概要
本記事では、日本の公的医療保険制度(国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度)と介護保険制度を解説します。退職後の医療保険の選択肢や、高齢期の介護サービス・利用者負担のしくみは、ライフプランニングにおいて顧客への説明機会が多いテーマです。CFP試験では各制度の被保険者区分・給付内容・自己負担割合・保険料のしくみが繰り返し出題されます。
医療保険と介護保険は連動する部分も多く、特に退職後・高齢期の制度移行(任意継続・国民健康保険・後期高齢者医療)の流れと、介護保険の要介護認定から介護サービス利用までの流れを整理しておくことが重要です。
医療保険制度の概要
日本は「国民皆保険」の原則のもと、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入しています。医療保険は大きく「被用者保険(職域保険)」「国民健康保険(地域保険)」「後期高齢者医療制度」の3つに分類されます。
| 制度 | 主な対象者 | 保険者 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 主に中小企業の会社員・公務員以外の被用者とその扶養家族 | 全国健康保険協会 |
| 健康保険(組合健保) | 主に大企業の会社員とその扶養家族 | 健康保険組合 |
| 共済組合 | 国家公務員・地方公務員・私立学校教職員とその扶養家族 | 各共済組合 |
| 国民健康保険 | 自営業者・農業従事者・無職者・フリーランス等 | 市区町村・国民健康保険組合 |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上(一定の障害がある65歳以上も含む) | 後期高齢者医療広域連合 |
国民健康保険
国民健康保険の概要
国民健康保険(国保)は、会社員などの被用者保険や後期高齢者医療制度に加入していない人を対象とした医療保険です。自営業者・農業従事者・フリーランス・無職者などが加入します。
- 保険者:市区町村または国民健康保険組合
- 保険料:所得・世帯人数・資産等をもとに市区町村ごとに算定。被用者保険と異なり、事業主負担がなく全額本人負担となる
- 自己負担割合:原則3割(小学校就学前は2割、70〜74歳は2割、現役並み所得者は3割)
- 扶養の概念なし:被用者保険と異なり、家族全員がそれぞれ被保険者として保険料を負担する
健康保険(協会けんぽと組合健保)
健康保険の概要と被保険者
健康保険は、会社員(被用者)とその扶養家族を対象とした医療保険です。被保険者(本人)だけでなく、生計を同じくする一定の家族も被扶養者として保険給付を受けることができます(扶養家族の保険料負担なし)。
健康保険からの給付と保険料
健康保険の主な給付は以下の通りです。
| 給付の種類 | 内容 |
|---|---|
| 療養の給付 | 病気・けがの診察・治療・薬剤等の費用の一部負担(自己負担3割) |
| 高額療養費 | 1か月の自己負担額が限度額(所得に応じて異なる)を超えた場合に超過分を払い戻す |
| 傷病手当金 | 業務外の病気・けがで連続3日休業後、4日目から休業1日につき標準報酬日額の3分の2を最長1年6か月支給 |
| 出産手当金 | 出産のため休業した場合、産前42日・産後56日分を標準報酬日額の3分の2支給 |
| 出産育児一時金 | 被保険者・被扶養者が出産した場合に50万円(産科医療補償制度対象外の場合は48.8万円)支給 |
| 埋葬料 | 被保険者が死亡した場合に5万円支給 |
保険料は標準報酬月額をもとに算定され、事業主と被保険者が原則折半で負担します。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに異なります。
傷病手当金は「業務外の病気・けが」が対象です。業務上の病気・けがは労災保険の対象となり、健康保険からは支給されません。試験でこの区別が問われることがあります。
退職後の医療保険
退職後の選択肢
会社を退職すると健康保険の被保険者資格を喪失します。退職後は以下の3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 任意継続被保険者 | 退職前の健康保険に最長2年間継続加入。資格喪失後20日以内に申請が必要 | 保険料は事業主負担がなくなり全額自己負担(上限あり)。原則途中脱退不可(保険料未納による資格喪失を除く) |
| 国民健康保険への加入 | 退職後に市区町村で手続き。資格喪失日から14日以内に届出 | 前年所得をもとに保険料が算定されるため、退職直後は高くなる場合がある |
| 家族の被扶養者になる | 配偶者・親族の健康保険の被扶養者になる | 年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)かつ被保険者の年収の2分の1未満であること |
資格喪失後の給付
健康保険の被保険者資格を喪失した後も、一定の要件を満たせば傷病手当金・出産手当金の継続給付を受けることができます。
- 継続給付の要件:資格喪失時にすでに給付を受けていること、かつ被保険者期間が継続して1年以上あること
- 継続給付の期間:傷病手当金は支給開始日から通算1年6か月の残余期間、出産手当金は産前産後の残余期間
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上(一定の障害状態にある65歳以上を含む)を対象とした独立した医療保険制度です。75歳の誕生日に自動的に加入し、それまで加入していた被用者保険や国民健康保険から脱退します。
- 保険者:都道府県単位で設置された後期高齢者医療広域連合
- 保険料:被保険者全員が個人単位で負担。原則として年金から天引き(特別徴収)
- 自己負担割合:原則1割。現役並み所得者は3割、一定以上の所得者は2割
- 財源:公費(国・都道府県・市区町村)約5割、現役世代からの支援金約4割、高齢者の保険料約1割
後期高齢者医療制度では、被用者保険の被扶養者だった人も75歳になると独自の保険料負担が発生します。それまで保険料を負担していなかった扶養家族にとって大きな変化となるため、ライフプラン上の注意点として押さえておきましょう。
介護保険
介護保険制度の目的と仕組み
介護保険制度は、高齢化や核家族化を背景に、介護を社会全体で支えることを目的として2000年に創設されました。40歳以上のすべての人が被保険者となり、保険料を納めます。
| 区分 | 対象者 | 保険料の徴収方法 | 給付を受けられる場合 |
|---|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原則年金からの天引き(年金が年18万円未満の場合は普通徴収) | 要介護・要支援認定を受けた場合(原因を問わない) |
| 第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満の医療保険加入者 | 医療保険料と合わせて徴収 | 特定疾病(16種類)が原因で要介護・要支援状態になった場合 |
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する体制のことです。団塊の世代が75歳以上を迎える2025年を目途に、全国で整備が進められています。地域包括支援センターが中核機関として、相談支援・権利擁護・ケアマネジメント支援などを担います。
介護サービスと利用者負担
介護保険サービスを利用するには、市区町村による要介護認定が必要です。認定区分は「要支援1〜2」「要介護1〜5」の7段階あり、区分に応じて利用できるサービスの種類と支給限度額が決まります。
- 利用者負担:原則1割。一定以上の所得がある場合は2割または3割負担
- 高額介護サービス費:1か月の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合に超過分が払い戻される
- 高額医療・高額介護合算療養費制度:医療保険と介護保険の両方の自己負担合計が年間上限額を超えた場合に払い戻される
| サービスの種類 | 主なサービス内容 |
|---|---|
| 居宅サービス | 訪問介護・訪問看護・通所介護(デイサービス)・短期入所生活介護(ショートステイ)等 |
| 施設サービス | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院等 |
| 地域密着型サービス | 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・小規模多機能型居宅介護等 |
試験の重要ポイント
退職後の医療保険の選択比較
退職後の医療保険は「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」の3択です。任意継続の申請期限(資格喪失後20日以内)と、国民健康保険の届出期限(資格喪失日から14日以内)は試験で問われる数値です。
介護保険の被保険者と給付要件
第2号被保険者(40〜64歳)は、特定疾病が原因の場合のみ給付対象となります。特定疾病には初老期の認知症・脳血管疾患・末期がんなど16種類があり、交通事故による要介護状態は対象外です。この点は試験で繰り返し出題されます。
自己負担割合の整理
| 制度・年齢 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 健康保険・国民健康保険(小学校就学前) | 2割 |
| 健康保険・国民健康保険(小学校就学後〜69歳) | 3割 |
| 健康保険・国民健康保険(70〜74歳) | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 後期高齢者医療制度(75歳以上) | 1割(一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割) |
| 介護保険サービス | 1割(一定以上所得者は2割または3割) |
参考・出典
- 日本FP協会「CFP資格審査試験 出題範囲」
- 厚生労働省「医療保険」
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 厚生労働省「介護保険とは(介護サービス情報公表システム)」
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制・法令は毎年改正されることがあります。実際の申告・手続きについては、最新の情報を確認するとともに、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

