1. 概要
一時所得とは、特定の所得区分に当てはまらない「一時的・臨時的な」収入から生じる所得です。生命保険の満期保険金や競馬の払戻金などが代表例で、総合課税が適用されます。CFP試験では、一時所得の範囲・計算方法・課税所得への算入方法・雑所得との区別が主要論点です。
2. 所得の定義
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいう。(所得税法第34条第1項)
一時所得に該当するには、次の4要件をすべて満たす必要があります。
- 営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではないこと
- 労務・役務の対価としての性質を持たないこと
- 資産の譲渡による対価としての性質を持たないこと
- 一時の所得であること
3. 一時所得に該当する主な収入
| 収入の種類 | 具体例・注意点 |
|---|---|
| 懸賞・福引きの賞金品 | 業務に関して受けるものを除く |
| 競馬・競輪等の払戻金 | 営利目的の継続的行為から生じたものを除く(→雑所得) |
| 生命保険の一時金・損害保険の満期返戻金等 | 業務に関して受けるものを除く。保険料負担者=受取人の場合 |
| 法人から贈与された金品 | 業務に関して受けるもの・継続的に受けるものを除く |
| 遺失物の拾得・埋蔵物の発見による報労金等 | 遺失物法・文化財保護法に基づくもの |
| ふるさと納税の返礼品 | 返礼品の経済的価値(寄附額の約30%相当)が一時所得に算入 |
| マイナポイント | マイナンバーカード取得・保険証利用申込等に伴うポイント付与は一時所得 |
| 個人年金保険の一時金(差益部分) | 一時払いで受け取った場合の払込保険料超過分 |
4. 一時所得に該当しない主な収入
| 収入の種類 | 実際の所得区分・理由 |
|---|---|
| 宝くじ・toto(スポーツ振興くじ)の当選金 | 非課税(当せん金付証票法・スポーツ振興投票法) |
| 損害保険の損害保険金(資産損害に対するもの) | 非課税(資産の損失補填のため) |
| 営利目的・継続的な競馬の払戻金 | 雑所得(継続性があるため一時所得に該当しない) |
| 個人年金保険の年金受取(毎年定期) | 雑所得(継続的な給付のため) |
| 死亡保険金(相続人が受け取る) | みなし相続財産として相続税の課税対象 |
| 法人契約の保険で従業員が受け取る死亡保険金 | 給与所得(業務上の報酬として) |
| 個人から贈与された金品 | 贈与税の課税対象(一時所得ではない) |
⚠️ 保険金の課税区分は「契約形態」で決まる
生命保険の課税区分は、誰が保険料を払い、誰が保険金を受け取るかによって変わります。
・保険料負担者 = 受取人 → 一時所得(所得税)
・保険料負担者 ≠ 受取人(第三者が受け取る) → 贈与税
・被保険者が死亡・相続人が受け取る → 相続税(みなし相続財産)
5. 一時所得の計算方法
📌 一時所得の計算式
一時所得の金額 = 総収入金額 -(収入を得るために直接要した支出額)- 特別控除額(最高50万円)
総所得金額への算入額 = 一時所得の金額 × 1/2
特別控除の50万円は、その年の一時所得すべての合計から控除します。複数の一時所得がある場合は合算してから50万円を引きます。また、収入を得るための支出額は「その収入を生じた行為のため、または原因の発生に伴い直接要した金額」に限られ、関連しない支出は控除できません。
競馬払戻金の支出額の取り扱い(注意点)
競馬の払戻金を一時所得として申告する場合、支出として控除できるのは的中した馬券の購入代金のみです。外れた馬券の購入代金は「収入を得るために直接要した金額」に当たらないため、控除できません。
6. 課税方式
一時所得は原則として総合課税です。他の所得と合算して累進税率を適用します。ただし、一部の一時所得は例外として源泉分離課税が適用されます。
| 課税方式 | 対象 |
|---|---|
| 総合課税(原則) | 懸賞金・競馬払戻金・保険の満期返戻金・ふるさと納税返礼品等 |
| 源泉分離課税(例外) | 懸賞金付預貯金の懸賞金等 一時払養老保険・一時払損害保険等(保険期間5年以内等の一定要件を満たすもの)の差益等 税率:所得税15.315% + 住民税5% = 20.315% |
⚠️ 源泉分離課税の対象は確定申告不可
懸賞金付預貯金の懸賞金や、保険期間5年以内の一時払養老保険・一時払損害保険等の差益は、20.315%の源泉分離課税が適用されます。この場合は確定申告を行うことができません(申告不要)。
7. 計算例
【例①】生命保険の満期保険金のみ
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 満期保険金(総収入金額) | 400万円 | |
| 払込保険料総額(支出額) | △ 280万円 | 直接要した費用 |
| 差益 | 120万円 | |
| 特別控除額 | △ 50万円 | 最高50万円 |
| 一時所得の金額 | 70万円 | |
| 総所得金額への算入額 | 35万円 | 70万円 × 1/2 |
【例②】複数の一時所得がある場合(保険金 + 懸賞品)
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 満期保険金 | 300万円 | |
| 払込保険料総額 | △ 250万円 | |
| 懸賞品(旅行券)の当選 | 20万円 | 支出額なし |
| 一時所得の合計益 | 70万円 | (300万-250万)+ 20万 |
| 特別控除額 | △ 50万円 | 合計から一括控除 |
| 一時所得の金額 | 20万円 | |
| 総所得金額への算入額 | 10万円 | 20万円 × 1/2 |
【例③】給与所得者が確定申告を要するケースの判定
給与所得者は、給与・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば確定申告不要です。一時所得については総所得金額への算入は「一時所得の金額 × 1/2」のため、下記の判定基準になります。
| 一時所得の合計益(差益) | 特別控除後の一時所得 | 算入額(×1/2) | 確定申告の要否 |
|---|---|---|---|
| 50万円以下 | 0円 | 0円 | 不要 |
| 90万円 | 40万円 | 20万円 | 不要(ちょうど20万円) |
| 90万円超 | 40万円超 | 20万円超 | 要申告 |
📌 給与所得者が確定申告を要する目安
一時所得(差益合計)が90万円超になると、算入額が20万円を超えて確定申告が必要になります。
(例:保険差益70万円 + 懸賞20万円 = 合計90万円 → 算入額20万円 → 申告不要のギリギリのライン)
8. 損益通算
一時所得に損失(マイナス)が生じた場合、他の所得との損益通算はできません。同一年内に複数の一時所得がある場合は、一時所得内でのみ損益通算(内部通算)が可能ですが、結果として損失が出ても他の所得区分(給与所得・事業所得等)とは通算できません。また、翌年以降への繰越控除も不可です。
9. 試験の重要ポイント
- 一時所得の4要件:①継続的でない ②労務対価でない ③資産譲渡対価でない ④一時の所得
- 特別控除は最高50万円で、その年の一時所得の合計から一括して控除する
- 総所得金額への算入は一時所得の金額の1/2(課税負担が軽減される)
- 宝くじ当選金・損害保険金(損害補填)は非課税(一時所得に含まれない)
- 保険金の課税区分は契約形態で決まる:負担者=受取人→一時所得、別人→贈与税、死亡保険金→相続税
- 懸賞金付預貯金の懸賞金・一時払損保等の差益(保険期間5年以内等)は源泉分離課税20.315%・確定申告不可
- 競馬払戻金の控除対象は的中馬券のみ(外れ馬券は不可)
- ふるさと納税の返礼品・マイナポイントも一時所得として課税対象
- 給与所得者の確定申告が必要になるのは一時所得の差益合計が90万円超のとき
- 他の所得との損益通算は不可、翌年への繰越控除も不可
参考・出典
- 国税庁「No.1490 一時所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm
- 国税庁「No.1490 一時所得 Q&A」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490qa.htm
- 国税庁「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm
- 国税庁「No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1610.htm
本記事は令和7年(2025年)分の法令および制度に基づき作成しています。税制は毎年改正されることがあります。実際の申告・納税については、最新の税法および国税庁の情報を確認するとともに、税理士等の専門家にご相談ください。本記事はCFP試験対策および一般的な学習目的で作成されたものです。

