2種の水産業を除く)、ライター・カメラマン(実態による)、一部のフリーランスなど、法定業種に該当しない場合は課税されません。ただし、同じ業種でも事業実態によって課税・非課税の判断が異なる場合があります。所轄の都道府県税事務所に確認することを推奨します。
3. 個人事業税の計算方法
📌 個人事業税の計算式
(事業所得・不動産所得 + 青色申告特別控除額 + 所得税の事業専従者給与額 - 個人事業税の事業専従者給与(控除)額 - 損失の繰越控除等 - 事業主控除290万円)× 税率 = 税額
所得税の計算と異なる点が3つあります。
①青色申告特別控除は適用されない
所得税では最大65万円の青色申告特別控除が適用されますが、個人事業税では青色申告特別控除は適用されません。そのため、所得税の確定申告書に記載された事業所得に青色申告特別控除額を加算して課税所得を計算します。
②事業専従者給与(控除)額の取り扱い
所得税における事業専従者給与(控除)額と個人事業税のそれは異なります。
| 区分 | 青色申告の場合 | 白色申告の場合 |
|---|---|---|
| 個人事業税の事業専従者給与(控除)額 | 実際に支払った給与額 | 配偶者:86万円、その他:50万円(事業専従者控除前の所得÷(専従者数+1)と比べ低い方) |
③事業主控除(年額290万円)
すべての個人事業主に一律で年額290万円の事業主控除が適用されます。事業所得が290万円以下であれば個人事業税は課税されません。年の途中で開業・廃業した場合は月割計算となります。
📌 月割計算の例
4月1日に開業した場合(4月〜12月の9か月):290万円 × 9/12 = 217.5万円が事業主控除額となります。
4. 各種控除
| 控除の種類 | 内容 |
|---|---|
| 事業主控除 | 年額290万円(月割あり)。すべての個人事業主に適用 |
| 損失の繰越控除 | 青色申告者のみ。損失発生年以降連続して申告している場合、翌年以降3年間繰越控除が可能 |
| 被災事業用資産の損失の繰越控除 | 震災・風水害・火災等による事業用資産の損失を翌年以降3年間(特定非常災害は5年間)繰越控除 |
| 事業用資産の譲渡損失控除 | 事業用資産を使用しなくなった日の翌日から1年以内に譲渡した損失を控除(青色申告者は3年間繰越可) |
5. 申告と納付
申告
所得税の確定申告書または住民税の申告書を提出した場合は、原則として個人事業税の申告書を別途提出する必要はありません。ただし、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄は必ず記載します。
年の途中で廃業した場合は、廃業の日から1か月以内(死亡による廃業は4か月以内)に申告が必要です。
納付
都道府県から送付される納税通知書(納付書)により、原則として年2回に分けて納付します。
| 納期 | 納期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 第1期 | 8月31日 | 8月上旬に納税通知書が送付される |
| 第2期 | 11月30日 | 税額が1万円以下の場合は第1期に全額納付 |
📌 納付先は都道府県税事務所
個人事業税は事務所・事業所が所在する都道府県に納めます。複数の都道府県に事務所がある場合は、各事務所の従業員数に応じて按分して課税されます。
6. 所得税・住民税との比較
| 項目 | 所得税 | 個人住民税 | 個人事業税 |
|---|---|---|---|
| 税の種類 | 国税 | 地方税(都道府県・市区町村) | 地方税(都道府県) |
| 課税対象者 | すべての所得者 | すべての所得者 | 法定業種を営む個人事業主のみ |
| 税率 | 5〜45%(累進) | 一律10% | 3%・4%・5%(業種別) |
| 基礎控除相当 | 58万円(令和7年分) | 43万円 | 事業主控除290万円 |
| 青色申告特別控除 | 最大65万円(適用あり) | 最大65万円(適用あり) | 適用なし |
| 申告・納付時期 | 翌年2〜3月 | 6月〜(特別徴収) | 8月・11月 |
7. 試験の重要ポイント
- 個人事業税は都道府県税。法定業種(70種類)を営む個人事業主が対象
- 税率は業種により異なる:第1種・第3種の大部分は5%、第2種は4%、第3種の一部(あん摩・マッサージ等)は3%
- 事業主控除は年額290万円。事業所得が290万円以下なら課税されない。年途中の開業・廃業は月割計算
- 青色申告特別控除は個人事業税では適用されない。所得税の事業所得に青色申告特別控除額を加算して課税所得を計算する
- 損失の繰越控除は青色申告者のみ3年間繰越可能
- 所得税の確定申告書を提出した場合は個人事業税の申告書は不要。ただし確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄の記載は必須
- 納付は原則年2回:8月31日(第1期)・11月30日(第2期)。税額1万円以下は8月に全額
- 農業・林業は法定業種に該当しないため、原則として個人事業税は課税されない
参考・出典
- 総務省「個人事業税」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_07.html
- 東京都主税局「個人事業税」https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shurui/kojin/jigyou.html
- 地方税法第72条の2(法定業種の規定)
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および都道府県税事務所の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

