1. 概要
法人が契約者として生命保険に加入した場合、保険料の支払い・保険金の受取り・解約・名義変更など各場面で法人税の処理が発生します。CFP試験では、定期保険・終身保険・養老保険・第3分野保険・個人年金保険・名義変更した保険契約の経理処理(仕訳)と損金算入ルールが幅広く出題されます。特に令和元年(2019年)7月8日以後の契約に適用される定期保険の新ルール(最高解約返戻率による区分)は試験の最重要ポイントです。
2. 法人契約の生命保険と経理処理の基本
経理処理の大原則
法人が生命保険料を支払った場合の経理処理は、①保険の種類、②受取人の設定(法人か遺族か)、③最高解約返戻率の水準の3つによって決まります。保険金・解約返戻金を受け取った場合は、資産計上していた保険料積立金等を取り崩し、差額を雑収入(益金)または雑損失(損金)として処理します。
| 勘定科目 | 内容 |
|---|---|
| 保険料積立金(資産) | 終身保険など解約返戻金がある保険の資産計上部分 |
| 前払保険料(資産) | 定期保険等で一定期間資産計上が必要な保険料の積立部分 |
| 支払保険料(損金) | 当期に損金算入できる保険料 |
| 雑収入(益金) | 保険金・解約返戻金受取時に資産計上額を超えた部分 |
| 雑損失(損金) | 解約返戻金受取時に資産計上額を下回った部分 |
3. 定期保険の税務(仕訳)
令和元年(2019年)改正の概要
令和元年7月8日以後に契約した保険期間3年以上の定期保険または第三分野保険で、最高解約返戻率が50%超のものは、最高解約返戻率の水準に応じて保険料の一部を資産計上しなければなりません。
📌 最高解約返戻率とは
保険期間を通じて「解約返戻金 ÷ 払込保険料累計」の値が最も高くなる期間の割合。この割合によって資産計上のルールが変わります。
最高解約返戻率による区分と経理処理(令和元年7月8日以後契約)
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上割合 | 取崩し期間 |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | なし | 全額損金算入 | ― |
| 50%超〜70%以下(※年換算保険料30万円超の場合) | 保険期間の前半40%の期間 | 40%を資産計上・60%を損金算入 | 残りの期間(後半60%)で均等取崩し |
| 70%超〜85%以下 | 保険期間の前半40%の期間 | 60%を資産計上・40%を損金算入 | 残りの期間で均等取崩し |
| 85%超 | 保険期間開始から最高解約返戻率となる期間まで | 90%を資産計上・10%を損金算入 | 解約返戻金が最高額となった後、残期間で均等取崩し |
⚠️ 30万円特例(全額損金の例外)
最高解約返戻率が70%以下で、かつ被保険者1人あたりの年換算保険料相当額の合計が30万円以下の場合は、資産計上ルールの対象外となり全額損金算入できます(令和元年7月8日以後契約分)。
定期保険の仕訳例(最高解約返戻率70%超〜85%以下の場合)
年間保険料100万円、最高解約返戻率80%、保険期間20年の場合(資産計上期間:前半8年、損金算入40%・資産計上60%)
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 保険料支払時(資産計上期間中) | 前払保険料 600,000 円 支払保険料 400,000 円 | 現金・預金 1,000,000 円 |
| 取崩し期間(資産計上期間経過後) | 支払保険料 1,480,000 円 | 現金・預金 1,000,000 円 前払保険料 480,000 円(均等取崩し) |
| 死亡保険金受取時(法人受取・前払保険料残高300万円) | 現金・預金 ×××万円 | 前払保険料 3,000,000 円 雑収入 ×××万円 |
| 解約返戻金受取時(前払保険料残高500万円・解約返戻金400万円) | 現金・預金 4,000,000 円 雑損失 1,000,000 円 | 前払保険料 5,000,000 円 |
4. 終身保険の税務(仕訳)
終身保険の経理処理の原則
終身保険は解約返戻金が積み上がる保険であるため、法人が受取人の場合は保険料の全額を資産計上(保険料積立金)します。遺族が受取人の場合は全額損金算入(給与)となります。
| 受取人の設定 | 保険料の経理処理 |
|---|---|
| 死亡保険金・解約返戻金ともに法人 | 保険料の全額を保険料積立金(資産)に計上 |
| 死亡保険金受取人が役員・従業員の遺族 | 保険料の全額を給与(損金)として処理。被保険者に課税 |
終身保険の仕訳例
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 保険料支払時(法人受取) | 保険料積立金 ×××円 | 現金・預金 ×××円 |
| 死亡保険金受取時(法人受取・積立金800万円・保険金1,000万円) | 現金・預金 10,000,000 円 | 保険料積立金 8,000,000 円 雑収入 2,000,000 円 |
| 解約返戻金受取時(積立金800万円・解約返戻金700万円) | 現金・預金 7,000,000 円 雑損失 1,000,000 円 | 保険料積立金 8,000,000 円 |
| 役員退職時に名義変更で退職金支給(解約返戻金相当額1,000万円・積立金800万円) | 退職金 10,000,000 円 | 保険料積立金 8,000,000 円 雑収入 2,000,000 円 |
5. 養老保険の税務(仕訳)
受取人の組み合わせによる経理処理
| 死亡保険金受取人 | 満期保険金受取人 | 保険料の経理処理 |
|---|---|---|
| 法人 | 法人 | 全額保険料積立金(資産計上) |
| 役員・従業員の遺族 | 法人 | 1/2を福利厚生費(損金)、1/2を保険料積立金(資産計上)(ハーフタックスプラン) |
| 役員・従業員の遺族 | 役員・従業員本人 | 全額給与(損金)として処理。被保険者に課税 |
養老保険(ハーフタックスプラン)の仕訳例
年間保険料100万円、死亡保険金受取人=遺族・満期保険金受取人=法人の場合
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 保険料支払時 | 福利厚生費 500,000 円 保険料積立金 500,000 円 | 現金・預金 1,000,000 円 |
| 満期保険金受取時(積立金累計500万円・満期金600万円) | 現金・預金 6,000,000 円 | 保険料積立金 5,000,000 円 雑収入 1,000,000 円 |
| 被保険者死亡・遺族が死亡保険金受取(法人側の処理) | (法人には保険金が入らないため処理なし)保険料積立金を取崩し損金算入 | 保険料積立金 ×××円 |
6. 第3分野保険の税務(仕訳)
医療保険・がん保険・就業不能保険等の第三分野保険は、定期保険と同様に令和元年改正の最高解約返戻率による区分が適用されます(保険期間3年以上・最高解約返戻率50%超の場合)。
| 契約形態・受取人 | 経理処理 |
|---|---|
| 法人受取(保険金受取人=法人) | 最高解約返戻率に応じた区分で定期保険と同様に処理 |
| 役員・従業員の遺族受取 | 定期保険と同様に処理(損金算入) |
| 保険期間が終身の第三分野保険 | 計算上の保険期間=契約日〜被保険者が116歳に達する日まで |
7. 個人年金保険の税務(仕訳)
法人が契約する個人年金保険の経理処理は、年金受取人によって異なります。
| 年金受取人 | 保険料の経理処理 |
|---|---|
| 法人 | 保険料の全額を保険料積立金(資産計上) |
| 役員・従業員本人 | 保険料の全額を給与(損金)として処理。被保険者に課税 |
個人年金保険の仕訳例(法人受取)
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 保険料支払時 | 保険料積立金 ×××円 | 現金・預金 ×××円 |
| 年金受取時(年金100万円・積立金取崩分80万円) | 現金・預金 1,000,000 円 | 保険料積立金 800,000 円 雑収入 200,000 円 |
| 従業員に退職金として年金払いで支払う場合 | 退職給付費用 ×××円 | 現金・預金 ×××円 |
8. 名義変更した保険契約の税務(仕訳)
名義変更の基本的な考え方
法人が役員退職時などに保険契約の契約者を法人から個人(役員等)に変更(名義変更)することがあります。この場合、名義変更時の評価額(原則として解約返戻金相当額)が退職金の一部として損金算入されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価の原則 | 名義変更時の解約返戻金相当額で評価(現金の授受はない) |
| 令和元年7月8日以後の契約の特例 | 名義変更時の解約返戻金額が資産計上額の70%未満の場合は資産計上額で評価 |
| 法人側の経理処理 | 評価額を退職金として損金算入。資産計上額との差額を雑収入または雑損失に計上 |
| 個人側の課税 | 名義変更で取得した保険は退職所得として課税(退職所得控除の適用あり) |
名義変更の仕訳例(保険料積立金800万円・解約返戻金1,000万円で名義変更)
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 退職金として現物支給(名義変更) | 退職金 10,000,000 円 | 保険料積立金 8,000,000 円 雑収入 2,000,000 円 |
| 源泉徴収税額を控除して支払う場合 | 退職金 10,000,000 円 | 保険料積立金 8,000,000 円 雑収入 2,000,000 円 (源泉徴収額は現金支給分との相殺で処理) |
⚠️ 名義変更プランの規制(令和3年7月1日以後)
令和元年7月8日以後に締結した最高解約返戻率50%超の定期保険等を令和3年7月1日以後に名義変更した場合、評価額の算定方法が変更されています。解約返戻金が資産計上額の70%未満の場合は資産計上額で評価するため、かつての「低解約返戻期間中に名義変更する節税スキーム」は封じられています。
9. 各保険の経理処理まとめ
| 保険の種類 | 受取人 | 保険料の経理処理(原則) |
|---|---|---|
| 定期保険(最高解約返戻率50%以下) | 法人または遺族 | 全額損金算入 |
| 定期保険(最高解約返戻率50%超) | 法人または遺族 | 最高解約返戻率の区分に応じて一部資産計上・一部損金 |
| 終身保険 | 法人 | 全額保険料積立金(資産計上) |
| 終身保険 | 役員・従業員の遺族 | 全額給与(損金)・被保険者に課税 |
| 養老保険(ハーフタックスプラン) | 死亡=遺族・満期=法人 | 1/2 福利厚生費(損金)・1/2 保険料積立金(資産) |
| 第三分野保険 | 法人または遺族 | 定期保険と同様(最高解約返戻率による区分適用) |
| 個人年金保険 | 法人 | 全額保険料積立金(資産計上) |
| 個人年金保険 | 役員・従業員本人 | 全額給与(損金)・被保険者に課税 |
10. 試験の重要ポイント
- 令和元年7月8日以後の定期保険・第三分野保険(保険期間3年以上)は最高解約返戻率で4区分に分けて経理処理
- 最高解約返戻率50%以下→全額損金。50%超70%以下(年換算30万円超)→40%資産計上・60%損金
- 最高解約返戻率70%超85%以下→60%資産計上・40%損金。85%超→90%資産計上・10%損金
- 30万円特例:最高解約返戻率70%以下かつ年換算保険料30万円以下→全額損金算入
- 終身保険(法人受取)→全額資産計上。死亡・解約時に積立金と受取額の差額を雑収入・雑損失で処理
- 養老保険(死亡=遺族・満期=法人)→保険料の1/2を福利厚生費(損金)・1/2を資産計上
- 個人年金保険(法人受取)→全額資産計上。年金受取人が役員・従業員本人→全額給与
- 名義変更の評価は原則解約返戻金相当額。令和3年7月1日以後の規制強化で解約返戻金が資産計上額の70%未満の場合は資産計上額で評価
- 保険期間が終身の第三分野保険の計算上の保険期間:契約日〜被保険者が116歳になる日まで
参考・出典
- 国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm
- 国税庁「No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364-2.htm
- 国税庁「法人税基本通達9-3-4〜9-3-7の2(保険料等)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
- 国税庁「所得税基本通達36-37(保険契約等に関する権利の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/07.htm
本記事は令和7年(2025年)時点の法令および制度に基づき作成しています。税制・保険法は改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

