1. 概要
CFP試験「リスクと保険」の損害保険分野では、主な損害保険商品の補償内容・特徴・支払限度額を正確に理解することが求められます。本記事では、火災保険・地震保険・自動車保険(自賠責・任意)・傷害保険・賠償責任保険の5分野について、CFP試験で頻出のポイントを中心に解説します。
2. 火災保険
補償の対象と主な補償内容
火災保険は、住宅(建物・家財)をさまざまな損害から補償する保険です。「建物」と「家財」はそれぞれ別に契約します。
| 補償の種類 | 主な補償内容 |
|---|---|
| 火災・落雷・爆発 | 火災、落雷、ガス漏れ等による爆発・破裂 |
| 風災・ひょう災・雪災 | 台風・竜巻・暴風による損害、雹・雪の重みによる損害 |
| 水災 | 洪水・高潮・土砂崩れ等による損害(任意で付帯) |
| 盗難 | 空き巣・強盗による建物・家財の損害 |
| 水濡れ・破損・汚損 | 給排水設備の事故による水濡れ、偶発的な物体の飛来・落下等 |
⚠️ 火災保険で補償されない主な損害
①地震・噴火・津波を原因とする損害(→地震保険で対応)
②地震を原因とする火災の延焼・拡大
③故意または重大な過失による損害
④自然の消耗・劣化
火災保険の主要ポイント(試験頻出)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険金額の評価 | 再調達価額(同等のものを新たに取得するのに必要な金額)が基本。時価額(再調達価額−経年劣化分)では保険金が不足するため注意 |
| 保険期間 | 最長5年(2022年10月以降の改定で10年超の長期契約は廃止) |
| 水災料率の細分化 | 2024年10月改定より、水災リスクが市区町村ごとに5区分(1等地〜5等地)に細分化。リスクが低い地域は保険料が安くなり、高い地域では高くなる |
| 失火の責任 | 「失火ノ責任ニ関スル法律」により、失火者は重大な過失がない限り隣家への損害賠償責任を負わない。もらい火の被害者は隣家に賠償請求できないため、自分で火災保険に加入することが重要 |
📌 2024年10月の火災保険料率改定
損害保険料率算出機構が2023年6月に参考純率を全国平均で約13%引き上げ、2024年10月から各損保会社の保険料に反映されました。自然災害(台風・豪雨等)の頻発による保険金支払い増加が主な要因です。
3. 地震保険
地震保険の基本的な仕組み
地震保険は「地震保険に関する法律」に基づく公共性の高い保険で、民間損害保険会社と政府が共同で保険責任を負う官民一体の制度です。いずれの損害保険会社で加入しても、補償内容と保険料は同一です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補償の対象 | 地震・噴火・これらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による建物・家財の損害 |
| 契約方法 | 火災保険に付帯する形でのみ加入可(地震保険単独では加入不可)。火災保険の保険期間の中途からでも加入可能 |
| 保険金額 | 火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で設定。建物は最高5,000万円、家財は最高1,000万円 |
| 損害認定の区分 | 全損・大半損・小半損・一部損の4区分 |
損害区分と保険金の支払割合
| 損害区分 | 認定基準(主要構造部の損害額の割合等) | 保険金の支払割合 |
|---|---|---|
| 全損 | 時価額の50%以上、または延床面積の70%以上焼失・流失 | 地震保険金額の100% |
| 大半損 | 時価額の40%以上50%未満、または延床面積50%以上70%未満 | 地震保険金額の60% |
| 小半損 | 時価額の20%以上40%未満、または延床面積20%以上50%未満 | 地震保険金額の30% |
| 一部損 | 時価額の3%以上20%未満、または床上浸水・地盤面より45cm超の浸水 | 地震保険金額の5% |
⚠️ 地震保険の重要事項
①一部損に至らない損害は保険金が支払われない
②付属物(門・塀・エレベーター・給排水設備等)のみの損害は支払対象外
③地震等発生日の翌日から10日を経過した後に生じた損害は対象外
④建物と家財はそれぞれ別に加入が必要(建物のみ加入しても家財は補償されない)
地震保険料の割引制度
| 割引区分 | 割引率 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 免震建築物割引 | 50% | 住宅性能評価の免震等級取得 |
| 耐震等級割引 | 耐震等級3:50%、等級2:30%、等級1:10% | 住宅性能評価等で耐震等級認定 |
| 耐震診断割引 | 10% | 地方公共団体等の耐震診断基準適合 |
| 建築年割引 | 10% | 昭和56年6月1日以降に新築(新耐震基準) |
4. 自動車保険
自賠責保険(強制保険)
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は「自動車損害賠償保障法」に基づき、すべての自動車・バイク・原動機付自転車に加入が義務付けられた強制保険です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補償対象 | 対人賠償のみ(対物・車両・自分自身のケガは対象外) |
| 支払限度額 | 被害者1名あたり:傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害最高4,000万円(常時介護を要する場合) |
| 被害者の過失相殺 | 被害者側の過失は原則として過失相殺されない(7割未満の過失は減額なし) |
| 保険料 | 損害保険料率算出機構が算出した基準料率を全社が使用(各社同額) |
| 無加入の罰則 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金、違反点数6点(免許停止) |
任意の自動車保険
任意の自動車保険は、自賠責保険では補えないリスクをカバーする保険です。対人賠償・対物賠償を必須補償として、人身傷害・車両保険等を組み合わせます。
| 補償の種類 | 内容 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 対人賠償責任保険 | 事故で他人を死傷させた場合の自賠責保険超過分を補償 | 無制限設定が一般的。無免許・酒気帯び運転でも支払われる。本人・配偶者・同居の親族は補償対象外 |
| 対物賠償責任保険 | 事故で他人の財物(車・建物・公共物等)を損壊した場合を補償 | 無制限設定が一般的。相手方財物の時価を超える損害は原則対象外 |
| 人身傷害保険 | 契約車両搭乗中のケガ・死亡・後遺障害を実損払いで補償 | 過失割合にかかわらず自分の損害額全額が支払われる。示談を待たずに支払い可 |
| 搭乗者傷害保険 | 搭乗中の事故によるケガを定額払いで補償 | 過失割合に関係なく定額支払い。人身傷害との違いは定額払い |
| 車両保険 | 自分の車両の損害を補償 | 一般タイプ(単独事故・当て逃げも補償)とエコノミータイプ(相手のある事故のみ)の2種類。地震・噴火・津波は原則対象外 |
| 無保険車傷害保険 | 相手が無保険や当て逃げなど、十分な賠償が受けられない場合に補償 | 死亡・後遺障害が補償対象 |
📌 自賠責保険と任意保険の関係
任意保険の対人賠償は、自賠責保険の支払限度額を超える部分に対して支払われます(自賠責保険の上乗せ)。一つの事故で両方に請求する場合でも、被害者の損害額が上限となるため二重取りはできません。
5. 傷害保険
傷害保険の基本
傷害保険は、急激・偶然・外来の事故(3要件)によるケガ(傷害)を補償する保険です。生命保険の第3分野と重なる部分がありますが、損害保険の傷害保険は保険期間が短期(1年以内が多い)で、定額払いが基本です。
傷害保険の種類と特徴
| 種類 | 補償の範囲 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 普通傷害保険 | 日本国内外を問わず、日常生活全般のケガ(オール・リスク型) | 職種・職業によって保険料が異なる。細菌性食中毒・地震等は補償対象外 |
| 家族傷害保険 | 普通傷害保険と同じ範囲 | 本人+配偶者+生計を一にする同居の親族+別居の未婚の子が被保険者。子の数が増えても保険料は変わらない |
| 交通事故傷害保険 | 交通事故(自動車・自転車・電車等)によるケガに限定 | 普通傷害保険より保険料が低い。歩行中の事故も対象 |
| 国内旅行傷害保険 | 自宅出発〜帰宅までの国内旅行中のケガ | 細菌性食中毒も補償対象。地震・噴火・津波は対象外 |
| 海外旅行傷害保険 | 自宅出発〜帰宅までの海外旅行中のケガ・疾病 | 疾病死亡・治療費も補償対象(国内旅行保険にはない)。地震・噴火・津波も補償対象。携行品損害・賠償責任・救援費用も補償 |
⚠️ 国内旅行保険と海外旅行保険の重要な違い
①国内旅行保険:疾病死亡・治療費は補償対象外。地震・噴火・津波は対象外
②海外旅行保険:疾病死亡・治療費が補償対象。地震・噴火・津波も対象
→海外旅行保険のほうが補償範囲が大きい点が試験頻出
6. 賠償責任保険
賠償責任保険は、偶然の事故によって第三者に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険です。個人向けから法人向けまで種類があります。
| 種類 | 内容 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 個人賠償責任保険 | 日常生活で他人を死傷させたり、他人の財物を損壊した場合の賠償責任を補償 | 自転車事故・ペットによる損害等も補償対象。家族全員が補償対象になるタイプが多い。火災保険・傷害保険・自動車保険の特約として付帯されることが多い |
| 施設所有者・管理者賠償責任保険 | 施設の欠陥や管理の不備により第三者に損害を与えた場合の賠償責任 | 飲食店・商業施設・マンション管理組合等が加入 |
| 生産物賠償責任保険(PL保険) | 製造・販売した製品の欠陥により第三者に損害を与えた場合の賠償責任 | 製造業・食品メーカー等が加入 |
| 請負業者賠償責任保険 | 工事・作業中に第三者に損害を与えた場合の賠償責任 | 建設業・工事業者等が加入 |
個人賠償責任保険の重要ポイント(試験頻出)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険金の対象 | 法律上の損害賠償責任を負った場合(示談交渉サービスが付帯される商品が多い) |
| 補償される主な事故 | 自転車事故で歩行者を死傷、飼い犬が他人を噛んだ、店の商品を誤って壊した、子どもがボールで他人の窓を割った等 |
| 補償されない主な場合 | 自動車・バイクによる事故(→自動車保険で対応)、業務上の事故、故意による損害 |
| 重複加入 | 火災保険・傷害保険・自動車保険の特約に同種の補償がある場合は重複に注意 |
7. 試験の重要ポイント
- 火災保険:地震・噴火・津波は補償対象外(地震保険で対応)。失火ノ責任ニ関スル法律により重過失がない限り隣家への賠償責任なし
- 火災保険の最長保険期間は5年。2024年10月から水災料率が5区分に細分化
- 地震保険は火災保険への付帯が必須(単独加入不可)。保険金額は火災保険の30〜50%、建物上限5,000万円・家財上限1,000万円
- 地震保険の損害認定は全損(100%)・大半損(60%)・小半損(30%)・一部損(5%)の4区分
- 自賠責保険の支払限度額:傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害最高4,000万円(被害者1名あたり)。対人賠償のみで対物は対象外
- 人身傷害保険は実損払い・過失割合に関係なく支払い。搭乗者傷害保険は定額払い
- 国内旅行保険:疾病死亡・治療費は対象外、地震・噴火・津波も対象外。海外旅行保険:疾病も対象、地震・噴火・津波も補償
- 普通傷害保険・交通事故傷害保険:細菌性食中毒・地震等は対象外。国内旅行保険:細菌性食中毒は対象(傷害保険の中で例外的に補償)
参考・出典
- 財務省「地震保険制度の概要」https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問56 火災保険」https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/q056.html
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問7・8 任意の自動車保険」https://soudanguide.sonpo.or.jp/car/q007.html
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問72 傷害保険」https://soudanguide.sonpo.or.jp/body/q072.html
- 損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2024年度)」https://www.giroj.or.jp/publication/outline_k/k_2024.pdf
本記事は令和7年(2025年)時点の法令および制度に基づき作成しています。保険業法・保険法は改正されることがあります。実際の保険契約・手続きについては、最新の法令および金融庁の情報を確認するとともに、専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

